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一般人アートバーゼルへ行く■2日目後半・アート社交とドイツの半地下部屋

アートバーゼルの会場は広くて、途中でお腹が空いたので、カフェコーナーでサンドイッチを食べた。
本日2回目のハムとチーズのサンドイッチ。
今度はパンがちょっとブリオッシュっぽい感じで、これもまたおいしい。
電車で食べた時と同じで、とにかくおいしいおいしいと言いまくるので、案内人が「そんなにか?」という感じなってくる。

茶色い方を食べた

他の会場を見て回って、中庭で休憩となった。
「アイスクリーム食べます?」と言われたけど、冷たいものを食べて体調が崩れるといけないので、味見だけにした。
とてもおいしいアイスクリームだった。コク系という感じ。甘みは強いけど味を潰さない。

中庭も見る人が見れば全員関係者らしい

中庭にいる時に、入り口でチケットを渡してくれた人から連絡があって「今どこにいる?」みたいな感じになり、「中庭のアイスクリーム屋の前。連れのピンク頭を目印にするといいよ」とフランス語で案内人が言う。
他に何を言われているかわかったものではないけど、まあいいや。ピンク頭です。

どうも、ピンク頭です

そこでもう一度再会し、お連れの女性(というか会場であった知り合いだとか)と共にトラムに乗って近くのサテライト会場に行く。

写真作品中心でいろいろやっていて、そこで別のビジネス仲間と会うとか何とかで、ピンク頭は黙ってついていく。日本語が存在しない世界だからね!

そこでは小さいチップに個別識別機能を付けた技術を開発している人とそれを売っている人がいて、なんかそういう話に。
ブロックチェーン技術と組み合わせることもできて、アート作品に一粒混ぜて作ればそれが本物だと識別できるという。ブランドバッグとかにも当然使えるし、貴金属でもあり(最初は無理かもと言ってたけど技術者が合流したら、全然ありできるってなった)。

ちょうどその会場のカフェコーナーにスイス銘菓みたいなのが置いてあって、案内人が「飛行機で食べるんだけどこれおいしいんですよ」と言ってたお菓子が置いてあり、私はひとりで「これじゃん!」となっていた。
買って食べるところを写真に撮られる。

スイス銘菓を食べる

なんかこういう、小麦系の焦がしまんじゅうで中に白あんが入っているタイプの和菓子あるよね…と思いながら食べてました。人間は自分が知っているものでしか世界を把握することができない。スイス饅頭。

どこの店にも売ってるし飛行機の中にも置いてある

写真ブースもなかなか面白くて、絵画と写真って、それぞれ視覚芸術だけど、それぞれの技術をどういう方向で活かすべきなのかというところで、すごく試される部分ってあると思う。
モデルが美形なら写真としてよい作品なのか、でもアートというからには写真である必然性がないものは写真である必要はないんじゃないかとか。
いやいや、美しかったり表出する何かパッションがあれば手法は問題ではない、ということかもしれない。

展示されている作家さんがどういうアプローチで作品を作っているのか等も聞いたりして。
私が気に入ってみてた作品は「10万円だってー安いね」。
安い……ね。うん。10億円より安い。
価格としては本当に高いという感じはしなかった(妥当かどうかもわからなくなっているけど)けれども、あっちが10億、こっちは23億、あれは8000万円くらいかなみたいな話ばかり聞いていると、脳みそがどこに価値観の軸を置いたらいいのかわからなくなってくる。

こうやって、自分の価値観を見失うのかもしれない。
宝くじが当たった人がどう金を使ったらいいかわからなくなって、結局破産してしまうような。
金を持たずにその体験ができるというのは、なかなか面白い事ではないかとも思う。まじ学びだね!

作品もいろいろ見てると、キレイだけど好きじゃない、好きだけどあんまり見た目がきれいじゃない、好きできれいだけど家には置きたくない、家に置きたいけど買うほどではない、など、「曖昧な境界線」がたくさんあることに気づいた。

「だからそれを越えてくると、値段が一気に上がるわけです」
欲しくて、美しかったり心を惹かれたりして、よくて、そばに置きたいと思うものは、安くないし、安くあってはいけないのだろう。

一緒にアートバーゼルの会場から移動したマダムは「あの作品気に入ったから買おうかな」と言って、枯れていくケシの花の4枚組写真を見ていた。
私もいいなと思った作品です。
「ワビサビっていうけどそういう感じ?」みたいな話になって「ワビサビの説明、日本語でもめっちゃ難しいんだけど」みたいな感じの会話が繰り広げられていました。

で、和やかなご歓談後、私は予約していた宿泊先に行くことになった。

これが。
とっても。
厄介で。

アートバーゼルの会場に近い駅から2駅9分という近さで見つけたのだけど、そこはもうスイスじゃなくてドイツなのです。
さらに、1時間に1本しか電車がない。
ヘッダー画像は時刻表です。

「一緒にそこまでいきますから!大丈夫ですよ」という案内人と共に電車に何とか乗ったまではいいのだけど、地図の場所に行ってもそれらしいものがない。


「えっここですよね?」
「はい、22番地です」
「入り口がないんだけど。そこにいる人に聞いてみるか」

え、ここ?

裏庭で、パンツ一丁で庭に水をまいていたおじさんがいたので、案内人が英語で尋ねる。
ところがおじさんはドイツ語オンリー!!
フランス語英語日本語対応在仏歴結構あるという案内人まで「ドイツ語わかんない!!」という事態に……。
そりゃ戦争も起きるよね!!日本人を介してのごく小規模普仏戦争。
でもおじさんは客が来ることがわかっていたので、鍵はここで、こことここを使っていいみたいなことを説明してくれて、大体内容を吸い上げる案内人。
ありがとうありがとうあなた方のご尽力により普仏戦争は回避された。
和平の使者よ。オリーブの枝と月桂冠を捧げよう、ヨーロッパだし。

そして開いたドアの先には、半地下の部屋が……。

「パラサイトみたいですね。映画の」

スイスに来てドイツの半地下に泊まるパラサイト。

パラサイト、観てないんですけどわかります

「なんか、似合いますね」
似合うとは。

「さっきのおじさんすごく人のいい親切な人でしたよ」
全裸パンイチだけど、とてもいい人。ドントウォーリー、履いてますよ。

私は、電車に乗る方法、何時のに乗るのか、鍵のかけ方、その他もろもろ自分の動きの範囲を抑えるだけでいっぱいいっぱいで、半地下だからどうとかは何も思わなかったです。
どちらかというと楽しかったです。
素敵なホテルのような嬉しさはないけど楽しい半地下ステイ。
素敵なホテルであっても、わからない事ばかりで緊張するし不安だから、こっちの方が面白いと思う。事故や事件さえなければ。

あとマジで周り何にもないので、くる前に駅のスーパー(COOPというスイスで有名なスーパー。この後何度も何度も行く。COOP大好き!)でサラダとジュースやパンなど食料品を買っておいてほんとよかったです。
本当に周りにお店がない。
田舎の住宅街という感じ。

ファラフェルサラダとスモモとりんごサイダーとナッツペーストのペストリー
ドイツ領なのでスイスフランは使えない。ユーロのみ

駅も無人駅に近いスタイル。ホームに券売機と小さい掲示板(本当に紙を貼るタイプの)、小さい売店とトイレのような建物があって、朝はおじいちゃんがヘビメタみたいな曲を流しながら掃除してた。

半地下部屋は、シャワーとトイレは別の部屋にあって、一度廊下に出て部屋の鍵を閉め、その鍵でシャワールームの鍵をあげ、内側からまた鍵を差してロックし、広い部屋にポツンとあるトイレと端っこに申し訳程度につけてあるシャワーと……なんて贅沢な空間なんだ、広すぎだろう。
トイレットペーパーが気持ち遠い。
贅沢と心地よさは両立しない。

緊張と疲れと焦りで、ドアのカギはうまくあかないしうまく閉まらないし、寝る時もなんかちょっと怖いのでドア前にスーツケースを置いてドアストッパーをかけてみたけど、あけたら普通にあいたので、もうなんかあったらなんかあった時だな!この野郎!という感じで寝た。
初日は緊張でシャワーもあまり使えず(安全の保障のない場所で全裸になるのはなかなかくるものがある)、手足を洗ってボディーシートでなんとかする。

ヨーロッパは乾燥した空気だというけど、本当にそうで、というかアジアのあの湿気ヤバいね!あれはヤバいと思う。
半地下の家は湿気がこもるらしく、窓は開けておいてね、シャワーしたら窓閉めるとカビが生えるから!と画像付きで案内が貼ってあった。壁にカビが生えるとか、あんまりみない事なのかな。
アジアの湿気で生きている人間としては、そりゃカビるよねってわかる。
(さすがに二日目はシャワー使ったら、アジアンな湿気になった。ドイツのモンスーン)

この半地下部屋は、アートバーゼルの会場近くは満室orソーエクスペンシブ(バカ高い。10万円とか)なので場所をはずして探すことで見つけたのだけど、同行者なしではとても行けなかったです。
今後ひとりで行くような事があれば、もうちょっと違うところにする……。
なのでとてもよい経験だった…のかもしれない……。

翌朝は自力で駅まで行き、自力で切符を買って電車に乗るというミッションでしたが、ドイツののどかな田舎の住宅街を歩くめっちゃあやしいピンク頭の外人になってしまった。
街の平和を乱したのは、私の方だったのでしょう。

のどか!空地の奥に柳の木。ヨーロッパの柳
ラベンダーも雑草枠

道端にラベンダーが咲いて、家と家の間隔が広くて、庭もみんな芝生やバラなどを仕立てていて、子供がいる家もあるし、若者が駅に向かってイヤホンをしたまま歩いていたりして、すごく普通の住宅街だった。
私は旅行者だから、薔薇がきれいだなと思って通り過ぎるだけだけど、それぞれの家では不倫したとか、子供の教育をめぐって喧嘩とか、いろいろやってるんだろうなー、ママ友の内輪もめとかあるのかなーとか思いながら、道を歩いた。

あやしい外人だけど、人々の生活に思いを馳せる。

あきらかにあやしい

二日目は、ドイツの半地下部屋で眠り、翌朝ユーロで切符を買ってバーゼルに向かって内容の濃すぎるバーゼル二日目を迎えることになる。


ユーロは10ユーロ札中心にしておけばよかったな。切符の発券機が5ユーロか10ユーロ札しか使えないので。(カードを使えばいいんだけど、たまにカードを読んでくれない機械もあるし、その逆もある)


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つよく生きていきたい。