【麻雀戦術】安牌1枚進行は強いのか【中〜上級者向け】

 はいどーもゆとりです。今回はタイトル通りの内容になりますが、これが正解だ!みたいなものではないのであくまで戦術の一つの型とその思考、手組みが与える影響の解釈の一つとして読んでください。

今回のテーマはざっくり言ってしまうと"間合い"です。安牌残しが強いかどうかの判断は概ねこの一言に集約されます。

大前提として、抱える1枚の安牌は手牌で2番目に牌理上の価値が低い"ブービー牌"との比較になるので、比較対象が「①端牌などの余剰牌 ②縦受けなどのフォロー牌 ③ターツを構成している牌」の3つのケースにざっくり分けられます。今回は主に②③について触れていきます。①に触れ始めると量が多くなりすぎる上に話が色々と逸れるので端折ります。

◉安牌vsブービー牌の比較

ブクブクにした場合と安牌を残した場合でどちらが「場に対する手牌価値」が高くなるかの比較になり、このときになぜ安牌1枚進行が強いのかを知っておく必要があります。ブクブクにすべき局面、牌姿はいくらでもあるので、常に安牌抱えとけば良いかというと全然そんなことはありません。が、好みの域を出なそうなものまでブクブクがセオリーっぽくなっているのには違和感を覚えます。

麻雀において場を正確に数値化するのはおそらく無理なので厳密な比較は厳しいのですが、受けるテストが100点満点なのか98点満点なのかというのは90点以上取れるようになってから注意すれば良いでしょう。これは安牌抱えるルートが98点満点というわけではなく、どちらが100点満点のルートか見極めるのは難しいから好きな方を選べば良いでしょう、ということです。好みで選びつつ徐々に最善を探っていくイメージでしょうか。

一応補足しておくと、基本的に序盤寄りの話になるので安牌というよりは安牌候補の字牌といった方が正確ですがまぁゆるく「安牌≒安牌候補の字牌」と考えて下さい。

◉安牌の価値

 さて、ブービー牌vs安牌の比較において価値をイメージしやすいのはブービー牌の方だと考える人が多いと思います。まぁ実際その通りだと思いますが、ではイメージしやすいブービー牌の価値を基準にして比較するのかというとそれはあまりお勧めできません。理由は簡単で、安牌の価値は先制を受けるまで基本的に巡目が進むごとに上昇していくだけなのに対し、ブービー牌の価値は手牌が進むごとに乱高下する可能性があるからです。

安牌の価値をイメージするには、まず局面を平均的に捉える必要があります。例えば全員門前で中盤になると、相手の切り番毎に大体4〜6%程度の割合でリーチが入ります。これがどんなもんかというと、両面×2の一向聴が雑に見積もって毎巡13%程度でテンパイするので、40%くらいの確率で各々それくらいの一向聴が入ってるというイメージですかね。この数字に意味があるのかというと厳密な意味はないのですが「なんとなくこれくらい」の基準があると読みにしろ何にしろ見当違いな思考になりにくいと思います。

平均的な中盤のイメージというのはいざ中盤になったらあまり意味がない...とまではいかずとも、例えばターツ落としから安牌手出ししてる人がいたらめっちゃ一向聴なので毎巡10%以上リーチ入りそうですし、そこに平均的なイメージは必要ないわけです。ただ、中盤に入る前に安牌を抱えるかを考えるときにはそれなりの指標となります。

安牌の価値は当然ですが先制できるか否かで大きく変わります。先制するには1vs3の競走に勝たなければならないので、中盤に入った場合は毎巡15%以上テンパイ入れてくる相手に勝たないといけません。これは完全一向聴がテンパイするくらいの確率なので、それくらいの一向聴が中盤までに見込めるならブクブク進行で問題ないと考えることができます。鳴ける手の場合は鳴いて先制取れる分、多少形が悪くてもスピードで勝ちやすいですし、ブービー牌がポン材など鳴けるフォロー牌になってたりするので二重の意味でブクブクが強くなりやすいですね。

◉ブービー牌の価値

中盤までに完全一向聴が見込める手でやっと五分五分ならほぼ安牌抱えて良いのではと思われそうですが、これは半分正解で半分間違いです。ここで新たに考慮しなくてはならないのが、先述した価値が乱高下するブービー牌の存在です。

まず浮かぶのは愚形含みの手牌における価値の高いブービー牌だと思います。以前の記事で序盤構想について書いたとき、愚形ばかりの二向聴でブクブクにするのは正気の沙汰ではないみたいなことを書きましたが、愚形フォローを外してまで安牌を抱えるというのは実際問題かなり和了率が下がるのである程度まではブクブク進行で6〜8巡目あたりの手仕舞いの質を高めるしかなかったりします。対戦相手のレベルが高い場なら雑にチートイを狙うという手段も結構有力で、これは普通に手組んだときの和了率がさらに低くなり、先制を受けたときに横移動しにくいなどの理由がありますが書き始めると長くなりそうなので一応の紹介程度に。打点が見込める場合はブクブク寄りになりますしそこからどう捌くかは腕の見せ所ですが、特に大きなリターンが無いなら無駄に腕が求められる状況を作らない方が成績は良くなりやすいです。どうせ大した腕はn...

愚形フォローに関しては価値があまりにも高いので安牌抱えにならないことも多そうですが、逆に良形変化の種と安牌の比較では和了率を下げても愚形と心中するべき局面が多くなります。これも以前の記事で触れてますが、孤立3〜7の場合、良形変化が2種8牌と少ないため先制されてお荷物な危険牌となるケースも多いからです。一瞬の変化を残すのがセオリーとされることもありますが愚形を多く含む手牌ほど手が進みづらいですし、安牌もいつでも引けるわけではないので手牌の質が特に変化しないまま先制を受ける確率が高くなります。さらに、変化に時間がかかりやすいということは良形をつくれたとしても愚形ターツ落としが間に合わず危険牌が残ってしまうケースも増えます。

画像3

 ※打西でブクブクにすると長期間安牌無しの進行になる危険性がある。安牌を抱える場合、素直な打3p以外にタンヤオ三色を目指す打9pも有力。

中ぶくれ形や四連形になると4種14枚の良形変化となり、これは安牌よりも価値の高いブービー牌ですね。ただし、このケースは安牌を抱えてペンチャンを先切りするというようにブービー牌が入れ替わることもあるので愚形含みの手牌では注意深く進行する必要があります。

画像2

 ※場合によっては打1p(2p)が有力になることも。

◉安牌残しが有力なケース

マイナス要素同士の比較が多いのは麻雀が闇のゲームと言われる所以ですが、この類の比較の精度を高めることで雀力が底上げされるというか地力がつくというか... まぁそんな感じです。

色々書いてきましたが、ブービー牌より安牌の価値が高くなるのは「和了率があまり下がらないケース」と「なんか無理っぽいケース」です。

なんか無理っぽいケースはまぁ大体無理なのでこれをなんとなくでブクブクにしてると麻雀弱い人の言う「仕方ない放銃」が増えます。これは安牌を抱えるどうこう以前のオリ意識の問題なので「仕方ない放銃」が多い人は最善かは兎も角、安牌を抱え気味にしてみるのも手だと思います。

和了率があまり下がらないケースに関しては、元も子もないことを言ってしまうと手組みが上手い人ほど増えます。

画像2

例えばこの牌姿で速度的に安牌を抱えたいとなったとき、場況差無しなら後々4を引いたときの形の差で打1s(2s)となりますが、牌理がガバガバだと打1p(2p)として和了率を無駄に落としたりするわけです。これくらいならまだ許容できそうですが、「とりあえずブクブク」によって回避できていた牌理ミスが色々と表面化することになるので安牌どうこう言う前に何切るや山読みをある程度頑張る必要はありますね。

愚形含みの例を挙げましたが、麻雀には特に扱いに困る牌がまだありますよね。そうですねドラですね。

画像4

つまらない例ですがドラが浮き気味の牌姿は先制を受けた瞬間、手牌価値がリーマンショック並みに暴落します。ドラの放銃率は通常時より2〜3割程上昇し、放銃時平均打点も4〜5割くらい上がります。上の例だと先制を受ける確率の方が高く、ドラを使えるケースも限られているので先切りできるなら喜んでするべきですね。

画像5

ドラが縦フォローになっている牌姿は縦が埋まったときの打点やヘッドの横伸び変化でドラ固定できるパターンが強いのでブクブク寄りです。ピンズが335pみたいなケースで打5pとドラ固定して安牌を抱えるのは有力になり得ますね。

ドラ関連の統計値は『「統計学」のマージャン戦術』という本に載ってるので細かい部分が気になる人は読んでみてください。因みに、ドラより危ないドラ表示、という格言がありますがデータ的には普通にドラの方が危ないみたいですね。

◉"間合い"とは

 いつになったら"間合い"の話をするのかと思われてそうですが、ここまでで1/3くらいは説明を終えてます。先ほど挙げた牌姿で後ろ2つをしれっと7巡目設定にしてますが、毎回このタイミングで先切り選択ができるなら序盤は常にブクブクにして良いわけです。当たり前ですが、安牌を抱える理想のタイミングは先制を受ける直前です。ただそんな都合良くはいかないので、ブクブクのまま先制されるリスクと裏目を引くリスクを比較します。

裏目を引くリスクについてしっかり考えられている人は意外と少ないように思います。

画像7

上の牌姿は手牌価値も浮いてる3s周りの変化の質も高いですが、絶対にブクブクにするべきかというとそうでもありません。パッと見で4s引きの裏目が凄まじく痛そうに見えますし実際引いたら凄まじく痛いのですが、4sを引いてくる確率は毎巡3%程度なのに対し聴牌確率はチーテンも含めると毎巡17%程度、3sが出ていく変化は24568m34678pの10種32枚で毎巡25%くらいあります。

一旦ブクブクにして次の字牌は抱えるルートを考えると、50%程度で手が進み、切られかた次第なので大雑把な見積もりですが15〜20%程度で字牌を引きます。この前提だと6〜7巡目に何も変化せず8巡目に突入する確率は10%程度で、これが一次リスクになります。

さらに二次リスクとして、ツモ234s時に打4m(2m)とした後、残した牌が振り替わらないケースもあり、そのまま8巡目に入る確率が全体の2〜3%程度あります。

ちなみに、危険牌が残っていると先制を受けた場合に和了率が10〜15%くらい目減りすると言われます。これは残った牌の放銃率の分ですね。ただ実際には一向聴から無筋2プッシュ確定となるとオリ寄りになってしまうのでもう少し下がりそうです。基本的に「ワンプッシュで追いつく状態」が崩れると一気に和了が見込めなくなります。

全体から見ると低い確率同士の比較な上に、メリットデメリットの重み付けをするとどちらが明確に良いと言い切れる材料は無いのですが、被リーチの確率がグッと上がってくる8巡目を基準に考えると、良形変化の種との比較ではすぐに進みそうな手でも5巡目あたりから安牌残しが選択肢に入る、くらいのことは言えると思います。

長々と書いてフワッとした結論しか出せないのは歯痒いですが今回は総じてそういう話です。

ここまでは謂わば"事前の間合い"の話でしたが、ここからは"後手の間合い"の話になります。

 いきなりですが、自分は安牌を抱える、他家は抱えない、という前提で被先制後の数巡について考えてみてください。安牌ツモ切りなどが挟まれるため逆転することはありますが、基本的には自分が押し引きを迫られるタイミングより先に脇の動向を見ることが出来ますよね。これによって「そこが押すならオリるか」とか「2人ともオリっぽいから少し押すべきか」みたいな判断をする余地が生まれます。さらにオリ競走になった際には、自分より先に他家が手詰まって安牌を増やしてくれるケースも増えます。回し打ちするにしても自分が勝負するより先に安牌が増えることで安全なルートを選択しやすいですし、場合によっては他家の手詰まり対子落としなどの情報を利用するといった小技も使えたりします。現代麻雀のトレンドだと他家が「安牌少ないからとりあえず押し」といって増やした情報をさらに後手から利用できるのも強みです。

つまり、ブクブク&押し寄りが多い、オリ手順がある程度セオリー化されている現代麻雀だからこそメタ的にかなり強くなっているのが安牌1枚進行というわけです。

一応捕捉しておきますが、メタ的な強みが減っても十分に成立する進行だとは思ってます。ただ僕自身がピン東で勝ち切れたのはこういったトレンドメタが上手く嵌ったのも大きいかなと考えているので、大きくトレンドが変わったら微妙になるかもしれません。この辺は正直わからないです。まぁ少なくとも、大きなミスを抑えやすいというメリットはあるので勝つための戦術として有力であることは間違いないのかなと思います。

大抵の人の場合、麻雀で大きなミスを犯しやすいのは先制を受けての押し引き選択のタイミングです。一発が絡むとミスしたときの損失が更に大きくなりやすい上に選択自体も難しくなりやすいので、これをほぼ無条件で回避できるのは地味ながらも長期で見ればそれなりのメリットになります。

後手を引いて危険牌というかラフに押せない牌を引く確率は、各色2〜8の21種のうち5種が現物または筋や先切りの外の牌だという局面を想定し、残りの16種のうち5種は自手の聴牌受けと仮定すると、大体30%程度になります。

画像7

被リーチの段階までブクブクにしてると30%の確率でいきなり苦しい局面に陥ります。

画像8

安牌を抱えていると有効牌として吸収できる牌もありますし、使いようのない危険牌を引いたとしてもワンプッシュで追いつく状態をほぼノーリスクで維持できます。これは次に30%の危険牌を引くまで維持できますし、その確率も通せる牌が増えることで下がっていきます。

両面×2の一向聴は毎巡13%で聴牌し、これは完全向聴になることで3%程度上昇しますが、後手を引いたときに30%抽選1回分の猶予が生まれるので中盤に差し掛かると差が埋まり先切りが成立するというわけです。このケースは『現代麻雀最新セオリー』という本にシミュレート結果が載っているので気になる方はチェックしてみてください。

画像9

愚形良形の一向聴で良形側に入っているフォローの価値は低く、増やす聴牌が愚形だけという牌理面以外にも、後手を引いたときに上のように愚形側にフォローが入るケースが吸収できる枚数面でも質の面でも優れているというもう一つの大きな理由があります。こういった組み合わせの一向聴では価値の低いフォロー牌のためにワンプッシュで追いつく状態を崩してしまうと、最終愚形率の関係で押し返せなくなってしまうので致命的です。

危険牌ツモを30%と見積もりましたが、もっと筋が通っていて20%程度としたらブクブクが強いのではないかという疑問もでそうですが、中張牌がそれだけ切られている相手は一向聴確率が通常よりも高くなりますし、被リーチ時のブクブクにしている牌の放銃率が高くなってしまうのでそのケースでも結論は変わらないかと思います。これに関しては数字は一旦置いといて具体的な河を想像してもらえればなんとなく先切りが強くなりそうなことが分かると思います。分かるでしょう。

後手の間合いをつくるには無駄に苦しい局面を増やさないということが何より大切になります。ブクブクにすべき局面、安牌を抱えるべき局面を見極める精度を上げる必要があり、今後はこの無駄を如何に減らすかというのが序中盤の鍵になると思っています。

◉あとがき

 上手くまとめられず書きたいことの半分も書けてないような気もしますが、なんとなくでも"間合い"の意味や強さが伝わっていれば幸いです。

今回は簡易的な概算を多用していて読みづらかったかもしれません。数理的な厳密さはあまりないですが途中にも書いたように「なんとなくこれくらい」というのを色々とイメージしておくのは結構大切だと考えているので稚拙ながら長々と入れさせてもらいました。

序中盤のトレンドを変えるというほどではないかもしれませんが、読んでいただいた方に考えるキッカケを提供できていればこの記事を書いた意味があるのかなと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?