日本の人口減少問題を解決するために必要な取り組みは何か

昨日、国立社会保障・人口問題研究所は日本の長期的な人口を予測した「将来推計人口」を公表し、2056年に人口が1億人を下回り、2059年には日本人の出生数が50万人を割り込み、2070年の総人口は8700万人になるとしました[1]。

内閣府が2022年に行った試算では、2060年代も1億人の人口規模を維持する場合、高齢化率が頂点を超え、労働人口の割合が増えるとしています[1]。

現在の出生率と出生数からすれば2060年代まで1億人の人口を維持するのが容易ではないことは明らかです。それだけに、内閣府の推計は希望的観測に基づくと言えるでしょう。

同様に、今回の国立社会保障・人口問題研究所の試算も、2017年に行われた前回の推計に比べて人口が1億人を下回る時期が3年遅くなったものの、外国人の入国超過が増加すると見積もるなど、楽観的というべき内容となっています。

特に注意すべきは、外国人の入国超過を前提としているという点です。

これは、今後も日本が外国人を受け入れるだけの魅力と待遇を維持するという考えを念頭に置いています。

しかし、実際には経済力や産業力だけでなく、労働者の待遇という点でも諸外国に比べて見劣りしがちである現在の日本の状況を考えれば、日本が今後も外国人を惹きつけられる国であるという保証はありません。

実際、日本の1人当たり国民所得が経済協力開発機構(OECD)諸国の中で平均以下となっている点を考えるだけでも、実際には「日本への高度人材の受け入れ」ではなく「日本からの高度人材の流出」が現実的な課題となります。

従って、日本人であれ外国人であれ日本から外国や他の地域に行く人が増える可能性を考慮するなら、こうした推計はたちまち説得力を失います。

それだけに、そうした事態を避けるためには、今後も外国人から選ばれる国となるため、日本の国力を高め、社会的、文化的、あるいは他の側面での種々の障壁を可能な限り取り去ることが不可欠となります。

その意味で、人口減少問題の解決策は、日本のあり方そのものをいかによりよくするかという点と深くかかわるのです。

[1]人口減で縮む国力. 日本経済新聞, 2023年4月27日朝刊1面.

<Executive Summary>
How Can We Avoid "Falling Japan"? (Yusuke Suzumura)

The National Institute of Population and Social Security Research reports the future changes of demographics of Japan on 26th April 2023. On this occasion, we examine possible alternatives to avoid population decline of Japan.

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