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七夕

大阪の空は上を見上げても、少し明るい空しか見えない。真っ暗になることもなければ、光り輝く星を見つけることもできない。七夕といえども、織姫と彦星を隔てている天の川もなければ、七月七日の一年に一度のロマンチックな再開をすることもない。星に願い事をすることもないし、流れ星を見るために草原に寝転ぶこともない。
こんなことを言っているが、七夕が何なのか僕は知らない。織姫と彦星は誰なのか、どういうお話か知らない。
僕の地元は島だから、夜になれば真っ暗になり文字通りの満点の空を見ることができる。流星群じゃなくても草原に寝転んでいれば流れ星を見ることができるし、天の川も常にある。
三年ほど前に付き合っていた彼女を地元に連れて行ったとき、どうしてもその星空を自慢したくて外へ連れ出し、草原に寝転び星を眺めていた。一緒に流れ星を見たときは彼女は興奮し、僕もこの人は運命の人なんじゃないかと錯覚するほどに浮かれていた。
浮かれていた僕は少ない知識で星を紹介した。星を紹介するとは変な言い方だが。これがオリオン座で、この辺のどれかが夏の大三角形で、たぶんあれが北斗七星。この程度だが、自慢げに紹介した。
この白くなってるのは何?と彼女が聞いてきた。待ってました顔をしながら僕は得意げに話しだした。これが天の川だよ。天の川を見たことがない人は天の川が年中あることを知らない。もしくは彼女の知識が乏しかったのかもしれないが。
「え!これが天の川?なんであんの?ロマンチックじゃないね」
え?まさかそんな反応をされるとは思わなかった。天の川を見たことの興奮よりも年に一度じゃないというロマンチックのなさに失望してしまったらしい。(天の川がなくなるのが七月七日なのか、現れるのが七月七日なのかは知らないが。)
乙女心とはよくいうものの、乙女心がこんなにも乙女心だとは知らなかった。それに彼女がそんなに乙女だということも知らなかった。記念日なんかにプレゼントをあげたりお祝いしたりはしなくてもいいよ。と言ってくれる子だったから。
ここで得た教訓は、乙女にとっては「常にあるものがいいとは限らないということ。」「年に一回だからこそ美しいものもある」「本当は記念日も祝いたかったのかもしれない」
それにしても織姫と彦星は会う頻度少なすぎて嫌になるやろ。どこがロマンチックなん。って思ってしまう僕に乙女心は一生わからない。


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