緘黙の騒々
川上から流れる僕の憂鬱を
君は捕まえられないでいるね。
そう。僕は今日、透明な憂鬱に捕まって抜け出せないでいる。
椅子に座るとペットボトルのラベルの歪みが気になった。
そして、おもむろにそれを投げ出したくなった。
反抗期の高校生が床に本を叩きつけるみたいにじゃなく、メジャーリーガーが目の前の大量に積まれたジェンガに向かって豪速球を投げるかのように、
僕は僕の右腕で、そのペットボトルで、目の前のものを全て壊したかった。
でも、それは頭の中のことであって、
現実の僕は大人だからそんなことはしない。
ただ、カリカリと爪でラベルを引っ掻くだけ。
君はそんな僕を見て、僕のいつもと違う何かに気づく。
でも、声はかけない。
それが正解だと信じているかのように。
僕も君のその気持ちに気づく。
だから、僕は、今日も、黙っている。
夕日の傾いたオレンジの世界に遮断機が交差する。
列車の振動だけが、今僕らを動かしている。
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