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男と女、会話と言語

フランスに来て、屋外で食事をすることが増えた。

フランスでは、雨が降らない限りにおいて、カフェではテラス席の方が圧倒的に人気だし、庭付きの家に住んでいる人の家に招待されると、必ずと言っていいほど庭でのバーベキューや庭にテーブルを出しての食事となる。夏の天気の良い夕方は、セーヌ川沿いや公園の芝生はピクニックをする人でごった返す。

先日、庭付きの家に住んでいる方の夕飯会に招待された。フランス人の旦那さんと日本人の奥様の家で、その日は私のほかに、日本人女性2人とゲイの日本人男性1人が招待されていた。当然、庭での食事となった。

ある程度会話が盛り上がったところで、ゲイの日本人男性が私に、「会話が次から次へと変化する女性の会話の仕方ってイライラする?」と聞いてきた。

正直にいうと、私は話題が完結しないで次の話題へと向かうのが非常に嫌いだ。また、話している最中に話を遮られるのはもっと嫌いである。だから大勢のなかで喋っているよりも、誰にも邪魔されずに1人パソコンに向かい好きなことを書き連ねている方が好きだ。

上記のことをそのまま伝えると、話題は男女における会話方法の違いへとなった。男性は話している内容が完結してから次の内容へと移るのに対し、女性は完結する前から話が次々と枝分かれしていく傾向にある、と私に質問したゲイの方は考えているようだ。
以降は、前者を「男性的な会話」、後者を「女性的な会話」としよう。
彼は、ゲイであるためなのか、男性的な会話でも女性的な会話でも問題なくついていけるらしい。私は確かに女性的な会話はかなり苦手である。そして、その日の夕食会では、会話の主導権は女性に握られていたので、女性的な会話が場を支配していた。

男性脳、女性脳のような言葉が一時期流行ったが、そういったものが本当に存在するかどうかはまだはっきりとはわかっていないらしい。それぞれの脳の働き方の違いを比べると、確かに統計的に有意な差は出るが、それが「だから男性は○○で、女性は○○である」と言えるほどではないそうだ。こちらの記事が大変面白かったので、興味がある人はぜひ読んでみてほしい。

こういった研究はあるものの、確かにその夕食会に参加していた人だけをみてみると、それが性差に起因しているかどうかはさておき、男性、女性、そしてゲイで会話方法に違いは見て取れた。

一旦この話は終わり、その日は私の香水を皆に紹介する機会をいただいた。

そこにはフランス人の旦那さんも加わったため、私はフランス語で香水の説明をすることとなった。まずは私の説明なしに香水を嗅いでもらい、どんな印象を受けるかを各参加者に言葉にしてもらったのちに、私からどういった構成の香りになっているかについての説明をする、という流れにした。

その時に、ふと気づいたことがあった。日本人女性は、香りの感想をフランス語日本語まじりで発するのだ。例えば、「この香水、ça sent bonだね」のように。
(ça sent bon: いい香り)

そう言えば、今までも、日本語がわからないフランス人の旦那にフランス語日本語まじりで会話をする女性を何人も見かけたことがあった。

私は、これが全く出来ない。フランス語でスタートした一文の中には日本語は入ってこない。逆もまた然り。もちろん、一旦文が終了すると言語を切り替えられるが、一文中に複数言語を混ぜることはどう頑張ってもできないのだ。できるとしても、フランス語で話している途中の1単語が英語になる、というように、文法構造が近しい言語間での場合に限られる。

なぜ私が一文中に複数言語を使うことができないのか考えてみたのだが、多分文法構造が違うため、別の言語で正確に置き換えられない場合は混乱してしまうのだ。例えば、「私は走る」と“I run”という文を混ぜろと言われても、“I”は「私」と「私は」のどちらに相当するのかわからなくなってしまう。この場合は“I”に主格という役割が付与されていることから、「私は」の方が正しい気がするが、文が複雑になった途端にもう手に負えなくなる。

男性脳、女性脳の違いが本当にあって、それが会話方法に影響を与えているのかはよくわからないが、会話方法の違いと、一文中に複数言語を混ぜることができるかどうかということは、何らかの関係があるのかもしれない、と彼女らのフランス語混じりの日本語を聞きながらふと思った。

こんな気付きがあったことを、電話で母にしてみると、「性差もあるかもしれないけど、あなたはフランス語を文法からきっちり勉強しているから、そこが違いとして出ているのかもよ」という返答をもらった。これもなかなか面白い視点。

特に何か結論が出たわけではない。ただこういった違いを見るのは大変興味深かった。
何かの原因をどこかしらにインスタントに求めてしまうのは、悲しいかな人の性だけれども、世の中そんな単純じゃないよね、きっと、というお話でした。

おしまい。

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