鳴かなけりゃ
猫と間違えそうなくらい
我が家の犬は
お刺身が好き

見上げる目
甘えるようなその瞳
そのお刺身を
一口ください

晩酌のツマミに
刺身を食べていると
足元にすり寄ってくる
我が家の飼い犬

見上げる瞳と
見下ろす目が
ガッツリとぶつかる

「私、そのお刺身が欲しいんですけど?」
その瞳は明らかにそう言っている
尻尾をブンブン横に振って
『お刺身欲しいんです!』アピール

「生の魚はあげないでね」
と妻からは注意されている
下痢をするのだ

ブンブンブン

振っている尻尾を無視して
刺身を食べる

ブンブンブン

いや
見ないフリ
見ないフリ

ブンブンブン
ブンブンブン

ため息をひとつついて
立ち上がる
もちろん犬もついてくる

小皿に刺し身を一切れ入れて
レンジで加熱する

ブンブンブン
ブンブンブン

レンジの中で
加熱される刺身
刺身にしてみたら
まさか加熱されるとは
思ってなかっただろう

ブンブンブン
ブンブンブン

足もとで
瞳をキラキラさせながら
待つ犬
その尻尾は
別の生き物みたいに
左右に動き続ける

ブンブンブン
ブンブンブン

加熱した刺身を
ほぐして
冷まして
犬の餌入れに
入れてやる

魚に食いつく犬を見ていると
今日も負けた気になる