「生き残ること」と「幸福になること」の両立が今の時代のテーマ

近年心身のバランスを崩して休職する人が多くみられます。

日本人の死因の年次推移統計をみると、がん等主要な疾患の死亡率は年々減少を続けている中、唯一自殺だけは高い水準を維持しています。

この点は日本の医療の課題としても挙げられています。

近年は働き方改革の影響もあり、過酷な労働条件は減少傾向にあります。
体力的な負担は減っているにもかかわらず、メンタル不調が減らないのはなぜでしょうか。

働く上で重要なのは

「生き残る」ことと「幸福になる」ことの両立だ


と、リクルートマネジメントソリューションズの古野さんはおっしゃっていますが、私はこの「生き残る」ということが、年々難しくなっていることがメンタル不調の増加要因ではないかと思います。

ケインズはおよそ100年ほど前の1930年に「孫の世代の経済的可能性」
というエッセイを発表し、


100年後には人々は1日3時間、週15時間働けば、十分経済的に満たされる

と予測していたそうです。

まさに今、予測した100年後に近づいているわけですが、
私たちの社会はケインズの描いていた未来像とはずいぶん異なります。
確かに年々便利な世の中になり、経済的には裕福になったかもしれませんが、その豊かさを十分と考え、

1日3時間の労働で充分だ
その分給料は下がってもよい


と考える人はほとんどいないように思います。

むしろ、もっと豊かになりたい、油断すると貧困に陥ってしまうと不安に感じる人は増えています。

人生100年時代が叫ばれ、過去にないほど職業選択の自由も広がりましたが、同時に「生き残る」ために何度かキャリアの見直しが必要になりました。職業人生を通じて努力し頑張る必要性が上がりました。

会社に寄り掛かることや、社会が正解を示してくれるわけでもない中で、
うまく適応できる人もいれば、そうでない人も出ます。
また、一度適応できたとしても将来何があるかわかりません。

キャリアを修正し、適応していくためには新しいことを学び、
熟達していくためには失敗や努力を重ねなければなりません。

落ちこぼれるプレッシャーも長期間にわたり続くようになったように思います。

翻って成長期の日本は忙しかったとはいえ、
社会全体に安心があり、将来に対するプレッシャーは少なかったかもしれません。


自分のキャリアを何度か変え、そのたびに新たな技能を身につける努力も必要はなかったかもしれません。

このような時代にはプレッシャーをむしろ働き甲斐を感じるための
一つのプロセスと意味付けする力が求められるように思います。
そしてそれは意思の力で本人が開発すべき一つのスキルではないでしょうか。

上司や会社には新たに個人のキャリア開発支援が求められてくるように思います。個人のキャリアを伸ばし、良質な経験を提供できる上司や会社に、
意欲のある優秀な社員が集まるという関係性
が将来起きうるかもしれません。

よい上司であることは個人の能力を伸ばせる上司である。

そのことが優秀な人材の採用や、個人の能力発揮による事業優位性につながるということです。

マネジャーには上記のスキルが新たに必要になってきます。
みなさまはどう思われますか?

2019/4/29 VOL105
sakaguchi yuto


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