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作業用 50首

休日のイオンのフードコートにて温度を合わせて読む恋愛詩

ぼくたちはどちらかわからなくなって入れ替わったまま呼ばれた双子

明け方のサウナの地下喫煙室でカルピスソーダの売り切れ赤い

寝る前に並行世界を考える 隣の世界はお尻が四つ

コメ欄に「きゅうりと梅の漬物をしこんでおいた明日楽しみ」

夕方の網戸に蝉がとまってて死にかけだよと教えてもらう

たんぽぽを食べるんだってこの毛虫 心にいいことだけがしたいね

六人のうち三人が死ぬことは決めていて誰が死ぬかは決めて

シャボン玉飛ばずに消えた眠い時いつでも寝れた頃に戻れない

新たなるゴッホを作り出すときにマリオの人喰いグランドピアノ

水中で火を燃やしたら 海底の花の冠 決して消えない

顔を丸ごとあげたことがあるんだって君にもいつか起こりうること

音のない音楽のように生きる十四インチのテレビの中で

もう少し悲しい顔をするといいよそれは熱量に変えていけるから

ポートレート ルールを作る人とカードを作る人が違うのか ベルマーク

頂点を過ぎた後次の頂点を持ってくるような夕焼けでした

隠し味にレトルトカレーを入れたから喜んでもらえて嬉しい

ルームミラーの中にあった観覧車は止まって見える 遠ざかる

中国のパンダが寝るとき延々と流れ続ける無尽のリスト

大切なものを順番に失くしてもボタンを押せばカップが落ちる

よく噛んで二時間散歩して眠った責任を失くした責任をとるよ

ぼくたちは泥に塗れて咲くものが何なのかわからずに答えた

綱引きの端をお腹に巻いている パソコンクラブから見た校庭

ぼくは傘を三本忘れて置いていて誰かに貸したいと思ってた

藍色の空にオレンジの灯りで個人塾の看板は横に伸びていく

眠り方を教えてあげる最小の悲劇と書いて消してから書く

簡単に出来たものだけを簡単に手放すための聖書は桜

ドアロック解除のキーは8かBかわからないように書いてあった

キャサリン マンションの北側の部屋でPS4を隣でしたね

戻ることは出来ないことを五億年かけてとうとう理解する部屋

足ツボが効かないところが面白い辛いもの好きなのも愛おしい

あとチーズがあれば言うことはないしなくても問題はなかった

連写するシャッターの音で出来た顔は現在進行形の神話

みんな忘れないでと願ってニ礼二拍手 目を閉じたほうがきっといい

プリクラに浮気禁止と書いてある昇って今でも降りてこられない

ドラマみたいな台詞をドラマみたいな台詞で返す リターンエース

最後だから返さなくていい朝5時の踏切の音 遮断機が上がる

イグアナは目を潤ませたイグアナは居酒屋でバイトできないから

結婚は一年更新にすれば良い GOGOランプがガコッて光る

人々の笑顔がカラフルバルーンになって並んで触らず揺れる

なんとなく珈琲をふわふわに注ぐ あなたの感想だけをください

他の曲は一つも思い出せなくなって誰かがしている旅をなぞった

でも空は青いしうちには犬もいるし散歩はかなり楽しいよ

人懐っこいヒトデが優しくハグしてくれる海のタオルケット大きな

眠るまま抱かれ運ばれて行く時のフィルムの間に一コマのコーク

さよならを言うことすら考えつかなくて落ち葉を集めて服を畳んだ

恋が始まれば左手に恋の海 気を悪くしたなら謝るよ

起きたときどこから記憶がないのかを思い出すことができない駱駝

絨毯に猫が寝ていて絨毯の絨の字が書けるか考えていた

デパートで眠るトム&ジェリー何が言いたかったんだっけ

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