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まず一問

「まず一問」
私が中高生時代に、父が勉強を教えてくれる時、そう言っていた。
学力試験では、とにかく気持ちが焦ってしまっては力が出ない。はじめ!と言われてまず最初にすることは、全ページに目を通し、見たことがある問題や、簡単そうな問題を「まず一問」解くこと。そうすると気持ちが安定し、他の問題にも落ち着いて取り組むことができる。その結果、実力を出し切ることができるという。
これは、父が若い頃、大学受験に挑戦するため1年間浪人していた時に通っていた神戸の御影にあった予備校の先生が呪文のように唱えていた言葉らしい。

昨日、ミッキーの大学時代の恩師、星野公夫先生に出会った。専門は動作法という心理学の分野で、検索してみると、動作法がスポーツ選手の自己認知と運動技能に及ぼす影響という研究があった。風貌は背が高くすらっとしていて、優しそうな方。ふと気づいたのは、話をするときの間とか、受け答えの時の言葉の扱い方が、どことなく私の大学時代の恩師布野先生に似ていて、これが研究を生業としている人の空気感なのかなと思った。口から発する言葉一つ一つに魂を込める、そんな話し方だった。
星野先生は現在86歳。現在も週3日間障害児への動作法的な体育指導をしているという。体力がなくなっているのできつい。と言っていたが、スタスタ歩いてかなり元気。今回は沖縄にふらふらひとり旅に来たと言っていた。
ざっくばらんな会話がたくさんあって、私の知らない人の話もたくさんあって、その中で、動作法という先生の専門分野の話は面白い。
昔は根性論であらゆるスポーツが行われていたが、科学的なトレーニングで解決できることも多い。という話。例えば、できない動きができることが脳に認知されると自然と体が動き、その結果も精神的なリラックス効果がもたらされる。という話。
先生はもともと脳性麻痺の子供の身体の硬直を楽にする運動を研究していたところ、なぜかスポーツ科学部に異動することになり、その時にスポーツ選手ができない動きをできるようにすることも同じ理屈だったことに気が付いたと言っていた。身体ができない動きというのは、身体の緊張からきており、それには精神的な部分の影響が大きいということだったらしい。星野先生は動作法の共同開発者(?)であり、当時科学的な心理学の研究は欧米発祥のものばかりだったが、唯一動作法は日本製だ、と言っていて目から鱗だった。

会社を退職して沖縄に来てはや2年目。もっとこうしたいとかできないことに気づくことが多くなり、やることやできることは山ほどあるはずなのに、日々自分や周りに甘えて、自己嫌悪している。意志が弱いというのもある。
でも良くなった部分に目を向けると、会社組織という大きなものからのプレッシャーや責任感がなくなり、身体はかなり楽になった。会社員時代の私の身体は緊張していたと思う。リハビリは終了。どんどん動かしていきたい。
父が昔言っていた、まず一問というのも、身体と精神の一体的なバランスを物語っていたと思う。センス、感覚を磨きながら、実力を出していきたい。


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