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ハヤシライスはお時間頂きます

雨も滴る金曜日。
ゴールドでもシルバーでもない日々を送る僕はこの数日で何度世間との温度差を感じるのだろう。
街が騒ぎ、鬱憤ばらしの人で溢れかえるのであれば
「雨よこのまま有耶無耶に洗い流しておくれ、」だなんてことを願ってしまいそうになるけれど、
言うて僕の毎日もブロンズウィークくらいなものだ。
ゴールデンなウィークは普段から毎日働き続けている社会人や学生、家族の為のものであって、こういう時くらいは代わりに僕が社会を支えれば良い。これから街で騒いで楽しそうにしている人のことは毎日マッドマックスみたいな過酷な労働環境で夜遅くまで働いた人の束の間の休息なのだとフィルターをかけて見るようにしよう。
それならば全てを微笑みで包んであげられそうだ。

今日は用事が早く終わったので雨から逃げるように下高井戸シネマへ向かった。『今年のベスト3に入るかも』というある人の批評が気になり、すぐに爪先を映画館へ向けたのである。夜の上映なのでそれまで腹ごしらえに近くの喫茶店に立ち寄る。
このお店にはモーニングでしか来たことがなかったけれど、夜は夜で黄ばみがかった照明がなんともノスタルジックな雰囲気を作り出している。
メニューを開くとすぐに本命が決まったので店員さんを呼び、好きな子と仲良くなる為に共通の知り合いに仲介してもらうようなテンションで『あのー、ハヤシライスってありますか?』と尋ねたが、
『ハヤシ』と聞こえた時点で爽やかな店員さんの表情が明らかに曇りはじめ、『ハヤシライスゥ、、ワ、いまから結構お時間かかルと思うんですがァ、、その、お米がァ、ちょっと、、』

かなり困らせてしまった。
『好きじゃない』とは言えない優しい子にやんわり振られたような感覚に陥った。
これ以上この人のしどろもどろを見たくなかったし
僕は映画までの時間しかなかったのでやめた。
そして僕はメニューを見直し、第二候補のきのことチキンのドリアにした。『ドリアもごはんじゃないの?』とも思ったけどそれは大丈夫らしかった。しかもドリアはめちゃくちゃ早く運ばれてきてスピード感に笑いそうになった。

下高井戸シネマでみた『カナルタ』は凄かった。
ドキュメンタリーなのだが、ここまで面白いとは思わなかった。

生きるということ、愛するということ。
地球という惑星で一から文明を築いてきた彼らの言葉にはエネルギーがあってヴィジョンがあった。
同じ時代を生きてることが奇跡というか、
すごく嬉しく思った。
この瞬間もこの地球であの人たちも生きている。
自分も一緒にマイキュアを飲んだようで、
チチャやアヤワスカが体を巡っているようで、
今ものすごく自分が瑞々しく感じる。
ずっと見ていたくなる映像だった。

気になった人はぜひ観てみて欲しい。
※途中嘔吐するシーンなどがあるので厳しい人は気をつけてください。

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