見出し画像

保坂展人世田谷区長の記者会見でフリーランスは質問できるのか(4)

 2022年10月24日13時45分、保坂展人世田谷区長の記者会見が始まる15分前。

 広報広聴課の窓口で同課の大道力(おおみち・ちから)氏と私が話しているところへ、フリーランスの於保清見(おぼ・きよみ)氏が現れた。と同時に、大道氏の上司ふうの男性職員も現れた。

 於保氏は大道氏に「於保清見と申します」と挨拶した。直後、男性職員が私に「係長の岡田(弘樹)と申します。ここのスペースは、まだ撮影を許可しておりません」と言った。

岡田弘樹氏

 このとき、私はスマホで動画を撮影していなかった。しかし、岡田氏が「庁舎管理規則で……」と言い出したので、「まず庁舎管理規則を持ってきてください」と応じながら撮影を再開した。

 以下、私が YouTube で公開している「保坂展人世田谷区長の定例記者会見からフリーランスが排除されるまでの生映像(2)」に基づき、やりとりの概要を記す(敬称略)。

なぜか庁舎管理規則を見せない岡田氏

寺澤 庁舎管理規則を、まず持ってきてから言ってください。あるんでしょ? またウソついてんの?

岡田 ウソをついているということではないんです。

寺澤 「庁舎管理規則がある」って言うんでしょ? それを見せて説明するのが当たり前でしょ?

岡田 ……。

寺澤 あるんだったら、見せればいいじゃん。何で見せないの?

岡田 ……。

寺澤 (岡田氏が首からぶら下げている名札を見ながら)岡田さん?

岡田 はい、岡田と申します。ご要望は何になる……。

寺澤 これから記者会見に行きます。

意味不明な「言語化」を要求する大道氏

岡田 世田谷区で開催している「記者会見」と言っているものについては、こういった(フリーランスを排除する)形で開催させていただいていますんで。

寺澤 まったく納得いきません。

大道 現行のルールというのは確かにあるんですけれども、それに対して報道機関の方からご意見を承れば、それを踏まえて、区としても、毎回、検討しているんです。

寺澤 「ご意見を承る」もなにも、今回、さんざん言ってるでしょ。

大道 だから、そこをしっかり言語化いただきたいんです。

寺澤 「言語化」って、これだけ言ってわかんない人に対して、「言語化」もないでしょ。「あなたたちが勉強しなさい」って話でしょ。

大道 改めてご説明させていただきますと、区としては、フリージャーナリストの方の取材っていうのを妨げているつもりは……。

寺澤 今、妨げていますよ。現実に。

大道 区の見解、先にご説明させていただきます。それに対して、「いや、おまえら、そこ、おかしいだろ」ってとこがあったら、ぜひ、うかがいたいんです、私としても。なぜなら、広報広聴課っていうのは、報道機関の方が円滑に取材ができるように調整する場だから。今のルールっていうのは、報道機関の方が円滑に記者会見っていうのをまわせるようにって考えられたものなんです。具体的に言うと、フリージャーナリストの方っていうのは数多くいらっしゃると思います。それを無制限に受けつけてしまうと、会場の……。

寺澤 「無制限」じゃないでしょ。今、来てんのは、我々2人だけだと思うけど。あなた、ウソつかないでよ。

大道 ってなったとき、どっかで線を引かなきゃいけない……。

寺澤 今現在、来てんのは私たち2人しかいないんだから、「無制限」じゃないでしょ。「2人だけ」でしょ。

於保 たとえば、私たち2人が入ったら、100人来るんですかっていうことなんですよね。

大道 そこで、どっかで線を引かなきゃいけないんで。ってなったとき、「報道機関の自由を妨げてない」っていう区のロジック、どういうふうになっているかっていうと、記者会見当日、YouTube で配信していると。その内容っていうのは、みなさん、見ることができる。その内容について取材したいことがあれば、区としては、随時、受けつけている。だからこそ、「取材を妨げていない」っていうのが主張なんです。ただ、寺澤様からのお話だと、記者会見に参加しなければ、やっぱり、いけない理由がある。そこを、ぜひ言語化して、教えていただきたいんですよ。

於保 言語化? それ以上でも、以下でもないような(苦笑)。

保坂区長の友人のフリーランスは特別扱い

 このあと、於保氏が大道氏に、「フリーランスは記者会見に参加することができず、別に取材を申し込まないといけないというのは差別」「フリーランスも取材したい案件があるから記者会見に来ている」「記者会見は公共の場だから、開かれていなければならない」などと説明した。於保氏は海外の大学院でジャーナリズムを専攻していた。

 しかし、大道氏は「記者会見の目的は区の政策を区民へ届けること。報道機関は情報を広く提供するツール(道具)になる」と応じ、そもそもジャーナリズムとプロパガンダの区別がついていないようだった。

 私は於保氏と大道氏とのやりとりを黙って聞いていた。すると、13時53分、旧知のフリーランスの及川健二氏からスマホのメッセージが届いた。私は2人の会話に割り込んだ。

寺澤 今、及川健二君からちょうどメッセージが来て、「(保坂区長の記者会見に)入れましたか」って来てますけど、何で及川健二君だけ保坂区長の記者会見に何回も出て質問してんですか。フリーランスで。どういう事情でしょうか。

大道 ……。

寺澤 保坂さんの友だちだから?

大道 ということではなく、(寺澤が)窓口にいらっしゃっているので、誠実に答えさせていただきますと、会見場っていうのは、基本的に事前にご連絡いただいて、受けつけているんですが、及川さんは、ご連絡なく、急きょ、会見場にいらっしゃった方ではあります。そうなったときに、会見の直前であったため、職員としても、そこの窓口ってところに、人を十分に配置できていなかったので、スルーといいますか、そのまま誘導されてしまったっていうところがあります。本来であれば、お断りさせていただいているところではあるが、そのままご案内をしてしまったという事実はあります。

寺澤 だけど、及川さんはあらかじめ保坂区長に「会見行きますよ」って言ってたんでしょ?

大道 区長にそういう話があったかどうか、正直、存じてないんですけれども、行政として、組織として考えて、記者会見の運用をしたときに、記者会見の受付っていうのは、広報広聴課で受けつけておりまして、広報広聴課には及川さんからご連絡はいただいていなかったというのが事実です。

寺澤 事前に連絡してる我々が排除されて、保坂区長の友だちであるところの及川さんだけ、「はい、どうぞ」って、その場で(会見場に)入れるって、どういう差別ですか。

大道 及川さんが入ってしまったっていう事実を突かれると、それは案内の不手際ってところがあるので、区のチェックがもれてた部分になります。ただ、チェックがもれてたからといって、それを標準のルールにできるかっていうと、違うんです。

寺澤 だけど、それで会見出て、及川さん質問して、保坂さん答えてんでしょ。

大道 そのとおりですね(苦笑)。

寺澤 それはおかしいでしょ。ルールが違うんだったら、保坂さん、「これ、ダメですよ。ルール違反ですよ」って言うでしょ。区長なんだから。区長自らルール違反してんでしょ。

大道 区長は会見に参加される報道機関の方が、どういう受付をされたかまでは確認はされてないんです。

寺澤 それだったら、これから(会見場に)行きますから。

 私は椅子から立ち上がり、会見場へ向かって歩きはじめた。

大きなスクープを期待する読者には、大きなサポートを期待したい!