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終末のシルエット

この町で
ジャパニーズヤクザとチャイニーズマフィアの抗争が始まり
もう何日経ったのだろうか
この橋が塗り替えられるたび
抗争を肌で感じる
──暖色ならばどちらかが優勢だし寒色の時はその逆だった
川沿いのハルジオンが全てヒメジョオンに植えかえられ
次の日には全てがハルジオンになった
鳥たちは暑い陽射しのなかで唄うのをやめ
朝の爽やかな気配を察すると我先に囀りはじめた

随分と昔の新聞に自分の名前を見つけた
スポーツ欄の隅っこに名前は記載されており
県内中学生の走り幅跳びの記録を2cm更新
と小さな見出しが添えられていた

今年はツツジもサツキも咲くのが早かったから
もうすぐ枯れてしまうかもしれない
まだ声変わりを迎えていない子供たちの声は
ヤクザもマフィアも関係なく
ただ春の訪れを報せた

いつもの散歩道
この川の注ぐ先を知らない
終わりがないことともう終わってしまったということは
もしかしたら同じなのかもしれない
ところで先日
どこか遠い土地でコロシがあったらしい

意志のある動物のような光が
桜木の葉の隙間から差して
僕はその時焼け死んでしまったのかもしれない
終わりのない抗争と果てしない散歩道
終わりのない抗争と果てしない散歩道
心の中で口遊んで
降り注ぐ陽光のもと
すべてが春の行いだった




即興ゴルコンダ(仮)と言うサイトに投稿したもの。
お題はきくにしゆうざさん。

もしよかったらもう一つ読んで行ってください。