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ヨーロッパSAKE事情 ~スイス編~

こんにちは。
株式会社小林順蔵商店の小林佑太朗です。
今回は、ヨーロッパSAKE事情~スイス編~を語っていきたいと思います。

スイスの概要

スイスは、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれた内陸に位置しており、国内には多くの国際機関の本部が置かれる国です。
首都はベルン、主要な公用言語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語であり、地域によって話される言語は異なります。
また、その共有通貨はスイス・フランという独自の通貨を有しています。

スイスは、ヨーロッパの中央に位置する国ですが、EUにも欧州経済領域(EEA)にも加盟しておらず、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国としての立場を長年位置しています。
簡単に言うと、ヨーロッパのEU諸国に周りを囲まれてはいるが、スイス自身はEUに属しているわけではなく、EUやその他EUに加盟していないヨーロッパ諸国(例えば、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーなど)と経済協定を結んで貿易を行っているのです。

(ちなみに、スイスは1992年に提出していたEU加盟申請について、2016年6月15日に正式に加盟申請取り下げを可決しました。加盟申請は提出された1992年から保留になっていたのですが、この度加盟の賛否を問う国民投票で過半数が「非加盟」に票を投じたことにより、「EU加盟にメリットを感じない」という結論をEUに対して出したということです。これは、EUに加盟してしまうと国民投票による国としての意思決定が出来なくなってしまうことをスイス側が嫌った、さらには治安・所得・教育などの生活水準も世界的に見ても非常に高いレベルにあるためEU加盟のメリットがあまり感じられなくなった、といった理由があるのではないかと噂されています。)

スイスのアルコール全般に関して

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さて、お堅い話になってしまいましたが、スイスのSAKE事情について少し触れてみようと思います。まずは、アルコール全般に関して。

スイス周辺には、フランス、イタリアのようなワイン大国やドイツ、ベルギーのようなビール大国があるので、ワインビールなどは他国の輸入品が多数そろっています。
もちろん、スイスワインやスイスビールも製造・販売されていますし、やはり輸入品よりは安いため現地人は自国産ビール・ワインをよく飲んでいるイメージですが、逆に周辺国はわざわざスイス産のビールやワインを飲まなくても自国により安くて品質の安定した商品が多数存在しますので、あまり輸出されないようです。
なので、結果的にスイスワイン・スイスビールはそのほとんどが自国で消費されているのが現状のようです。

スイスにおけるちょっと驚きのアルコール事情!?

また、スイス国内でのアルコールの購入は比較的容易にできます。主要な町には、ワインショップやコンビニ、スーパーマーケットが多数あり、ビール、ワイン、ウィスキー、リカー類など基本的に何でも購入する事が出来ます。

一つ面白いと感じた点は、スーパーマーケットでアルコールを購入する際には、スーパーマーケットチェーンによってお酒が買えない場合があるという点です。
例えば、スイス国内で主要なスーパーマーケットチェーンは、CoopMigroの二つがあります。Coopでは、普通にアルコール類が販売しているので、ビール、ワイン、リカー類など購入することが、Migroというチェーンではアルコール販売はされていません。(アルコールフリーのビールなどは販売しています)
なので、スイスのスーパーマーケットでアルコールを購入する際には、そのチェーンを確認する必要があります。

スイス人の驚きの飲酒習慣!?

さらに、皆様ご存知の通り、スイスは金融大国でもあり、町中に大手銀行からプライベート銀行までたくさんあります。お昼時になると、スーツを着た金融マンらしき人たちが、ランチを食べに街に繰り出します。
そこで、びっくりしたのが、彼らはランチ中にワインを飲んでいるのです!しかも、同僚もしくはクライアントと二人で1本のワインを平気で飲み、平然とした顔でオフィスへ帰って仕事の続きをするのです!欧米人はアルコールに強いとは聞いていましたが、初めて見つけたときは非常にびっくりした出来事でした。
あるスイス人にそのことを聞いたところ、「ワインなんて水みたいなものだし、金融マン(特にプライベートバンカー)にとってクライアントとより深い話をするために、アルコールを挟みながらランチミーティングした方が効率がよい」といったことを言っていました。
お酒の強い人種、そして金融大国であるスイスならではのエピソ-ドかもしれませんね。

スイスにおける日本酒の存在感

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スイスにおける日本酒の存在感というのは、近年で確実に大きくなってきていると思います。
これはやはり、2013年に和食が世界遺産と認定されたことにも大きな影響を受けており、それはスイス国内における和食レストランの増加がそれを物語っているように感じます。

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今では、スイス一の大都市チューリッヒにおいても、日本人系の和食レストランはもちろんのこと、現地系フュージョン和食レストランも多く見る事が出来ます。また、和食(特に寿司)のファストフードチェーンも全国展開しているので、ランチ時になるとビジネスマンが箸を使って寿司を食べている姿を見かけます。もちろん、ディナーの時間になると居酒屋感覚でSAKEを片手にディナーを楽しむ人々も多いです。

スイスでSAKEを取り扱う仲間たち

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もともとスイスはヨーロッパのど真ん中に位置しながら、EUに属していないということで日本酒は周辺国と比べるとあまり入ってきてはいませんでした。しかし、現地在住の日本人やスイス人によるディストリビューターは少ないながらも存在していました。

我々は、2014年に創業したチューリヒに拠点を置く「Shizuku」というディストリビューターと共にスイス国内でのSAKEの普及をお手伝いしております。Shizukuの代表はMarc Nydegger氏という方で、日本にも何度か留学経験をお持ちのスイス人です。

彼は、SAKEの美味しさはもちろんのこと、その製造をしている酒蔵の想いやストーリーも一緒に伝えることで、日本酒のファンを一人でも広めようと活動をされています。今では、自身の小売店舗もお持ちで、月に一回程度のペースで現地の方に日本酒のレクチャーを行っています。

彼によると、スイス人はその周辺国の影響からワイン文化が非常に盛んなため、どのような酒が美味しいのか、そしてどの様に飲まれるとさらにおいしいか、などに関しては確かな舌を持っているそうです。ですので、一回一回のイベントやレクチャーでは、彼自身が前に立ち丁寧に一つ一つの商品、酒蔵を参加者に説明するそうです、時には、参加者からの質問が多すぎてイベントの時間をオーバーしてしまうほどだそう。

そういった彼の地道な活動の成果か、評判が評判を呼び、今ではチューリヒを中心に欧米系のレストランの多くにSAKEを卸すことができているようです。新聞や雑誌、ラジオなどのメディアにも取り上げられており、最近では彼の店や名前をメディアで見ない月はないほどだそうです。

そんなチューリヒには、SAKEを扱う店が年々増加していますが、今回私が訪れた店の一つをご紹介します。

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その店の名前は「Ginger Sake Bar」です。この店は、チューリヒで初めての本格的な酒バーで、系列のレストラン「Ginger」の隣に併設されています。まず店内に入ると、こじんまりとしたスペースに存在感のあるバーカウンターが設置されており、その背後には酒瓶や酒樽が所狭しと陳列されています。壁に掛けられている絵や装飾は、実際にマネジャーの方が日本へ行き、蚤の市で直接購買されたものだそうです。オリエンタルとモダンの融合した非常に居心地の良いバーです。

私は一杯目には「Ginger Sake Bar」オリジナルのSAKEカクテルをオーダーしました。

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それは日本酒に、オレンジピールとジンが入った非常にさっぱりとしたカクテルでした。もちろんSAKEも数多く取り揃えており、イケメンのバーテンダーが一升瓶から注いでくれます。料理に関しても併設された和食レストランからオーダーできるため、食事に関しても非常に満足のできるものでした。ヨーロッパ旅行の間に、和食・日本酒が恋しくなったらぜひお立ち寄りください。


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