見出し画像

2月

あっという間に2月も終わってしまいました。そういえば、歳をとる度に時間が経つのが早くなるという陳腐な表現をする様になって暫く経つのが悲しい。

【音楽】

Young Fathers 『Heavy Heavy』

前作から5年振りとなるかなり久々のリリースだったけど軽く期待を超えてきた。アルバムを通して聴くとこちら側がクレッシェンドの記号そのものになってしまいそうな程のグルーヴ感。どこか祝祭的で開放的なこのアルバムを聴くと、ポストコロナの時代に突入したのだという実感が湧く。

Paramore 『This is Why』

近年のY2Kトレンドやポップパンクリバイバルの中で、Blink-182のように本家がちょっと残念な復活(トム・デロングの復帰は嬉しかったのだが新曲が…)もしてしまう一方で、Paramoreはタイトに纏めたウェルメイドなアルバムを放ってきた。ポップパンクの先にある円熟が光るのは、Hayley Williamsのソロ作での実験を経た事も大きい。あの頃のような瑞々しさとポストパンク的な乾いた達観が同居した傑作。

Kelela 『Raven』

クラブカルチャーからインスパイアを受けたというKelelaの2nd。前作がめちゃくちゃ好きだっただけに期待値爆上がりだったけどまた違うベクトルの傑作を届けてくれた。先行シングルの段階ではアルバム通して去年のBeyonceのようなクラブミュージックになるかと思ったが、蓋を開けるとアンビエントのトラックが多くを占める静謐なアルバムだった。クラブカルチャーを彼女なりに再解釈し、自身の内省と合わせて"水"の中を移ろう今作は唯一無二。今の所ベストトラックは『Contact』。

Liv.e 『Girl in The Half Pearl』

流行りのドラムンベースリバイバルしてるだけでしょ?って思ってたらそれはただの手札に過ぎなかった。ネオソウルだけでなく様々なジャンルを横断した乱雑に散らかったオルタナティブR&B。ただその破片の一つ一つが楽しすぎるから拾うのも苦にならない。未だ掴みどころが無くて、聴き込みがいのあるアルバム。

Two Shell 『lil spirits - EP』

先月のイベントでも披露していた新曲が収録されていた。前作より軽薄でどこか嘘っぽいサウンドはインターネットの本質をより的確に表しているのでは無かろうか。嘘と欺瞞に溢れたインターネットを可笑しく批評してみせる覆面デュオ。Daft Punkほど大層なものでは無い彼らだが、液晶の何処かに潜んでこちらを見ているのだ。

Model/Actritz 『Dogsbody』

今月のリリースで最も食らったのはこのアルバムかもしれない。ブルックリンを拠点とするバンドのデビューアルバ厶。ここまで真正面から乾いたポストパンクを食らったのは久しぶりかもしれない。Joy Divisionを狂ったように聴いていた頃を思い出したし改めて自分のポストパンク愛に気づいた。初期衝動では片付けられない洗練された勢いを纏う最強のアルバム。

Yeat 『AftërLyfe』

1周目は長ぇなあと思いながらRageの限界を感じたのだが、そこまで悪いアルバムでは無いことに気が付いた。勿論捨て曲もあるのだが、『Now』や『Mysëlf』は文句無しでカッコいい。Rageの限界まで突っ走って欲しい。

Key Glock 『Glockoma 2』

これで良い。このアルバムはsolidの一言に尽きる。メンフィスのトーン&マナーにしっかり乗っとり、名声を吐き捨て女と金と暴力についてラップする。凶暴で不穏なビートの中、淡々とラップする彼の姿にはYoung Dolph亡き今、純金のクラウンが載っている事だろう。

Young Nudy 『Gumbo』

それぞれの曲が料理をテーマにしていて料理名が曲名に取られているアトランタのラッパーYoung Nudyの新作。ここから彼のハングリーさにも結び付けられることが出来るようなウェルメイドな曲の数々。CoupeとYoung Nudyの作る音楽にハズレ無し。Cartiは何時しか向こう側へ行ってしまったけど、Young Nudyはラップゲームに留まってその可能性を追求してくれている。

<旧譜>

Teedra Moses 『Complex Simplicity』

PitchforkのSunday Reviewで発見。どこか朧気な雰囲気が煌びやかなサウンドと相対して見受けられる2000sR&B。

Swans 『White Light fron the Mouth of Infinity』

Swansは今まで『To Be Kind』以降の近年の作品は聴いてきたけど、凄さは分かっても気軽にリピートするようなアルバムでも無かった。近年のドローンっぽいサウンドでも初期のノイズな感じでも無く、どこか夢幻的なシンセサウンド。Swansにもこんなに聴きやすい時期があってビビった。俗っぽさがクセになって何度も聴きたくなる。

<Live, Event>
Pavement "Japan Tour '23"

正直これまでそんなにPavementにハマった時期は無くて、どちらかと言うとPavementに影響を受けたアーティスト達にハマっていた。これを機にアルバム5枚全部しっかり聴いたけど、やっぱり前から好きだった2ndが美メロの応酬で1番好きだし、4thの良さにも気づいた。万全の状態で挑んだライブ。客層はおじさんおばさんが多かった気がする。正直仕上がっているとは程遠い演奏で、ミスもあった(しかもGold Soundzで!笑)。だけどその感じを微笑みながら見守る会場の緩さ、おっさんになってもグダグダとマイペースにやるそのアティチュードが素晴らしいと思った。ピンと来ない曲もあったけどGold SoundzやShady Lane、Range Lifeのような名曲を聴けて本当に良かった。もしかしたら今後見れないかもしれないことを考えると、とても貴重なライブでした。

Phoebe Bridgers "Reunion Tour"

京都MuseのアコースティックライブをTLでみて心底羨ましかったけど、なんばhatchも最高だったよ!メタルバンドのような登場の後、炎の中から現れたPhoebeがMotion Sicknessを披露した時からあっという間にライブは終わった。Punisherからは全曲聴けるセトリだったけど改めて圧倒的な曲の良さに感動した。アンコール前の最後の曲、I Know The EndでPhoebeと会場のオーディエンスが一体となってスクリームした瞬間、あの頃の杞憂な日々とやっと決別できた気持ちになった(Punisherはコロナ禍にリリースされた)。バンドのファニーな雰囲気、童話のようなコンセプチュアルなVJ含めて最高なライブだった。

【映画】
The Northman

『ライトハウス』を見てロバート・エガースには一目惚れしたので、北欧ヴァイキングの映画を撮ると聞いて絶対合うと思ってたけど予想通りベストマッチ。
彼の世界観はやはり北欧神話にマッチしていて、不条理世界をつくるのが上手い彼の作風は神話という不条理を描く上で最適。ただ、神話ベースなだけあって彼特有のエグ味が若干失われていた気がする。それでも洗礼的なシーンの汚さとか、容赦ないバイオレンスシーンは流石。
チャント×ドローンな劇伴は地を這うような不気味さで最高。一瞬だけ出てきたビョークは存在感ありすぎた。アニャは居るだけで画が持つし、年々色気が出てきて今1番アツい女優。
ヴァイキング映画としてこれ以上ない出来だけど、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズやGoTを経た観客にとって満足のいく単体のファンタジー映画をつくるのって至難の業だと思う。

2月こんなもん。Aaron Dillowayのライブとか行きたかったなぁ。更新遅くて早くも三日坊主になる予感がした雑感Ⅱでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?