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言われたとおりのこと だけでは

顔も見たことがないほどの経営陣が関わってくるプロジェクトの場合、ついトップダウンに身を任せてそのまま進めてしまう自分がいる。

すべて確認してもらって、彼らの思う通り・言う通りに進めていく方が効率的でスムーズだからだ。



最近、上長に『あまりにあれこれ確認して判断を仰いでいては、じゃあ我々の仕事ってなに?という話になる。上層部も判断できないと思うから、意見と理由をセットで持っていくといいのでは』
みたいな話をしてもらってハッとした。


思わず思考を停止させて、言われるがまま動いてしまっていたなあと。「指示されたことだけをやる」のではAIやロボットと同じだ。

とはいえ、半沢直樹のごとく上層部で決まったことを真っ向からひっくり返そうなんてことはしない。
方針を受け入れず、ただ頑なに自分の意思を貫こうとしては「めんどうなヤツ」という烙印を押されてしまう。



上層部で決まっている方針・やりたいことなどをよく理解したうえで、自分なりのアウトプットを理由とセットで用意する。
言われた通りのこと だけをこなしているようでは、まだまだなのだろう。

わたしの場合「言われたとおりのこと」だけでもいっぱいいっぱいになっている。
いや、本当はサボってるだけなのかもしれない?とこれを書きながら思った。


いつのまにか上層部からの承認をもらっておくこと、(よくビジネスの現場では「握っておく」なんて表現をしたりするが)
効率を考えるあまりそういう小手先のテクニックを駆使するようになっていた気がする。



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第100回高校サッカー選手権の決勝、国立競技場での青森山田高校が忘れられない。
松木くんの徹底した勝利への執念はやはり尋常ではなかった。


4-0で迎えた後半アディショナルタイム、
攻撃のチャンスを得るも松木くんを中心にコーナーでのボールキープに徹したのだ。

襲いかかる相手チーム・大津高校に対して、身を挺してボールを囲うようにキープする松木くん。フォローにやってくる青森山田の選手たち。

そのシーンと会場のどよめきが鮮明に思い出される。4点差がついていても勝利に徹する姿と、体幹の強さにもシンプルに驚いた。


当時は眼中にもなかったが、このプレーには批判の声もあったらしい。
高校スポーツには清く正しくあってほしい、という幻想を抱く人々の声だろう。



このシーンについて、一年後の今、黒田監督がメディアの取材で話していた。

実はこの決勝の10ヶ月前、サニックス杯という大会で得失点差で決勝進出を逃した苦い経験があったそう。
1-0で勝っていた試合の残り時間20秒〜30秒、必要のない攻撃をしてカウンターを喰らった。PK戦で試合には勝ったが、この一失点が大きかったのだ。


「(サニックス杯で選手たちは)あと20秒、30秒で終わっていたゲームで必要のなかった2点目を取りに行った。過信に走ったか、『どうにかなるだろう』『まさかはないだろう』と。オレも一瞬そう思ってやらせてしまったから自分も反省した。
彼らは『こういう局面はこの1年何回も来る』と言った言葉を忘れず、最後の決勝で、オレら(コーチングスタッフ)が何も指示をしなくても、自分たちでやりきった。3月に彼らが頭に入れた言葉をやりきったことが、オレからすると『本当にコイツらすげえな』と思った瞬間でした」と黒田監督は目を細める。
黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ③」【後編】 「本当にコイツらすげえな」と思った瞬間


そんな経験から生まれたのが、決勝のコーナーキープのシーンだという。
彼らはこの日の監督からの教えを忘れず、最後の試合で指示されなくとも自分たちでやってみせたのだ。



高校サッカーでは各チームに監督の哲学が存在する。チームスポーツの難しいところは、監督がメンバーを決めるため、その方針に見合っていないと試合に出ることができないのだ。

かと言って、監督に言われたとおりのことだけをこなし続けるわけにもいかないだろう。


あの日、決勝で素晴らしい試合をみせてくれた青森山田の選手たちは、チームがどの方向へ進んでいくべきか、自分は何をすべきなのか、
「言われたとおりのこと」だけをやるのではなくて、自分たちで考え実行できるからこそ日本一のチームになったのだと思う。



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