【新譜評】チャイコフスキー交響曲第4番ほか(指揮:坂入健司郎、管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団、Altus)

去る6月10日(金)、Altusより名古屋フィルハーモニー交響楽団のCDが発売されました。

本作に収録されたのはボロディンの交響詩『中央アジアの草原にて』、グラズノフのサクソフォン協奏曲、チャイコフスキーの交響曲第4番とバレエ『白鳥の湖』 より「スペインの踊り」であり、サクソフォン独奏は堀江裕介、4指揮は坂入健司郎です。

愛好家団体の指導で定評のあった坂入が名古屋フィルと初めて共演したのが2021年8月のことであり、今回の録音は記念すべき2回の公演の模様を収めています。

サキソフォン奏者にとって欠かすことのできない、グラズノフによる貴重な協奏曲、ボロディンの劇的な音楽、そしてチャイコフスキーが作り上げる情感豊かな音楽と、取り上げられた4曲はそれぞれ明瞭な特徴を備えます。

そのような作品に対して正面から向き合い、譜面を丹念に読み解くことで奇を衒うことなく演奏を組み立てる坂入の音楽は、楷書の持つ緊張感と集中力の高さを伝えます。

グラズノフにおける堀江の独奏やチャイコフスキーの交響曲で時折顔をのぞかせる用心深さも、演奏全体の持つ表情の豊かさの中でかえって笑窪の役割を果たしたと言えるでしょう。

こうした姿が家庭的な雰囲気を持つ名古屋フィルとよい組み合わせとなったことは、楽員の声から分かるだけでなく実際の演奏が示すところです。

すでに名古屋フィルにとって欠かすことのできない指揮者となり、今後より濃密な関係が築かれるであろう坂入との初共演の成果を収めた本作は、これからも折に触れて耳を傾けたい1枚です。

<Executive Summary>
CD Review: Tchaikovsky's 4th Symphony and Other Works Conducted by Kenshiro Sakairi (Yusuke Suzumura)

Three CDs entitled with Tchaikovsky's 4th Symphony and Other Works Conducted by Kenshiro Sakairi were released by Altus on 10th June 2022. These CDs recorded Tchaikovsky's 4th Symphony and other works performed by the Nagoya Philharmonic Orchestra. Solo saxophone was Yusuke Horie and conductor was Kenshiro Sakairi.

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