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幕末の英傑 橋本左内の「啓発録」

 

橋本左内は、安政の大獄に処刑された人物である。

当時全国に名を馳せたインテリで、その頃は吉田松陰とは比べるまでもないほどに有名だった。

それは松陰の処刑が決まったとき、「橋本左内のような男と同じ様に処刑されるなら本望だ」といった旨の発言をしたことからも伺えよう。

福井藩士の家に生まれた彼は才覚に溢れ、若くして藩主松平春嶽の側近となり、藩内外の政治に大きな影響力を持った。
将軍家継嗣問題では一橋派を擁護し、これがために安政の大獄で処刑された。
西郷隆盛などもそんな左内を最大限に評価している。


そんな彼は十五歳のときから並外れた才覚があったが、自己の心機一転をはかり、後の生き方の指針を定めた。
それが「啓発録」である。若き彼の著とはいえ、学ぶところも多いのでここに紹介する。

一、去稚心(稚心を去る。) : 目先の遊びなどの楽しいことや怠惰な心や親への甘えは、学問の上達を妨げ、武士としての気概をもてないので、捨て去るべき。

二、振気(気を振ふ。) : 人に負けまいと思う心、恥を知り悔しいと思う心を常に持ち、たえず緊張を緩めることなく努力する。

三、立志(志を立てる。) : 自分の心の赴くところを定め、一度こうと決めたらその決心を失わないように努力する。

四、勉学(学に勉む。) : すぐれた人物の素行を見倣い、自らも実行する。また、学問では何事も強い意志を保ち努力を続けることが必要だが、自らの才能を鼻にかけたり、富や権力に心を奪われることのないよう、自らも用心し慎むとともに、それを指摘してくれる良い友人を選ぶよう心掛ける。

五、択交友(交友を択ぶ。) : 同郷、学友、同年代の友人は大切にしなければいけないが、友人には「損友」と「益友」があるので、その見極めが大切で、もし益友といえる人がいたら、自分の方から交際を求めて兄弟のように付き合うのがよい。益友には、次の5つを目安とする。

・厳格で意思が強く、正しい人であるか。
・温和で人情に篤く、誠実な人であるか
・勇気があり、果断な人であるか。
・才知が冴えわたっているか。
・細かいことに拘らず、度量が広い人であるか。


これを弱化十五の青年が書いたのだから、素晴らしい才覚と意志であるといえよう。

これは大人でも人生の大いに参考になるといへる。


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