「社会の中の芸術」の意味を改めて問うたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の2023年ニューイヤーコンサート

昨日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートがウィーン楽友協会黄金の間で行われました。

今回は、2013年以来10年ぶり3回目の登場となったフランツ・ヴェルザー=メストの指揮により、ヨハン・シュトラウス2世やヨーゼフ・シュトラウス、あるいはヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世などの作品が取り上げられました。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、2021年は無観客、2022年は来場者数を1000人に限定したものの、今回は3年ぶりに従来の形式での開催となりました。

こうした状況を受け、今回は第1部と第2部で取り上げられた15曲中、ヨーゼフ・シュトラウスの『水彩画』を除く14曲がニューイヤーコンサートで始めて演奏される作品によって構成されるという、意欲的な公演となりました。

また、様々な「初登場」の中でも最も注目すべきはウィーン少女合唱団で、その洗練された歌声は今後のニューイヤーコンサートの可能性を広げるものでした。

ところで、2021年に指揮を担当したリッカルド・ムーティがアンコールに入る前の恒例の演説の中で、各国の首脳に対して、文化はわれわれの将来の社会を支えるものであり、困難な状況の中でも支援を続けることが重要であると指摘し、昨年のダニエル・バレンボイムが「コロナ禍」は医療分野における悲惨な出来事であるだけでなく、音楽にとっても惨事であり、そのような中で今回の演奏が、人々にとって人間らしさを取り戻す一助となることを願うことを訴えたのは、われわれの記憶に新しいところです。

過去2回の演説を受けたウェルザー=メストは、両者のように雄弁ではなかったものの、「音楽を演奏できることの喜びと意味」を簡潔に説くことで、われわれの生活が様々な困難に取り囲まれる中で、ニューイヤーコンサートを開催することの意義を強調しました。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートは、1年のうちに世界各地で行われる数多くの演奏会の1つでしかないことは論ずるまでもありません。

それでも、世界各地に放送され、高い注目を集める演奏会において、過去2回と同様に現在のわれわれの置かれた状況と芸術との関係や芸術が持つ可能性が問われたことの意義は、小さくありません。

それだけに、今回のニューイヤーコンサートは改めて社会の中の芸術、音楽と日常生活のあり方を控えめながら的確に指摘した、重要な価値を持っていたと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Vienna Philharmonic Orchestra's New Year Concert 2023 Shows Its Important Role toward the World (Yusuke Suzumura)

The Vienna Philharmonic Orchestra held the New Year Concert 2023 with Franz Welser-Möst on 1st January 2023. They showed their important role toward the world to promote and advance cultural activities under the era of the unstable society.

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