「サンタクロース像の変遷」の物語

今日はクリスマス・イヴです。

本欄では、これまでイエス・キリストの誕生を祝うキリスト教の祭儀としてのクリスマスの成立の経緯やクリスマス・ツリーの持つ意味、"Xmas"という表記の由来、サンタクロース像の形成の過程などの概略を紹介してきました[1]-[5]。

これまで、本欄ではサンタクロース像の変容の概要を検討します。

サンタクロースといえば、トナカイの曳く橇に乗り、空を飛んで各家を訪れると考えられています。

このような、サンタクロースが空を飛んでやって来るという考えは、北欧神話の主神オーディンが冬になると空を飛翔して人間の善悪を裁くという伝説に基づくものです。

その意味で、本来、サンタクロースは、今日のわれわれが思い描くような喜びをもたらすものではなく、善悪を裁きに訪れるという厳しさを含む存在でした。

一方で、サンタクロースの原型である聖ニコラウスが苦しむ者に対して「幸運の贈り物」をしたことにならい、世話になった者や貧困者に贈り物をするという習慣もありました。

例えば、英国では、クリスマスの翌日(12月26日)に使用人や郵便配達夫に対して、日頃から世話になった感謝の気持ちとして贈り物をするボクシング・デイ(Boxing Day)の習慣が、18世紀頃に生まれました。

しかし、20世紀中頃にはボクシング・デイに贈り物をすることはなくなり、現在では英国の祝日の一つとなっています。

そして、今やクリスマスは世界各国で贈り物をすることそのものが目的となり、サンタクロースもかつての「善悪を裁きに訪れる」というあり方を変え、贈り物をもたらすのみの存在となっているといえるのです。

[1]鈴村裕輔, 「クリスマスの誕生」の物語. 2016年12月25日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/6c79f130d93d8f5dee91154a5979b3ef?frame_id=435622 (2020年12月24日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 「クリスマス・ツリー」の物語. 2017年12月24日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/88070270db0569816b0d4877f9449aad?frame_id=435622 (2020年12月24日閲覧).
[3]鈴村裕輔, Xmas源流考. 2018年12月24日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/18afe87f00f4e1334a7d1dc237901ecf?frame_id=435622 (2020年12月24日閲覧).
[4]鈴村裕輔, 略説サンタクロース誕生史(1). 2019年12月11日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/962ba8783b545ff1007508fb3bc1e5ce?frame_id=435622 (2020年12月24日閲覧).
[5]鈴村裕輔, 略説サンタクロース誕生史(1). 2019年12月23日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/725e53b574c5f30870877c7871158624?frame_id=435622 (2020年12月24日閲覧).

<Executive Summary>
Changes of a Picture of Santa Claus (Yusuke Suzumura).

The 25th December is Christmas. Today we examine changes of a picture of Santa Claus from Ancient Age to today's actual conditions.

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