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映画「DUNE/デューン 砂の惑星PART2」を見てきた。世界観の想像力。

映画「DUNE/デューン 砂の惑星PART2」を見てきました。面白かった。「デューン 砂の惑星PART1」も映画館で見てます。
まず砂漠の世界という世界観からくるワクワクがありますよね。この世界で何が起こるのかという。一言でいえばそれに尽きるのですが。そして、スペクタルがあって、戦闘場面も面白い。種族や、命の水など、SFガジェット。陰謀や、国同士の戦い。登場人物の個性も良い。私の好きな要素が満載で、映像を見ているだけでワクワクする。素晴らしい作品だ。

前作の感想は下記から。


冒頭で褒めまくって、事実楽しんだわけだが、この作品は何を伝えようとしているのか、テーマは何だろうと考えると、わからない。作品の一つの物語として、ポールの成長譚ではあるのだけれど、ポールは作中でそれほど苦難にはあってないように見える。しかし、フレメンたちに認められる儀式や、命の水を飲まさられることなど、強制的に成長の機会が与えられる。フラメンに認められる儀式は、まあ本人も認められたかったのだろうが(認められないことへの絶望や、苦難があまり描かれてあるいるとは思えなかった。なので、少し「だから何なの?」って思ってしまった。ワームに乗る場面は感動するけれど)。命の水を飲むに至っては、それによって過去を知り、ポールは自分の中で決意して物語は進むのだが、「決意、決断」ができなかったポールの描き方があまりじっくりと描いていないので、物語を進めるために成長したように見えてしまう。時間的に難しかったのだろうが、ポールの描写が足りないように感じた。ポールがハルコネン男爵の孫という、突然の設定は必要だったのか? とくにそれで悩む場面もなかったし。原作がそうだったからだろけれど。これも、描写が少ないから描ききれなかったのだろう。悩んだり、もしくはそれをそれほど気にしていないこと、そういうところを私は見たいのだな、と思う。描写が少ないから、悩んでないのかもしれないが「悩まない」ということを伝える、描写(演技なのか?)があってもいいと思う。
壮大な物語のダイジェスト、印象的な場面を集めたような作品のように感じる。おそらく小説だと詳細に描かれているのだと思う(25年くらい前に原作は読んでいるが、ほとんど覚えていない。環境問題についてすごく書かれていた印象だけは覚えている)。原作を忠実に描いたがために、ダイジェストのような描き方になったのだと、想像する。それが悪いわけではないけれど、もっと深く描いて欲しいという気持ちは持った。

人物を見るより、大きな世界観、歴史の中の群像、叙事詩という形で描きたかったのだろう。近代の物語は内面に向かっていくが、この作品は神話などに近い形で描いているのだと思う。ポールの内面は少しは描かれているが、それよりも外からの印象で描かれていると思う。しかし、人間の内面を発露にし、その描き方によってテーマや伝え方が想像できるのだが、この作品からはそれが難しい。考えたことはなかったが、私は作品のテーマは人の内面から私は読み取っていたのだろう。きちんと見れば映像からも感じるものもなくはないが、人物をの内面を通すことで、伝わりやすくなるのだろう。
原作は環境問題(当時の)についてこれでもかと書いていたので、伝えたいことがわかったのだが、この作品からはその面のテーマはあまり感じない。砂漠の過酷さ、水の大切さはわかるが、強調されているわけではないので、テーマとして読み取りにくい。物語の表面だけ見れば、よくある話ではあり、物語に新しさは見えない。ただただ映像には圧倒される、戦闘の場面も素晴らしい(PART ONE はIMAXで見たのだけれど、PART TWO は3月に映画館に行けず、IMAXでは見られなかった。残念だ)。
監督は原作が好きで映画化したらしい、原作に忠実に、ただ映画には小説よりも時間の制約があるから、小説からどこを描くか選択しなければならない。監督は映像として残した部分が好きだったのだろう。見ていて楽しかったし、私も好きな展開だったが、それでもやっぱりただただ出来事をたんたんと描いているとしか見えない。小説の環境問題の記述は、当時読んでいたときは「しつこいな」と思ったような気がするが、大切だったのもしれない。
原作のしつこい環境問題の記述を覚えていたから、そう思ってしまうのかもしれない。そして、「細かい物語は全く覚えていないけれど、テーマの印象は記憶に残るのだな」と思う。
そして、環境問題に対する言及がなくて「デューン」なのだろうかとも、少し思う(環境問題への考え方が原作が出版された当時とは違うと思うけれど)。
最後、さらなる権力への戦いに邁進していくポールに背を向け、離れていくチャ二の行動にテーマ性があったのかもしれない。
チャニ視点で見た方がよりこの作品を楽しめたかもしれない。
ポールが危篤状態になって、それを蘇らせるためにチャニがジェシカの言葉(強制的に従わせる)に従う場面がある。チャニはあっさり従ってしまうがここに関しても、ポールがハルコネン男爵の孫と知った時と同様、もう少しタメがあった方がよかった。抵抗するなり、あっさり従うなら、あっさり従ってしまう描写(従っあとに後悔する描写を入れるとか?)があっても良いと感じた。

物語を描くには「説明でなく、描写をしろ」という考え方があります。私はこの区別の付け方には疑問を持っています。説明だけで展開の早い物語だって、面白いものはあると思います。しかし、特に小説のように地の文のようなものを入れられないときは、描写はテーマを見えやすくするものなんだなとこの作品を見て思いました。この作品にテーマがないと言っているのではなく私には見えにくかった、ということです。となると、物語の多層性を感じにくくなり、作品を楽しむ要素が一つ減ってしまいます。この作品の物語の多層性は、たくさんの登場人物が担っているので、ないとは言わないですが。その分一人ひとりの描写が少ないとも思います。一番魅力があったのはポールよりチャニかな。ボールに対する複雑な気持ち(種族や立場の違いから生じる気持ち。叶わない愛。そして自分で道を選ぶ強い女性であること)が、人物性を引き立ててますね。と言って、彼女の心の動きを作品のテーマと考えると、弱い。
前回見た「オッペンハイマー」は主要と思われるテーマが多すぎて(テーマと考えられる要素が多すぎて)、方向性が見えなかったので「『デューン』とは全く逆の作品なんだな」と思いますね。

敵役の人物は前作の方が魅力があったかな。ハルコネン男爵にしても、ラッバーンにしても前作では強者として魅力があったのに今作ではあっさりやらてしまう。もう少し見せ場があっても良かったと思う。フェイドは魅力的だったけれど、前作出てきてましたっけ? 多分名前くらいは出てたのかな? いきなり出てきた感がありました。フェイドはラストあっさり捕虜にならないで、少しは抵抗して欲しかった。もしくは、何らかの感情がわかる映像が欲しかった(なかったよね)。ほくそ笑む表情とか、拳を握りしめるカットとか。最後の戦いは素晴らしかったけれど。
フェイドがショーとして戦うとき、何で画面はモノクロだったんだ? 色々調べたら、あまり太陽が当たらない惑星だったようです。フェイドの初登場場面は砂の惑星でなく、ハルコンネン家に支配されている惑星だったのですね。

生き延びていたガーニイと出会い、ガーニイが核弾頭のありかを知っていたところは、少しご都合主義を感じました。

音楽良かった。

「デューン」というタイトルの由来が出でくる場面いいですね。

すごい好きな作品です。壮大な風景と、SFとしてのガジェットがつまった作品。とても面白くて、上映時間は長かったけれど、全然長さを感じなかった。文句ばかり書いていますが、面白いかどうかの感想でなく、物語の構造としてどう思ったかを書いています。先ほども書きましたが、描写があれば作品は面白くしやすく、テーマも伝えやすいですが、必ずしも描写があることが面白さと直結しているわけではありません。短い時間(上映時間は長いですが)で「歴史」を描くとき、描写が浅くなるのはある程度仕方ないです。テーマは作品を面白くする一要素です。それがないとしたら(この作品にないとは思いません。ただ、私は見つけにくかった)、他の要素で面白くすればいいのです。私は壮大な風景や、SFガジェット、集団戦の描写、個人の戦い、神秘的な雰囲気、描写が浅いとはいえ、多数の魅力的な人物。本当、すごい楽しめた作品でした。
原作は長大な作品だしね。続きが見られたらいいな。原作も久しぶりに読んでみようかな。


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