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エレベーターのモーセ

遅い新幹線に乗る際、時間に余裕を持たせたい私は最終電車に乗ればいいものを、いつもそのひとつ前を予約してしまうのはどうしてだろう。そんなことをするのは私だけだろうか。

最終の新幹線はやたらと混んでいるイメージがあるからか、はたまた仮に乗れなかったとしても最終に間に合う可能性が残されるからか、私にもその理由はよくわからないのだが、私は今、例によって21時30分京都発、最終ひとつ前の新幹線に乗り込み、その中でこのnoteを書いている。


京都伊勢丹での「サロンドパルファン2023」は盛況のうちに幕を閉じた。

今回のポップアップは、他のポップアップに比べてçanomaのことを予め知ってくださっているお客さんが多かったように思う。そんなこともあってか、お客さんと香水とは関係のない話で大変盛り上がった(そのせいでお待たせしてしまった方、大変申し訳ありませんでした…)。çanomaローンチ前のクラウドファンディング、視覚障害者専用の老人ホーム、グランドセイコー、脳科学、佐賀、墨象、おすすめの本や絵本、母の看取り…あと何について話したっけな。とにかく、よくしゃべった。

6日間連続で毎日10時間の店頭接客をした割に、不思議とあまり疲れを感じていない。もちろん足腰肩はボロボロだが、気持ちはとても清々しい。いつも以上にお客さんに元気をもらった気がする。

伊勢丹新宿の「サロンドパルファン」はもちろん素晴らしいイベントだし、これが盛り上がることで地方百貨店で開催してもお客さんが来てくれるのは明白である一方、昨今の混雑具合のせいで、ゆっくりと接客できないのが私の中で引っかかっていた。今回の京都伊勢丹での催事は、そういう点では理想に近い形でお客さんに対応できたように思う。また、名古屋の栄三越でのサロンドパルファンでもそうだったが、お客さんから「地方でサロンドパルファンを開催してくれるだけでも嬉しい」という声を多数もらった。その点においても価値のあるイベントとなったと思うし、今後東京の人が伊勢丹新宿で見損ねたブランドを試すために、地方のサロンドパルファンに旅行がてら足を運ぶという流れが出てきてもおかしくない。

名古屋と京都のサロンドパルファンは来年も開催してほしいし、来週の仙台三越でのイベントも盛り上がるといいな、と思っている。


18時にイベントが終了し、19時すぎに撤収作業を終えた。お世話になった伊勢丹の社員さんとご近所のブランドの方々にさよならを告げ、その足で京都での取扱店のひとつである高島屋蔦屋書店の担当の方に挨拶に行った。彼女には彼女が銀座蔦屋書店にいた時からお世話になっていて、長い付き合いというほどではないのだが、久しぶりに会うことができて四方山話に花が咲いた。京都伊勢丹でのサロンドパルファンのこと、高島屋蔦屋書店のこと、お互いの生活のこと、本のこと…と話していたらすぐに閉店時間になってしまった。あまり時間がなかったのが残念だったが、会えてよかったと思った。

その後どうしても鰻が食べたくなり、高島屋の隣の建物の8階にあるひつまぶしのお店に行くことにした。以前行って美味しかった記憶があるその店の前に着くと、私の前に一組待ちがあるだけだった。新幹線までは1時間半、タクシーに乗って京都駅まで向かえば余裕だと判断して待つことにした。

5分ほどで席に案内された。すぐにひつまぶしとコーラを(どうしてもコーラが飲みたい気分だった)注文した。思いの外提供までに時間がかかったが、いつも通り美味しい鰻だったし、ゆっくり行っても新幹線に十分間に合う時刻に退店できた。

1階に降りるエレベーターが、無情にも私の目の前で閉まり、次のエレベーターまでしばし待たなければならなかった。到着したエレベーターにひとり乗り込んだところまではよかったが、一つ下の7階で扉が開くと、そこには多くの人が待ち受けていた。

私は扉横のボタンの前に小さくなり、頑なに「開」ボタンを押し続けた。ぞろぞろと群衆がエレベーターに飲み込まれる。と、ひとりの若い男性が、「ありがとうございます」と私に声をかけた。

満腹になったエレベーターは軽いいびきを立てながらまっすぐに地上に降りていった。エレベーターが目を覚ます少しだけ前に、私はまた小さくなって「開」ボタンに触れた。

エレベーターが口を開け、群衆の中からふたりほどが吐き出されたその時、扉を挟んで私の反対側にいた先の若い男性が、エレベーターの口の端を押さえながら、「お先にどうぞ」と私に告げた。彼のその声には力があり、口の外にぞろぞろと向かう群衆が魔法にかかったようにぴたりと動きを止めた。

私は先ほどの彼の「ありがとうございます」からふた回りほど小さく「ありがとうございます」を告げエレベーターを降りた。なんだか「モーセの海割り」のようだと思った。もちろん、モーセは彼だ。


素敵な京都での1週間が、こんな素敵な形で締めくくられるなんて、なんて素敵なことだろう。


あと少しで、最後の電車より一足先に東京駅に着く。2週間の関西出張もこれで幕を閉じる。

大阪、神戸、京都で会った全ての人に感謝しながら、私は今宵、久々の家の布団で眠りにつくだろう。もちろん、エレベーターのモーセにも、ちゃんとありがとうを心の中でいうつもりだ。


でもその前に、洗濯だけはしなきゃ。そうしないと私、明日ノーパンマンになっちゃう。


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