自民党の派閥の歴史からみる「安倍派の政治資金問題」の問題点

自民党の政治資金問題について、現在の政治資金規正法に照らせば、「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」という法の趣旨[1]に背くことは明らかです。

従って、司法当局が事態に介入し、しかるべき対応を取ることは当然の措置となります。

一方で、今回の問題の発端となった安倍派の淵源を辿れば、同派がこうした金権体質というべきあり方を示すことは決して不思議ではありません。

すなわち、清和政策研究会は、創設者である福田赳夫が岸信介の派閥であった十日会(岸派)を離脱して発足させた党風刷新懇話会を淵源とします。

そして、福田がかつて所属した岸派を率いた岸信介の政治上の信念は、「政治と金は切っても切れない」というものでした[2]。

それでは、何故岸がこうした信念を抱いたかといえば、次のような政治観を持っていたからです[2]。

政治は力であり、金だ。力ある者のみが党内競争者をけ落し、その主導権を確立することが出来る

政治を力として規定する点はよいとしても、その力の源に金銭を置き、理念や理想を想定しないところは、岸信介のある種の即物的な姿を現します。

それとともに、金銭には淡白であった石橋湛山や「クリーン三木」と称された三木武夫でさえ派閥を維持するために多額の金銭を擁し、その工面に苦心したことを考えれば、権力の維持に金銭が不可欠であることも明らかです。

その意味で、安倍派の行動は、岸信介以来の考え方に忠実であったと言えるかもしれません。

しかし、当時と現在では政治資金に関する国民の態度は厳しさを増しており、より透明な資金の流れを確保することは、政治家にとって有権者の負託にこたえるだけでなく、諸法令を遵守するという点からも必須の事項です。

今回の問題の根幹には、こうした時代の変化にあえて背を向けるかのような、安倍派の古色蒼然たる派閥運営の在り方があることは、決して見逃されてはならないのです。

[1]政治資金規正法. 第一条.
[2]吉本重義『岸信介伝』東洋書館、1957年、157頁。

<Executive Summary>
A Viewpoit to Understand the Political Fund Issues of the LDP (Yusuke Suzumura)

The Liberal Democratic Party's political fund issues is a kind of out-of-date scandal based on the changes of Japanese politics. On this occasion, we examine the meaning of this issue with history of Japanese politics.

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