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米国コロンビア大学院合格までの道〜キャリア編②〜

こちらは、前回の続編です。

特別なバックグラウンドのない、フツーの大学生がアメリカの名門コロンビア大学院に合格した話。そのキャリア編②として、国際NGOでの経験をお届けいたします。

「キャリア」という言葉は、恐らく「社会人経験を○年積んだ」という前提を想定されてしまいますが、私は今年2023年に大学(学部)を卒業したばかり。なぜ敢えて「キャリア」をタイトルに入れたかというと、少なくとも私が受験した大学院においては「キャリアがあること」が前提とされていたからです。

ミッドキャリア・プログラム

大学院の出願に向け準備をしていた4月頃。私は受験生として大学院教授にアウトリーチをかけていたら、こんなことを言われました。

あなたの経歴では、ウチのプログラムに参加できない。最低2年間のプロフェッショナルな経験を積んでから来てください。

そのとき既にコロンビアが第1志望でしたが、なんとコロンビア大学院の多くのプログラムがミッドキャリア(既に社会人経験を経ている学生)向けだったのです。そしてアメリカのほとんどの大学院で「国際教育開発」を扱う修士以上のプログラムには、関連する職歴が必要とのこと。

前回の記事の通り、国際協力に関わる団体で3年弱の活動をしていましたが、「教育開発/協力に片足突っ込んだような実務経験」では不安になりました。そこで、学生のうちに得られる実務経験をさらに積む必要性を感じ、ネットや書物で調べました。大学院では「教育開発」と「平和構築」という2つの分野に跨る研究を行いたいと考えていたので、自ずと「平和構築」に関わる実務を探しました。

国際NGOでのインターン

"テロ・紛争を解決する"日本人

そんな中、『国際開発ジャーナル(2020年5月号)』でアクセプト・インターナショナルという国際NGOに出会います。「テロ・紛争の根絶」という組織ビジョンが、私の中学以来の関心にジャストフィット。

社会で加害者扱いされ、排除される、元「テロリスト」としての若者が、暴力や武器に頼らず平和に生きていくため、過激化組織からの離脱(投降)を助け、さらには「対話」を通した更生支援によって社会復帰を目指す。

多少私の言葉で噛み砕いていますが、この目標を実現するため、「アフリカの角」のソマリアやケニア、中東イエメンなど、国連や他のNGOも踏み入れられない危険地帯にまで足を運び問題解決に挑む、永井陽右さんという日本人の存在を見て、ここまでソーシャルイシューの解決に忠実に取り組む人や組織はいないと確信しました。彼は、今では「テロリストを管理する危険な刑務所に、世界で唯一立ち入りが許可されている日本人」として、彼らの教育・啓発から、過激化防止、社会復帰などに取り組まれています。

アクセプト・インターナショナルは、いわゆる加害者とされる若者であっても、社会の未来を担う重要なユースリーダーだと認識すべきであるとの立場から、彼らに寄り添い、対話を通して彼らを受容(アクセプト)し、信頼関係を構築した上で、武器のない人生への選択を促すというアプローチを取っています。実際、更生プログラムを終えた若者は、ビジネスを始めたり、我々NGOの一員として働き出したりするなど「平和を担う人」として新しい人生をスタートさせています。これは今後の平和構築や教育においても非常に重要な視点だと、当時の私は考えました。

そしてこの組織は、「論理的にインパクトを残そうとする姿勢」や「現場主義で、当事者の声を大切にする姿勢」「ユース(若者)に活動軸がある」など、私のこだわり(前回の投稿)を最大限に活かせる場でもありました。大学院受験の真っ只中でしたが、この組織で得られる経験は必ず今後の力になると確信し、入会を決意します。

アクセプト・インターナショナルでの業務

まだ入会して1年余りでそれほど大きな貢献はできていないため恐縮ですが、私が携わる主な業務を2つご紹介します。

  1. 団体SNSの運用。オンライン上でのファンドレイジング

  2. イエメンにおける、紛争の影響を受けた子どもの教育・心理社会支援事業(補佐)

1つ目に関しては言葉の通り、SNSを活用して、団体の支援者やクラウドファンディングの寄付を募ったり、定期的に開催するオンラインイベントの告知を行います。2つ目の教育プロジェクトについては、まだ事業が完了していないので多くのことを語れませんが、事業計画の作成補助、教育・心理社会支援のリサーチ業務、学校職員の能力構築のためのカリキュラムやテキストの作成を手伝っています。専門性が高く、プロフェッショナルな環境であるため、力不足を感じる時や辛い時もありますが、かなり貴重な経験をさせていただいています。

そして、永井さんら現地駐在員からの報告によって、「過去にテロ・紛争に関わった若者」が、刑務所での更生プログラムを通して、独自のスキルを身につけながら武器のない社会へ旅立つ様子を見させて頂いていることもあり、平和構築や過激化防止/対策 (Preventing / Countering Violent Extremism) の具体的な活動や現場感を知る機会もある、というのが殊に貴重な体験であります。入会当初は、大学院で認められる実務経験を積みたいという下心も多少ありましたが、今では極めて重要で困難な社会課題の解決を間近で見ることができており、自身の生涯をかけてこの組織の力になりたいとも思うようになりました。

▶︎もしよかったら、そんな国際NGO「アクセプト・インターナショナル」の活動を覗いてみてください。サポーターの登録、インターン/プロボノの応募もお待ちしております。

複数の学術分野を武器に

卒論研究で訪れたボスニア・ヘルツェゴビナ。
紛争後社会における社会科(平和)教育について、現地で調査しました。

「教育開発×平和構築」というニッチを攻める

さて、少し話が逸れてしまいましたが、前回ご紹介した教育開発/協力に携わる学生団体での経験と、今回の国際NGOでの経験が(大学院・奨学金)選考においてどう活かされたのか、自分なりに考えてみました。

まずは、「専門分野を掛け合わせることによって、オリジナリティの高い武器になった」という点です。

"一つの分野で世界のナンバーワンになることは、とても難しい。ですが、いくつかの重要な分野の経験やスキルを、自分だけにユニークな組合せとして持っていて、それらを掛け算して問題解決に使えるのは自分だけという「オンリーワン」には、なることができます。"

馬渕俊介さん(令和5年度東京大学学部入学式 祝辞より)

僭越ながら引用させて頂きましたが、まさに馬渕さんのお言葉の通りだと思います。「教育開発」という学術分野は1980年前後で主流になった分野ではありますが、風の噂では、教育開発に関わる修士は援助関連機関の中でもある程度飽和しているようです。しかし、その中でも「平和構築」という分野はまた別の学際的な分野。これらを掛け合わせた「ニッチな専門的経験」をアピールしたことで、選考において独創性が評価されたのかもしれません。

開発途上国における教育の諸課題に関して、特に日本人の中では「教育アクセス」が焦点に当たりがちですが、それ以外にも、スポーツ、民主主義、平和、ジェンダー、難民、暴力・いじめ対策、コミュニティ開発など、教育は様々な領域と深い関わりがあるのです。その中でも、私が実践経験を通してじわじわ感じているのは、やはりまだ「教育開発」と「平和構築」という2つの分野に跨るネクサスが確立できていないということ。TC(コロンビア教育大学院)は、"Education in Emergency" という分野では国際社会にかなり幅を利かせている感がありますので、TCで学べることは非常に楽しみです。

一貫性で勝負

そして、これまで得てきた実務経験に「一貫性」があったという点も、選考において有利に働いたと思います。

前述の通り、私が学生団体を経て蓄積した「4つのこだわり」は、その後の国際NGOでも同様に活かせる環境がありました。これをStetement of Purpose(志望理由書)などに組み込みアピールしました。上述の実務経験に加えて、卒業論文研究で「教育開発×平和構築」について扱ったこともあり、アカデミックな経験をリンクさせることができたのも、大きな「一貫性」のアピールになっていたと思います。

話の結びになりますが、「ミッドキャリア」が前提とされる不利な状況下で、過去の経歴やバックグラウンドが足りないことに不安がありましたが、国際NGOでのインターン経験が、一貫性における「欠けていた1ピース」を埋めたのかもしれません。

次回は「アカデミックな経験」として、大学学部における研究活動をご紹介しつつ、私が海外大学院受験においてどんなアウトリーチを行ったか、ご紹介できればと思います。


ご覧いただき、ありがとうございました。ごく稀ながら、留学や国際協力に関して呟いたりしておりますので、ご関心のある方はTwitterをフォローいただければと思います。

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