【新譜評】『團伊玖磨映画音楽集成東宝編』(スリーシェルズ、2020年)

昨日、CD『團伊玖磨映画音楽集成東宝編』(全2枚、スリーシェルズ、3SD0057-1・2)が発売されました。

本CDは『宮本武蔵』(監督:稲垣浩、1954年)から『戦場にながれる歌』(監督:松山善三、1965年)まで、團伊玖磨が担当した東宝製作の25作品を対象に、代表的な場面や象徴的な箇所などの音楽を収録しています。音源として採用されたのは、保存用と作業用の正副2種類のテープのうち、基本的に保存用の正テープです。

歌劇『夕鶴』(1951年)、祝典行進曲(1959年)や9つの交響曲、あるいは童謡『ぞうさん』(作詞:まど・みちお)などの種々の作品を手掛けたほか、随筆家としても活躍した團にとって、映画音楽は1950年代から1960年代の創作活動の中でも大きな部分を占める分野でした。

その一方で、テープの劣化や実際に録音が行われた当時の関係者への聞き取り調査の可能性などを勘案すれば、音源のデジタル化は可能な限り早く行われる必要があると言えます。

従って、今回の取り組みは時宜を得たものでしたし、収録された音源は東宝での作品に限定されているとしても、聞く者に團の映画音楽の全貌を知るための格好の手掛かりを提供します。

また、團の令息團紀彦氏による序文、評論家の小林淳氏の概説や歓喜団の曲目の解説と構成の説明など、附属の冊子も読み物として充実しており、資料的な価値も高いと言えるでしょう。

2021年の没後20年という節目に先立って制作されたCD『團伊玖磨映画音楽集成東宝編』は、團伊玖磨の音楽を時代に伝えるために欠かせない音源と言えるでしょう。

<Executive Summary>
Collective Works of Ikuma Dan's Film Music Composed for TOHO (Yusuke Suzumura)

Two CDs entitled with Collective Works of Ikuma Dan's Film Music Composed for TOHO was released by Three Shells on 15th December 2020. These CDs recorded Dan's film music form 25 pictures.

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