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Co-WriteDay 主催の高波由多加 (NAMY) フィンランド現地インタビュー

時代は変われど、国を世代を超えて音楽でつながり、コライトする事で生まれる新しい音楽。

新たな時代を迎える今、僕たちにとっての音楽とは。
Namy& Inc. が仕掛ける音楽の新しい取り組みの場 ”Co-WriteDay”(コライト・デイ)。

プロジェクトを主催するNamy (Namy&Inc.) に、Co-WriteDayの展望について、参加中のアムステルダムのADE、フィンランドのWOMEX(ワールドミュージックエキスポ)からお伝します。

(取材:シオミユタカ/”o-moro” Music From Finland
※この記事は2020年1月に編集公開された記事です。


まずは「コライト」、そしてCo-WriteDayはどういった取り組みですか?

アーティストが一緒にライティングやコラボレーションをしながら曲を作っていく事を、海外では「コライト」という言葉で表現されていて、いい言葉だなと思っていました。

僕たちの現場でも、お互いのセッションを「コライティングセッション」と言う様になって来ています。
Co-WriteDayは、僕自身が今までミュージシャン達の協力を得ながらやってきた共同作業を、よりわかりやすくコンテンツ化し、かつ国を超えて実施しようというプロジェクトです。

日本では肌感覚として、まだ言葉として浸透してませんよね。例えばAmazonでキーワードで調べても本が1冊出てくるくらいです(笑)国や世代を超えて、お互いのフィーリングが合えば一緒に曲を作ろうよ!という、ある意味 アーティストにはとっては、とてもシンプルな事なんです。わざわざ改めてひとつの言葉として表現していくべきか?とも思ったのですが、10年前にNamyという音楽プロジェクトをはじめてから、国を超えて多くのミュージシャン達と曲を制作してきました。

その後、派生したAmPmという覆面プロジェクトでストリーミングサービスを通して世界中の人に聴いてもらえるミラクルも経験した後、実は ミュージシャン達が離れていく時期があったんです。そんな時期を経た今だからこそ、改めてミュージシャン同士のセッションをCo-Write表現していくべきだと確信しています。

今回 ADE、WOMEXなどヨーロッパの音楽カンファレンスに来たみた感触や印象について教えてください。

Co-WriteDayを実施するにあたって、まずはカンファレンスなど、世界中のミュージシャンや音楽関係者が集まる場に行ってみようと思いました!今回で4回目の参加となるアムステルダムのADE、そして今年フィンランドで開催されていて初参加となるWOMEXにも流れで行ってしまおうと!具体的な仕事があってというよりは、まずは体感してみようと思って参加しました。


アムステルダムでは、たとえばみんなでランチに行って、入れ替わりでいろんな人と会ってどこの国でどんな音楽をやっているか紹介したり、イヤフォンを用意してお互いの曲を聴きあったり。

その中ですぐに「じゃあ来年の春くらいにツアー組むよ」、「ツアーを組む上で、まず一緒に曲を作らない?」という会話が生まれるんです。これってすごいなって思いました。
みんなリアクションが超早い!!

実際、イギリスのリバプールでDJ・プロデューサーとして活動している人と仲良くなって、リミックスか曲のコラボか、実際に仕事というか、音楽の制作活動につながるような話がいくつか出てます。まず東京に来るときには一緒にご飯を食べようよ!とかも。

顔を合わせて好きな音楽を共有すると、会話の中から共通言語やキーワードが出てきたりするんです。直接顔を合わせてから曲を作ろうというのと、メールやSNSでやりとりして音だけで判断して作るのでは、自分も相手も熱量が全然違いますね。どちらも「コライティング」なんですけど、前者はより“ライブ”をしているような生の感覚に近くて心地がいいんです。

会ってお互いに「人として」コミュニケーションをして、その上で「音楽として」コミュニケーションするのが、やっぱり大事だって気付かされました。そういうのって、いつの間にかストーリーにも繋がっていくと思います。

僕はDJでもありますが、ミュージシャンというよりディレクション的役割の方が大きい。
自分が信頼するミュージシャン達を連れてきて、そこで会話(セッション)が生まれた時に、より強い化学反応が起きるんじゃないかなとフィーリングで感じています。

初参加の“WOMEX”の印象を教えてください

WOMEXに実際来てみて思ったのは、想像していたより国境なんてない!ということですね。
彼らは昔からの伝統音楽をただやっているだけではなくて、それぞれの国のルーツミュージックをシーンの中で「今にどう落とし込んで、どう伝えていくか」を考えているという事が素晴らしいと思いました。

あとは、僕が「東京から来た!」と言っただけで、自分たちの音楽を東京や日本でも伝えたいんだ!って事を熱烈にPRしてきますね(笑)トイレでもカフェでも向こうから自然と話しかけてくれるんです!オープンマインドの中で、自分たちの音楽をしっかり知ってもらいたいと思って来ているんだなって。それを通して自分の熱量が高くなったというか、また直ぐ来たいなと既に思ってます!

現場の熱い感じが伝わって来ました。気になったバンドはいましたか?

昨晩見たバンドは全部良くて、特に最後に見たTuuletar(トゥーレタル)という4人組のフィンランドのアカペラグループは、コーラスだけでなく打楽器を使ったり、ヒューマンビートボックスを使ったり。初めて観た世界観でした。

ダンスミュージックの中ではレコードやライブを通していろんな音楽を聴いて来たけれど、WOMEXで聴く音楽は、僕にとって初めての音楽が多かったですね。使われている楽器がその国の昔からの伝統楽器だからたまたま知らないだけで、それをポップなフィールドで聞かせてくれるのがすごい面白いと感じました。たとえばTuuletarならフィンランドの伝統的な物語、カレワラを取り上げて伝えていくとかね。

先の話になるんですが、僕も今後のコライトを通して、お互いの国の文化について話しながらその中で出てくる何か?!それを海外と日本両方の視点でコンセプトを作リ、音楽として創っていくのが面白いのではと思っています。どこの国とかは関係なく、それぞれのオリジナリティをいい感じでマッチングして発信したり共有していく、そのこと自体が楽しくなるじゃないかなと。

そもそも楽しさからしかコライティングの面白さって生まれないですよね。あんまり枠組みを作りすぎても違うんじゃないかなと今回のWOMEXを体感して思っています。
すごい自由じゃないですか!!


WOMEXで感じたフィーリング。それをどうやって日本から海外に結びつけようと考えていますか?日本側のアティチュードは?

僕はDJを通してワールドミュージックに触れ合えたタイミングがありました。僕自身が感じているのは、旅をしたりしながら、広い意味でのワールドミュージックに興味を持っているかどうかは、すごく重要だと思います。それがブラジルであれアルゼンチンの音楽であれどこでもいいんですが、共通言語としての好きな音楽への熱がめちゃくちゃ強くないと、コライティングにおいてWin-Winになりづらいというか。熱い人と会うと心が動かされるし、その熱さでお互いを感じてやり取り出来たら最高ですよね!

日本にいながらでもワールドミュージックやミュージシャンへのリスペクトがあるミュージシャン。一度海外に出て現地で直接バイブスやフィーリングを感じて…というミュージシャンも、コライティングに関わってくれることで、海外から呼ぶアーティストと、きちんと音楽的な会話ができると思います。

英語がそんなにできなくても、まずは、好きな音楽が共通言語としてあれば、繋がれて仲良くなれるんです。僕も片言英語で、ほとんどボディーランゲージですが(笑)僕自身、いい歳になりますが(笑)近く留学をして英語を身につけていこうと思ってます。まだまだ学びですね!

お互いにハートで繋がってるって思っていて、それぞれの国の人とハートで話しているつもりです。それを僕は、「ハートの貿易」って言ってます。

コライトを仕掛ける側だけでなく、ミュージシャン自身が同じような気持ちを持っていてくれたら、もっとお互いに深い会話ができると思う。。逆にそういうところがないと、無理にはめ込んでも意味がないとも思っています。

音楽は互いのリスペクトから生まれる「ハートの貿易」という事ですね。
では、1月のコライトデイの具体的な話を教えてください。

1月末をめどに、マレーシアのクアラルンプールから”Froya”というシンガーソングライターを呼ぶ予定です。

彼女とは、僕がプロデュースしていてレーベルのアーティストでもある”Snowk”という2人組のユニットがリリースしている、”Kitsuné Musique”というフランスのレーベルがきっかけで出会いました。

やりとりして仲良くなったタイミングで「まさかの偶然」なのですが、今年9月に僕が登壇した”Asian Picks”(福岡からアジアの音楽をつなげるカンファレンス)に、Froyaがライブでたまたま来てたんです。こんな偶然はあるのか!と思って。

そんな出来事もあり、Froyaにはうちのプロジェクトで何曲かヴォーカルレコーディングのオファーをしているんですが、すごく素敵な歌が上がってくるんですよ。

彼女はトラックメイクもできて、トップラインももちろん書けて…というマルチな才能を持っているんですが、今回はトップラインを書いてもらうというのを一つのベースに、日本で活動するUQiYOのYuqiくんに参加してもらいたいと思ってます。

彼との話はまた追っての機会でお話したいと思いますが、
私自身が心を揺れ動かされた素晴らしいミュージシャンです。

Namy& Inc.は、今後コライトをどう仕掛けていこうと思っていますか?

ここ数年はNamy& Inc.として、まずUQiYOを「コライトの伝道師」的な存在として、彼を中心にCo-Write作品を動かしていくつもりです。彼とは音楽の旅をしながら。もちろん、他のミュージシャンもCo-Write作品をとにかくレーベルとして制作していくつもりです。

Namy& Inc.という会社としては、ミュージシャン同士のリスペクトから生まれる音楽の環境、『場』をつくることを大切に、それぞれの中でのコライティングを試していきたいと思っています。

例えば、HipHop、R&Bの文脈でコライトする場合シーンの中からフィーリングの合うアーティストを。少し民俗的な音楽をやるときには、アンビエントやチルアウトという軸でコライティングする国やアーティストを選出します。
何より、ジャンルという括りでなくても、お互いの音楽的なリスペクトを中心にしたいですね。

DJやこれまでの活動の中で得たキーワードを踏まえるのと、これからはそれに限らず、少しずつ「グッドミュージックのコライティング」をマッチングしていければ。
これまで国内外多種多様な現場選曲したり音楽のディレクションに関わってきた経験を生かして、うまくチョイス、セレクトできるのではないかと思っています。


これから「コライト」していく中で、海外のアーティストに向けてメッセージをお願いします。

日本には潜在的なワールドミュージックファンが実は、たくさんいると思います。私もクラブカルチャーに触れた事でのめり込んでいる一人です。

ただ、実際にWOMEXに来て自分自身が強く感じた事ですが、インターネットで知れる音楽の情報は多いものの、日本のメディアで知れる音楽の新たな発見の入り口は、かなり限定的ではないか?と思っています。 

だから、まずは海外に僕たち自身が出て行き「日本のファンにあなたたちの音楽を届けられるし、こんな音楽が日本にもあるんだよ」とface to faceで自分は伝えたいです。

コライトの流れから新しい曲が生まれ、新しいオリジナリティとして、いろんな国のミュージシャンの音楽活動にとっての糧となるように。一緒にその国の歴史や暮らしを知る上でツアーや地元の人と触れ合ってもらったりね。
日本という文化にも触れてもらい、お互いの土地を行き来していく中でコミュニケーションすることで生まれてくる音楽を、じっくりと何より楽しんで作っていこう、つなげていこうと思っています。

この先のタームとして、音楽を「MAKEする場所」、「つながる場所」という2つをキーワードをもとに、海外にもスタジオや演奏できる場所を展開していきたいなと考えています。

規模は小さくても良くて、どちらかというとミュージシャンからの紹介の連鎖がバズになっていくというのが、可能性としてすごく面白くなっていくんじゃないかと。この2つのキーワードを、小さくてもいいので、チャレンジとしてこれから数年かけて海外にも拠点を作っていこうと思っています。

It’s a small worldという考えで!

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