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迷いに迷って答えが出ない時は、ノリで答えを決めよう

36歳になった。この歳になると、自分の誕生日を祝いたい気分にはならない。むしろ、周囲への感謝の方が大きい。ぼくは親に生意気な口を聞くことが多かったが、そのたびに言われたのは「自分一人で育った様な顔をするな」ということ。その意味を体感できるくらいの分別はついた。

36年前に母がお腹を痛めて産んでくれたこと。成人するまで父が稼いでくれたこと。他人様の役に立つ仕事ができるよう、躾や教育を両親・学校・今まで所属した企業が提供してくれたこと。両親を育ててくれた祖父母。辛い時に手を差し伸べてくれた友人達。教育が国内に行き届くよう、制度を設計・運用してくれた人達。国内で雇用ができるくらい、経済を盛り上げてくれた先人達。便利な生活が送れるのは、世界中の科学者・発明家のおかげ。文明があるのは類人猿から人類に進化したおかげだし、人類が進化したのは地球のおかげ、地球があるのは……と発想を膨らませていくと、誰にどこまで感謝しても足りなくなってくる。

自分一人の努力では、今まで生きてこれなかったなと心底思う。ぼく自身も努力したが、その努力が実を結ぶかは環境次第だったりする。「手首をひねる」という努力は一緒でも、「水が出てくる」という結果が得られるのは、そこに蛇口があり・上水道が整備されている環境下だけ。生まれ出た環境を鑑みると、努力すれば結果が出やすい恵まれた境遇だったと思う。

上には上が、下には下がいるが、他人との比較は無益有害だ。どれだけ他人を羨んでも蔑んでも、自分の状況は寸分も変わらない。恵まれた人と比較したら惨めになり、恵まれない人と比較したら驕る。他人との比較をして、いい結果になることはない。人生の質を決める変数は2つだけ。「自分の認知」と「自分の行動」だけなのだ。

ちなみに、ぼくはサッカー好きなのだが、最近は戸田和幸さんが提供するアジアカップ日本代表の試合の裏解説が特にお気に入り。2000円で7試合の裏解説が聞けるサービスなのだが、内容はもちろん素晴らしい。サッカーが身体を最大限酷使する知的ゲームということを、目の前で起きている現象を解説して、分かりやすく伝えてくれる。最初の1試合で元が取れたと思った。

コンテンツそのものよりもぼくが個人的に感動したのは、戸田さんの熱量だ。日本の試合だけでなく、対戦相手の試合も分析している。しかも直近5試合見るから、単純計算で10時間強かかる。それを7試合やる。大会期間は3週間くらいだから、しかも事前に対価として約束されてたのは日本代表の試合だけなのに、ゲリラ的に他の試合も解説する。払った2000円が安すぎるのではと思うほど、提供してくれる。買った人にも前のめりに学ぶ姿勢を求める。

時給とかコスパとかせこい打算をしてたらあの活動スタイルにはならないし、義務感でやってたらあの熱量にはならない。自分自身の内なるものに突き動かされて、行動として表現されているのだと思う。新しいサービスはやってみるまで周りの反応が本当に分からない。ただ、ユーザーに受け入れてもらえるサービスは、作り手自身が心底良いと思って世に出してる。周りがどう思うか不安な状況でも、作り手自身の主観は「絶対に良い」のはず。

「自分自身はこういうサービスが世の中にあったら絶対良いと思うんだけど、みなさんはどう思いますか?」という問いを、世の中に投げることが新しいサービスを作ることなんだと思う。

ぼくの本業はメルカリのプロダクトマネージャで、副業でも一つサービス立ち上げをしている。模範解答がない仕事をしているので、基本いつも迷ってるし、自分が描いた道筋があってるのかいつも不安だ。

「果たして何が正解なのか?」
「一体みなさんはどう思うのか?」

こういう問いが常に浮かんでは消えるのだが、作り手として本当に大事なのは自分が心底良いと思っているかどうか。作り手のこだわりや熱量が最終的にはサービスの質に転化される。ユーザーとして熱量を受け取る体験をすると「良し悪しを評価する他人」から「好きだから応援する関係者」に変わる。

学校教育で正解が用意された問題ばっかり解いてきたので、30数年ほど勘違いしていたが、人生がぼくらに投げ掛けてくる問いには正解がない。

幸せとは何か。
キャリアをどう築くべきか。
理想のパートナーはどこにいるのか。
子供にどんな教育を与えればいいのか。

こういう問いに対して、他の人が成功した方法をそのまま真似したところで、ほぼしっくりこない。正解がない、というか正解が人によって違う。

正解を決めるのは自分しかいない。と書くと難しく感じるが、言い換えると「最後はノリで決めて良い」のだ。それで失敗したらどうするのかって?そんなもん自分で自分のケツを拭くしかない。ノリで決めようが、論理をこねくり回して決めようが、失敗するときは失敗するし、成功するときは成功する。

どうせ最後は死ぬんだから、人生で起こることはほとんど途中経過にすぎない。結婚も就職も昇進も、失恋も失業も降格も、成功も失敗も全部途中経過だ。途中経過を気にし過ぎたら、人生は楽しめない。

人生で大事なことを決めるときは、どうせ迷う。そりゃそうだ。大事だから失敗したくないし、慎重になる。でも、情報収集をし尽くして、迷いに迷って気付くタイミングが来る。結局自分が決めるしかない。

完全に経験則でなんの普遍性もないが、迷いに迷った挙句、発動する「ノリ」は結構合ってる。最後はノリで決めれば良いんだから、道中の迷いも楽しんでやっていきたい。

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