NHK交響楽団第2007回定期公演

去る4月13日(土)、14日(日)にNHKホールにおいてNHK交響楽団の第2007回定期公演が行われ、4月18日(金)にNHK FMで公演第1日目の実況録音が放送されました。

今回は前半にシューベルトの交響曲第4番『悲劇的』が、後半にブラームスの交響曲第1番が演奏されました。指揮はマレク・ヤノフスキでした。

悲劇性が強調されやすいシューベルトと、鬱勃とした苦悩の表情で始まる第1楽章から泰然として光り輝く第4楽章へと推移するブラームスは、しばしば抒情性が強調される演奏に結びつきます。

一方、今回のヤノフスキは作品に自ずから付随するように思われる悲劇性や抒情性を意図的に遠ざけることでそれぞれの交響曲の持つ枠組みを明瞭に描き出そうとしました。

例えばシューベルトの第2楽章における主要主題と副主題のためらいのない演奏は重めの節回しによって悲痛な面持ちを醸し出そうとする演奏とは一線を画すものであり、ある意味で悲劇性とは無縁であるかのように思われます。

しかし、推進力に満ちた演奏は颯爽としたものではなく、むしろ少しでも立ち止まると二度と前に行けないという悲壮感を漂わせたものであり、かえって作品が秘める前身のみを許された音楽という複雑な表情を浮き上がらせるものでした。

同様に、ブラームスは冒頭から一貫して足早ともいうべき進行によって巧みで芯の太い構成が活き活きと導き出されます。

それだけに、第4楽章の再現部のみ速度を緩めることで作品の持つ劇的な表情が聞き手により一層印象深く刻印され、閉塞から解放へというブラームスの交響曲第1番の特徴を際立たせることになりました。

これはヤノフスキが確固とした信念に基づいてシューベルトとブラームスの作品に向き合った結果です。

それとともに、両者ともNHK響にとって演奏する頻度の多い作曲家であることがヤノフスキの目指す音楽作りを可能にしました。

その意味で、大器晩成とも評されるヤノフスキが今だからこそ作り出せる演奏が、今回の公演で聞き手の前にもたらされたと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2007th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 2007th Subscription Concert at the NHK Hall on 13rd and 14th April 2024 and the first day was broadcast via NHK FM on 18th 2024. In this time, they performed Schubert's 4th Symphony and Brahms' 1st Symphony. Conductor was Marek Janowski.

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