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副作用

意を決して書いたドクターへの手紙を
診察室の机でじっと読む主治医がいた
なにもいわず
沈黙が流れていた
午前10時過ぎの明るい陽射しがはいる診察室は
清潔で静かで
待合で静かに物言わずに待つ
平坦なエネルギーの患者さんたちを
より一層薄暗くさせる気がする

隣で静かに座るリョウコも
何も言わずに
空間の中にいた

ほどなく読み終わった主治医は
「ふ~ん、えらいな~
鍼灸で治すんだ

わかりました

でも、僕は薬は減らしません
減らすとしても半年~1年単位で
少しづつです」

とはっきり言った

ある程度予測はしていたけれど
明確だった

精神科の薬は減らすことでの弊害が大きい
入院中よりも退院後の方が
生活が困難だと思う

当たり前だが自分で体を管理するには
薬のせいでぼんやりしすぎる
感情も理解力も判断力も
すべて低下する

家族が介入しなければ
薬によってコントロールされる
自律神経が
これで正常かどうかなど
まるで分らない
以前の本人を知っているのは
家族だけだから

家族が介入しない限りは
元通りには絶対にならない

個人的意見だが
精神科の医者が薬を減らさないのは
何か事件があったときに
医者が薬を減らしていたことがわかれば
困るからではないかと思う

リョウコも一生今の量の薬を飲み続けさせられるだけだということが
判明した
ここからは
自力で断薬していくしかない
その日から引き続き
薬の量を減らしていくことを決意した
私が様子を見ながら減らしていく
そして社会人になるころは
薬なしで生活できる体になるようにすることが
目標になった

鍼灸をしながらの断薬生活に入った

リョウコは大学とバイトも復活
小学校から続ていた太鼓クラブにも復活した

太鼓クラブは
大学に次に復活したクラブだった

心配なんて全く無用だった

ちょっとぼんやりしているリョウコに対して
先生方も子供たちの全く変わらずに接してくれた
もしかして今までより優しい

子供たちは全く分かってないような
わかっていても何の関心もない
放っておいてくれた
本当に助かった
感謝しかなった

そして、バイト先
リョウコは近所のファミレスで接客の仕事をしていた
そこでもリョウコさんなら慣れてくれているし
何の問題もありません
と受け入れてくださった

本当に大丈夫なのかという私の心配をよそに
リョウコは普通に大学とバイトを続けていた
こんな時ある意味敏感ではないことが
功を奏する

お客さんから何も言われない?
と聞くと
「たまに、おまえ、なにしゃべってんのかわからんぞ」って
いわれるよ
という
それでも平気でないとに行くリョウコだった

しかし、薬を減らしてはいるけれど
最高ランクの向精神薬を飲んでいるリョウコだったが
バイト先で何をしゃべっているのかがわからない
って言われることに関して
そういえば、家でも
何か聞き取りずらいしゃべり方になっている
原因は、舌先が以前はそんなことなかったけれど
もつれやすそう、というか
以前より舌が明らかにおかしい

そんなこと思っていたら
そのうちにリョウコの舌が
口から出ていることに気づいた
口の中で舌がもごもごしたりもしている
本人違和感ゼロ
舌が出ている事はわかっていたけど。

そんなことある?!
調べたら「口部ジスキネジー」
という症状名で
ちゃんとした薬の副作用として書いてある

薬の副作用だったんだ


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