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お金をかけて情報を減らす

サングラスが手放せなくなったのはいつからだろうか。

幼少期からの頭痛持ちで鎮痛剤を常に持ち歩いている。頭痛の原因は肩凝りからだと思っていたが、紫外線による眼精疲労も実はその要因だと気づいてからは、晴れた日に外に出る際はだいたいサングラスをかけている。

サングラスをかけた瞬間に、“雑音”が消えたように感じられるのが好きだ。視覚情報に関することのはずなのに、なんだか静かになったような気がするのだ。

サングラスをかけると、本来であれば目から入ってくる情報量は減るはずなのに、視界がクリアになり解像度が上がるように感じられる。結局のところ情報量が多すぎると逆に何も見えなくなってしまうのだろう。


朝日新聞デジタルの有料版に登録した。

今まではコンビニで新聞を買うのとYahoo!ニュースが私の情報ソースだった。

新聞は持ち運びの不便さとあの量の紙を使用することへの罪悪感が常につきまとっていた。また、年間それなりの時間を海外で過ごすので、その間手に入らないというのもなかなかのストレスになる。本も紙派の私、紙の新聞は好きなのだが、利便性と環境に配慮するとそろそろ“潮時”かと思われた。

Yahoo!ニュースに関しては、数年前からヨーロッパでは日本のYahoo!そのものにアクセスできなくなっているので、これまたヨーロッパ滞在の多い私からすると大変に不便だった。ただそれ以上に、そもそもここ最近のYahoo!ニュースに有益な情報が少なくなっているように感じていた。実はそれこそが朝日新聞デジタルの有料版に登録した一番の理由だった。

しっかり探せばYahoo!ニュースにおいてもきちんとした記事に辿り着くことはできるのかもしれない。ただその“行手を阻むもの”が多すぎるのだ。芸能関係の記事が多いのは媒体特性的にしょうがないのかもしれないが、それ以上に気になるのが、「SNS上のコメントがタイトル中に含まれている系の記事」だった。

「SNS上のコメントがタイトル中に含まれている系の記事」といってピンとくるだろうか。Yahoo!にアクセスしてみればわかる。今パッとみて、見出しの中で引用されたSNS上でついたであろうコメントを以下に並べてみる(見出し全体を引用すると角が立ちそうなのでSNS上のコメントのみを抜粋)。

「これはたまらん」

「ただ、美しすぎる」

「仲良くてうらやましい」

「美人姉妹すぎてびびる」

「どうやって撮影したの?」

こういった、SNS上の反応がそのまま見出しに使われるようになったのはいつの頃からだろうか。私は常々それに違和感があった。結局のところ、SNS上の反応というのは、それが“実際にあった反応”であるという点で「事実」といえるが故に、ニュースの記事や見出しに用いることができる、という解釈なのだろう。そして「この記事を読んだらきっとあなたも同様の感想が“抱けます”よ〜」というメッセージとして見出しに入れ、ついつい記事をクリックさせようとしているのだ。下心が丸見えである。

「SNS上のコメントがタイトル中に含まれている系の記事」以外にも、下心丸見えの記事は散見されるが、中でもこれが私にとっては一番“目障り”だった。紙の新聞をゆっくり読む時間がない時の代替案としてYahoo!ニュースを用いていたが、そんな目障りさゆえにそろそろ限界が来ていた。


有料会員としてお金を払うことで、そういった余計な情報を目にする必要がなくなった。Yahoo!ニュースに比べたら記事の本数は当然少ないが、新聞に掲載されている質の高い記事のみに、スマートフォンさえあればいつでもどこでもアクセスできるので、大変快適になった。もっと早くから使っていればよかった、と思ったほどだ。


お金を払うことで情報量を減らし、それにより快適さを得る…なんだかサングラスをかけた時に感じるあの静けさのようだ。皮肉なようにも感じるが、当然の帰結のような気がしなくもない。

情報が溢れかえった今、それを取捨選択することにもそれなりのコストがかかるようになった。そして結果的に、古いメディアに回帰している。面白いといえばそうかもしれないが、違和感が全くないわけではない、と感じているのは私だけだろうか。どうだろう。


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