見出し画像

日記九月九日

何しなかった日の夕方に焦り始めて、諦めて切なくなるように80歳まで生きた時にもまったく同じ気持ちになると思った。朝起きてふんわりとウキウキしていたまま昼過ぎでそろそろ動き出そうかという気持ちだったはずなのだけど、スマホを見ていたらすぐに夕方になっている。そこに感慨はあるけれど思考や反省はなくて、最近は全部衰えてぼんやりしている。現時点で明日が来るという油断した漫然とした気持ち。何をしているんだって、問うことすら忘れて青空のまま出る月を見てぽーっとする。こうしちゃいられないと思って閉館間際の図書館へ行き本を返して雑誌に目を通した。みんな年寄りになっても働き続けている。私は考えなくてはならないことが沢山あるのに考えなくてもいい時間について考えている。何時まで明日のことを考えずに過ごすことができるだろうと、不安に駆られながら。今の娯楽のことだけを考えていられることが一番心が健やかでいられるのだも思う。何でもかんでもがんばってやっていて、車のライトが光って消えると、みんないつか死ぬのにな、って背景から逃げ出す。私は人生で気持ちいいことをたくさんしたいのだろうか。タイムラインに金髪男のオフパコの話が流れて、遡って読む。私は絵も音楽も英会話も資格試験も筋トレもサウナもキャンプもロードバイクも全部真似して始まったのに、心の片隅に中途半端で放置されている。人生という壮大な自己満足の中で、大した不満も抱かないまま、のそのそ生きていることに後ろめたさを感じ続ける。

死を超越して、諦めを反転して、光に裏返すのではなく一周回って地続きに誕生を祝う気持ちになれるのだろうか。人生が遅れている。漠然と感じている。何から遅れている、社会は私にとって何。みんなって誰、知り合いの70人くらい。誰もが30歳になったり、40歳になったりすることに最近気づいた。時が流れていって、それが人生全体におけるどこなのかを意識した。ずいぶん遠くまで来てしまった気になったまま佇んでいる。恋愛しないと結婚できないらしい。僕という蟻は次元が高いものには干渉できないことを知らない蟻。不思議なことや気象現象、災害のように考えもなく訪れる悲しい出来事や気持ちいい恩恵をありのまま受け入れる。エアコンにTシャツの袖がひろひろと揺れるのを眺めている。

二人で買った湯呑みが割れた破片を見ていて、呆然と見ていた私を、俯瞰してまた見ていた。乾燥機の下の方から炊飯器の蓋を取ろうとして上にあった湯飲みは落下していった。割れる、という意識から割れた、に変わる。自身の心の健康に関して驚いた点は心の奥底では割れてもいいような動作で炊飯器の蓋を下から強引にとっていたことだ。淡々と破片になった湯呑みをポリ袋に落としたら、また同じものを買おうとだけ思った。ただ漠然としている。心が動かない世界の点滅。

面白くないものを面白く見せる技術に興味がある。正確には3面白いものを8面白いものに見せる技術だけ。ルポ漫画やエッセイにその技術は使われていて、量増ししてお腹が膨れる。ボーリング帰りの深夜のあの子と帰るタイミングで何もできなかった日に戻してもらいたい。何もしないことをしたから、何も今成せていない。

旅人がリンゴの皮を剥いているこんなに人を好きになるマジ
そんなんでやりがい感じてちゃダメだよ 旅行あるある着いてさみしい
カップ麺の汁をトイレに流してホテルの夜は冷える寿命に
196ヵ国 一生の宝物 猿ゴリラちんぱんじー海星
嘘でいいから私の人生で再現してもらえませんか それ









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?