埼玉県議会自民党県議団の「子ども放置禁止」条例案の取り下げはいかなる意味を持つか

本日、埼玉県議会自民党県議団は、小学3年生以下の子どもを自宅に残したまま保護者が外出することなど報知を禁止する虐待禁止条例の一部改正案について、「県民はもとより全国的に不安と心配の声が広がった」などとして改正案を取り下げる方針を明らかにしました[1]。

今回の改正案については、例えば母子家庭、父子家庭を考えるだけでも、子どもを一人にすることができない場合の保護者の負担を念頭に置けば、保育や教育の実態からかけ離れているばかりでなく、新たな対応を強いることに繋がりかねないことが分かります。

そのため、条例案の取り下げの方針を決めた今回の措置は、妥当であると言えるでしょう。

本来であれば、予想される新たな負担に対する激変緩和措置や、ベビーシッターやファミリーサポート事業の拡充、あるいは有職者の場合は時差出勤や早退する際の本人もしくは職場への金銭を含む何がしかの補償など、しかるべき対応策を施した上で、新たな取り組みを行うことが重要でした。

それにもかかわらず、あたかも容易に予想される事象への対応策の立案を怠ったかのような今回の動きが人々の失望や懸念を誘ったことは明らかです。

実際、今回の条例案の趣旨については見るべきものがあっただけに、埼玉県議会自民党県議団は県民への説明に十分な時間を割いていなかったか、あるいは説明の内容が適切でなかったために、対象となる人たちの理解と共感を得ることが出来なかったことが推察されます。

何より、今回の改正案が提起した、留守番などで子どもを保護者の目の届かない所に置くことは虐待に繋がるという観点は、子どものよりよい成長を考える上で一考に値するだけに、こうした条例案が示されたことの意義を活かすためにも、関係者には一層の努力によって、対象となる人々にとっても意義の実感される条例を作り出すことが期待されるところです。

[1]“子ども放置禁止”条例案 取り下げる方針 自民党県議団 埼玉. NHK NEWS, 2023年10月10日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231010/k10014220611000.html (2023年10月10日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the LDP Saitama's Withdrawing Proposed Ban on Leaving Children Unattended? (Yusuke Suzumura)

The Liberal Democratic Party at Saitama Prefectural Assembly announced to withdraw proposed ban on leaving children unattended on 10th October 2023. On this occasion, we examine the meaning of this decision.

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