「社会における芸術の力」を簡潔に訴えたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサート2024

昨日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートがウィーン楽友協会黄金の間で行われ、BBCのラジオ中継で鑑賞しました。

今回は2019年以来2度目の出演となったクリスティアン・ティーレマンの指揮により、ヨハン・シュトラウス1世、ヨハン・シュトラウス2世、ヨーゼフ・シュトラウス、ヨーゼフ・ランナーらの作品20曲が演奏されました。

今年はブルックナーが生誕200年を迎えるため、デルナーの編曲によるブルックナーの『カドリーユ』が取り上げられるなど、いかにもブルックナーの作品を得意とするティーれマンが担当する回らしい趣向も凝らされていました。

そして、演奏そのものにも増して新型コロナウイスる感染症の感染拡大後に行われた2021年の公演以来注目を集めるようになったのが、指揮者による新年のあいさつに先立つ演説です。

リッカルド・ムーティ、ダニエル・バレンボイム、フランツ・ヴェルザー=メストと、社会における芸術の果たす役割の大きさを時に雄弁に、時に控え目に訴えかけて来た中で、今回のティーレマンは憂鬱な出来事に満ちた現在の世界において芸術の持つ力の意味を簡潔に説きました。

これは、ムーティやバレンボイムの様に大所高所から物事を解き明かすだけの豊かな経験を持った年代の人々とは異なり、ヴェルザー=メストもティーレマンも、いまだ壮年にあるために控え目な表現を用いたということになるでしょう。

それでも、新しい年の劈頭を飾り、しかも世界中で注目される公演において今回も芸術や音楽と日常生活のあり方を的確に指摘したティーレマンの一言は、公演の価値を一層高めたと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Vienna Philharmonic Orchestra's New Year Concert 2024 Shows Its Important Role in the World (Yusuke Suzumura)

The Vienna Philharmonic Orchestra held the New Year Concert 2024 with Christian Thielemann on 1st January 2024. They showed their important role in the world to promote and advance cultural activities under the era of the unstable society.

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