「香水って記憶と結びついてますよね」

私が香水に携わっているという話を初対面の人にした場合の8割程度の返答が上記のものだ。

それについて否定するものではないが、どれほどの人が“本当の実感”をもってこの言葉を発しているのかについてはいつも疑問に思う。過去を思い出すものは音楽や味等、香り以外にも多々あり、それらと比して香りが飛び抜けて過去と結びついているという実体験をしている人がこの世の8割を占めているとは私には到底思えない。もし本当に8割の人がそういう体験をしているのならば、日本の香水マーケットはもっと大きいはずだ。「記憶と香りの結びつき」に関する情報がバイアスとして強く働いている“匂い”がそこからはプンプンする。

それはそれとして。

何日か前に、ふと思い出して聴きたくなった曲があった。

それは私が中学生の頃に聴いていた曲で、さして思い入れがあったものでもないし、今その曲を聴きたくなる明確なきっかけがあったわけでもないが、どういうわけか不意に思い出された。どうしてだろう。記憶の抽斗に覚えず手が触れたのだろうか。

とりあえずYouTubeで探してみると、ご丁寧に歌詞まで出てくる動画があった。そういえばきちんと歌詞を覚えていなかったし、そもそも中学生の私が歌詞をちゃんと把握して聴いていたかも怪しい。いい機会なので、歌詞を追いながら曲を聴くことにした。

そこに衝撃が待ち受けているとは、思いもしなかった。

その曲のサビの最後の方に差し掛かったとき、YouTubeの画面には，こんな文字列が踊った。

「花言葉歌え」

え…？

花言葉歌え…？

私はこの部分の歌詞を、「あなたとファンファーレ」だと、ずっと思い込んでいたのだ。

この20年以上、ずっと…

危うく、「あなたとファンファーレ」のまま墓場まで行くところだったぜ…

はなことばうたえ

あなたとファンファーレ

結構、韻踏んでる…

ということで、Dragon Ashの『花言葉』というこの曲、ぜひみなさん、聴いてほしい。とっても素敵な曲だし、「あなたとファンファーレ」に聞こえるから、絶対。

そう、私はここで、この文章を読んだあなたに、Dragon Ashの『花言葉』のサビの終わりが、「あなたとファンファーレ」にしか聞こえなくなる呪いをかけました…

それにしても…「あなたとファンファーレ」って歌詞も、なかなかよくない…？Dragon Ashさん、ここ、「あなたとファンファーレ」にしてもらっても、いいですよ…？

いいんですよ…？

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