注目されるマイク・ジョンソン米国連邦下院議長の手腕

現地時間の10月25日(水)、米国の連邦議会下院は新しい議長に共和党のマイク・ジョンソン氏を選出しました[1]。

これにより、ケヴィン・マッカーシー氏が米国史上初めて下院議長を解任された10月3日(火)から22日にわたり空席であった下院議長の座が埋まることになりました。

ジョンソン氏はルイジアナ州の選出で現在51歳であり、弁護士を経て2016年の連邦議会下院選で初当選し、現在4期目を務めています。

当選から7年目での議長就任は異例であり、従来の経験に富み、集金力にも優れているという連邦下院議長の典型的な像からすると例外的な存在です。

また、ワシントンポストの分析によれば、以下のような特徴があるとのことです[2]。

(1)2020年の大統領選挙でジョー・バイデン候補の当選の承認に反対した。
(2)民主党が求めるウクライナに対する追加支援に反対している。
(3)人工中絶問題に反対している。
(4)ドナルド・トランプ前大統領の一派であり同氏と近しい関係にある。
(5)米国におけるLGBTQ+に対する規制に賛成している。

このような分析から浮かび上がるのは、これまで存在感が高くなかったもののトランプ派の一員として与党である民主党との対立も辞さない可能性です。

一方、米国ではバイデン政権が年内にも底をつくことが予想されるウクライナ向けの支援とイスラム組織ハマスから攻撃を受けたイスラエルへの支援を含む追加予算を一体化させて可決させるよう、議会に要請しています。

また、マッカーシー氏の解任の原因ともなった連邦政府のつなぎ予算については、今年11月中旬までしか予算執行を継続できません。そのため、政府施設の閉鎖という最悪の事態をを回避するには、新たな予算措置が必要になります。

こうした状況の中で、政治経験が豊かではなく、また法廷はともかく政界での駆け引きにも必ずしも通じていないジョンソン氏が、どれだけ事態をよりよい方向に向けて解決できるかは未知数です。

これに加えて、共和党内の支持基盤も必ずしも強固ではありませんから、党内の意見集約に手間取ったり、その姿勢が民主党寄りと映れば、マッカーシー氏と同じく再び解任ということになるかも知れません。

それだけに、最初の関門とも言うべきつなぎ予算問題でどのような手腕を発揮できるのか、その対応が注目されます。

[1]米下院議長 ジョンソン氏. 日本経済新聞, 2023年10月26日夕刊1面.
[2]Annabelle Timsit, Amy B. Wang and Mariana Alfaro, 5 things to know about Mike Johnson, the new House speaker. The Wasington Post, 25th October 2023, https://www.washingtonpost.com/politics/2023/10/25/who-is-mike-johnson-house-speaker/ (accessed on 26th October 2023).

<Executive Summary>
Who Is Mike Johnson, the New Speaker of the United States House of Representatives? (Yusuke Suzumura)

The United States House of Representatives elected Representative Mike Johnson of the Repabrican on 25th October 2023. On this occasion, we examine his capability as the Speaker and a possible future of Mr. Johnson.

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