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信じれば掬われる。

嗚呼、意識が朦朧として、起き上がることができない。

ドロドロした朱殷色の生温い液体が、地面のタイルを欲望の渦に誘い込む。青いレースのワンピースを着た彼女が真っ黒に、染め上がっていく。

『ワタシは喧噪の中に唯佇んでゐる。
ワタシには分らぬ言語を発し、ワタシには分らぬ感情を表現してゐるのが聞こゆる。』

ーーーそのとき誰かが、彼女の手首に付いているリボンを解いて奪っていった。

ほつれた紐を引いてしまったみたいだ。そんな小さな綻びで世界はいとも簡単に、ぽろぽろと霞んで解けていくというのに。

世界の誰にも邪魔されないコナトュスは、ほんとうに存在しているのでしょうか。

生きることは、スプリングベットの上で余生を過ごすようなものだ。必死に踏ん張ったって、必死に形を変えようと思ったって、すぐに元に戻ってしまう。なのに力を加えると簡単に形を変える。そういう代物。

わたしが憧れる人はみんな死にかけている。
淫蕩やアバンチュールに勤しんで、自分のシアワセばかりを唱えている。誰も邪魔するなと言わんばかりの思想と執着心を持ち合わせて、

神仏の御前で『永遠に、名付けようのない踊りを続けてください』とでも告げられたみたいに、自らの生命を擦り減らし続けて生きている、

愛と憎しみの汽水域を彷徨い続けている。

楽なんじゃない、いっそ溺れ死んだ方が。

「きみはいつか自死しそうだね、」
「どういうこと?」
「自分から死を選びそうだってこと、」
『うん、わたしは死ぬのがいいわ。』

なんでだと思うだってみんな10年後幸せになるための計画を立てるのに必死じゃないだからわたしは10年後死ぬための計画を立てるの将来何になりたいだなんて愚問名前だなんてゴミを付けないでわたしは何者にもなりたくないの分かったならとっとと私の前から姿を消しなさいよ、ああ。

人間に飽きて生きる気力もなくなってすべてが虚無に観ずる、これがどれくらい恐ろしいことかわかるかなみんなやりたくもないことをして生きてるなんで他者を助ける気なんて微塵もないのに掬いの手を伸ばせるのなんでギリギリで生きてないの死にかけてないのねえキミは所詮他人の言葉を借りて法螺吹く屑、

時代に操られた傀儡なんだよ、わかるか

blah!!

『人はそれぞれのラプトュスを持っている』

わたしはみんなが羨ましいだって、狭い世界で苦しめているのだもの。わたしも仕事とか性格とか恋愛とか結婚とか将来のこととか老後のこととか、そういう狭い世界でずっと苦しんでいたい。その小さな世界の中で何も気づかずに、あなたたちは神の子なんです選ばれし子なんですかわいい天使なんです、そんな教えだけを受けて生きていけたらどれだけ幸せだったかな。だけどそれももう叶わなくて、わたしを狭い世界に閉じ込めてくれるやさしい悪魔みたいなひとはいなくて、ずっとわけも分からぬ無力感と脱力感に襲われながら生きていくことを続けていかなきゃいけなくて、

楽しくもない苦しくもないムカつかない悲しくもない、目の前に居るあなたを愛することも、
自分の意思で歩くことすらも出来ないわたし。

『ねえどうしたらいいの、』
そうやって地面に膝をついて、あなたの服の裾を両手で掴んでこの声が枯れ果てるまで泪を流せたら、

もう自分のために生きたくないだけど、怒りや愛や死を捧げることができる自分も他人もいまのわたしには存在しない、こわい、たすけてよ、信じれば掬われるんじゃなかったの、ねえ何か言ってよ、

わたしは、あなたの為なら死んでやってもいいと思ったの。他人のために死ぬのは傲慢だと思う?だって生きてる間幸せも悩みも何もかもすべて自分が作り出してるような言い草をしているのがニンゲン、死ぬことを自分で決めれると思い込みたいのもニンゲン、そうでしょう、死は自分の為にあると思い込みたいの。死なないでって呟けば、死を制御できたつもりでいるのよ。キタナイ、キタナイキタナイ。

みんな洞窟の中で太陽に照らされた自分の影だけ見てる。手を鎖で繋がれてただひたすら前進し続けている。真っ暗闇の中、後ろを振り返ることもできずに。たとえ振り返ることが出来たとしても、何も見えない。だが幸運なことにあなたは洞窟を這い出して太陽の光を見ることができる。それは人類の希望だ。あなたはそのことを、洞窟の中にいる人達に伝える。しかし信じてくれはしない、むしろあなたを殺しにくるかもしれない。だって、洞窟の中にいる人達には影しか見えないのだ。影だけが真実なのだ。

そうしてあなたは仕方がなく洞窟の中に戻る。暗闇に目が慣れていく。そうして次第にあなたは悟る。「何もかも私の心を揺れ動かすことはない、すべては影なのだ」と。太陽を見たものにしか、できない表現がある。太陽を見た者だけにしか、わたしを掬えないと、そう思う。影はみな同じだ、姿形を持ってはいるが所詮何も喋れない"ただの"真黒い物体にすぎないのだ。

人生というのは真っ暗な洞窟の中で太陽を見た人を探す旅みたいなものかもしれない。でもそれはとっても危険だ。安易に「太陽を見た」と言えば殺される可能性だってあるのだから。ボロボロに傷つく可能性だってあるのだから。慎重にならなければ。

ああでもわかった、初めて会ったのに初めてじゃないような人っているでしょう。その人はきっと太陽を見たことがある人、だから会った瞬間孤独を共有しあう仲間みたいになるんだわ。何も言葉を交わさなくても「あなたも太陽を見たの?」「ええ見ました」そうやってtelepathみたいにね、だから手は繋ぐしハグもする、キスもするしセックスもする。だけど洞窟の中にいる人からはどう見えているのでしょうね、彼氏、恋人、セフレ、妻、パートナー、男ともだち?でもそんなもの所詮影に過ぎない、わたしだけがわかっていればいいの。わたしだけが、あなたが太陽を見たことを知っているのだと。

ある夢をみた。 

家のなかで、お父さんが目の前に立っている。そうすると急にわたしの首を掴んで思いっきり絞める。息が出来ず苦しむ。わたしは抵抗せずただ傍観する。

少しするとお父さんはわたしの首から手を離す。わたしは怒りもせず、ああ人間という生き物はこういう生き物だったな、と冷静に考える。みんな死にかけなのだ、些細なことがきっかけで簡単に自分の能力を開放することが出来る。その能力(才能)を人を傷つけるために使うのか、お金のために使うのか。ただそれだけの違いなんだ。知っていたかい、表面的な物事だけで廻っているんだよ、この世界は。

そうしてお父さんは、3歳になる弟を抱きかかえる。弟は起きてしまったようで泣き始める。そうすると「うるさいんだよ!」と弟の口を大きな掌で塞いでしまう。弟は涙を流しながらもがき苦しんでいる。ここで「やめてっ!」と言えるのが正解だっただろうか、でもわたしにそんな人間的な理性はもう残っていないみたいだった。弟の小さな手足は痙攣して、ぶらんと垂れ下がる。

その瞬間、わたしの夢は突然途絶えた。

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