【追悼文】鈴木健二さんについて思い出すいくつかのこと

去る3月29日(金)、元NHKアナウンサーの鈴木健二さんが逝去しました。享年95歳でした。

1952年にNHKに入局したのち、ニュース番組や情報番組の司会を経て『歴史への招待』(1978-1984年)、『クイズ面白ゼミナール』(1981-1988年)、『お元気ですか』(1984-1988年)などの教養番組や娯楽番組の司会者として名声を博したのは広く知られるところです。

私も『クイズ面白ゼミナール』でのよどみのない話しぶりと主題に応じて衣装を変えるといった趣向の凝らされた構成、さらにはその大らかな進行を通して、鈴木さんの存在を身近に感じたものでした。

特に1987年12月13日(日)に放送された忠臣蔵を取り上げた回では、大石内蔵助に扮した鈴木さんが山鹿流陣太鼓を叩きながら登場するものの、「このように大きな音を立てていたのではすぐに吉良方に気づかれてしまいますので、実際はございませんでした」と陣太鼓を脇に置いた様子が思い出深いものです。

さらに、吉良邸での大石方と吉良方の攻防についても、演劇では太刀と小太刀を振るい橋の上で大石方を相手に奮闘する姿が強調される清水一学について、当時の記録ではわずかの間戦っただけで討ち取られたと解説し、史実と戯曲の違いを明快が示され、「知るは楽しみ」という番組の特徴がよく示されたものでした。

なお、このときは歴史上の清水一学があっけなく討ち取られたという説明の際に、清水役の役者が宙返りをして池に落ちるという演出がなされており、これも興味深い場面となっています。

NHKを1988年に退職すると、初任地が熊本放送局であったこともあって当時の細川護熙知事に請われて 熊本県立劇場館長に就任し、同館の任期を満了した1998年には東北大学出身という関係から青森県の文化アドバイザーと青森県立図書館館長を2004年まで務めるなど、その後も鈴木さんは幅広い活躍を示しました。

一度渡された台本は放送開始までにすべて暗記し、番組中は手元を一切見ないなど、博覧強記のアナウンサーとして親しまれた鈴木さんは、NHK内でも屈指の読書家で、膨大な量の読書が確かな知識を支えるという信念を持った人でもありました。

個性豊かなアナウンサーが各時代を彩るNHKにあっても一際視聴者に深い印象を与えた鈴木健二さんのご冥福をお祈り申し上げます。

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr Kenji Suzuki (Yusuke Suzumura)

Mr Kenji Suzuki, a former announcer of the NHK, had passed away at the age of 95 on 29th March 2024. On this occasion, I remember miscellaneous memoris of Mr Suzuki.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?