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《 鳥取ひとり旅1日目》本屋と銭湯とゲストハウス

行きたかった本屋さんでぐるぐる本をみていたらなんと二時間が経っていて、選んだ本を買おうとするとその本について喋りかけてくれ、どこからですか〜という流れで盛り上がり、小屋でこじんまりと開催してある展示を最後に見せてもらった。

まだ19時なのにもう真っ暗な鳥取。
お店が全然なくって、灯りもなく、真っ暗な闇の中から潮のにおいが漂う。
雨が降っていて、たまにある灯りがたくさんの水に照らされてゆらゆら、水中みたい。そこだけがぱっと明るくて、ぼけている。

またまた真っ暗な路地をあるく
お目当ての銭湯、というか公衆浴場。
番台がおらず、200円、まちのひとが使う小さな浴場らしい、そういうのがあるのだということは以前長野に移住した人から飲み会のとき、聞いた。

ドアを開けようと近づくと、「組合員以外の立ち入り禁止」の貼り紙に気付く。
ここじゃない入り口があるのかと思い、灯りがついている隣の長屋へ入ってみると、本当に普通に人の家だった。

すごく不信感のある顔をされてしまい、私もびっくりして「おふろやさんですか・・?」と聞くとちがうと言われ、清水さんのところかな〜とほんとうのお風呂屋さんに案内してくださった。
雨の中傘もささず、いきなり家に入り込んできた不審者にとってもやさしくしてくれて、すごいと思った。
このひとから、鳥取にきて初めての鳥取弁を聞いた。

以前つきあっていた人と同じ方言で、なんだか淋しいきもちになった。

「男」の木板を見つけ、そこが銭湯だと分かった。
暖簾のような暖簾はなく、看板もなかった。

入ってみるとやっぱり番台に人はおらず、脱衣所(といっていいのかもわからない玄関口みたいなところ)でおしゃべりしているおばあさん二人と目が合う。

どうしたんや!みたいになり、さっさ入りい!清水さん呼ぶから!と呼び出しボタンを押してくれ、清水さんがすぐにやってきて、お金を支払い、45分までに出てよ!と言われ、はい!!とあと15分もないことを時計を見て確認する。

靴を脱ぎ脱衣所に降り立ったはいいものの、なんだか焦って、ここが何なのかも何もわからず突っ立っているとおばあさんがはよ脱ぎ!はよしい!!と言い、すみませんすみませんと謝りながら急ぐ。おばあさんたちは帰った。

超高速で脱いで壁とほぼ同化したロッカーを見つける。
ロッカーの鍵の閉め方さえもわからず、閉めずそのまま入る。
中に入っていた女の人と挨拶を交わし、シャワーも何もついていないただの箱を見てあたふたしている私を見ていすありますよ!とか色々世話を焼いてくれた。
湯船から桶でお湯をすくい、身体を洗った。超高速で。

そうしていると頭によぎった、「タオルがない」!
いつも銭湯ではタオルを借りていたけれど、そんな仕組みさえない公衆浴場、私はミニハンカチしか持っていないことに気付く。でももう遅い。最悪上着をタオルがわりにしようかとか考えながら年季の入りすぎた浴槽に入る。
人生で一番古い浴場に出逢ったかもしれないとおもった。

10秒数えて大急ぎで出て、飛び跳ねて水を落とす作戦も全然役に立たず、脱衣所を濡らしてしまいながらハンカチで全身を拭く。案外いけた。濡らした床を拭くついでに時間を許す限りモップで掃除し、45分ちょっと前に出た。

おもしろかったなあと思いながらゲストハウスへ戻る。真っ暗で静かなまち。虫がなく音が聴こえ、川にうつる灯りがきれい。

「どこかいけましたか?」という店員さんからの質問に待ってました!の如くハンカチで全身を拭いた話をし、なかなかハードでしたね、いやあほんとに!
というわけでドライヤーお借りします、と洗面所へ向かう。
途中で部活生のような大学生と目が合い、すっぴんでびちょぬれの髪の毛の自分が恥ずかしくなった。

チェックインのときに取っておいた「うめ」というドミトリー部屋の窓際、二段ベッドの下。
ベランダは網戸のままで、虫の声が響く。
すてきな音だなあ、自然いっぱいの、静かでうつくしいまち。明日こそは湖にいきたい。今日は早く寝て、早起きして、湖にいきたい。ずーーっと眺めるんだ、ぜったいに!

幸福な旅。

結局6じに家を出たのに着いたのは16時という、10時間もの長旅になってしまった。電車、しんどいなあと思いながらもやっぱり好きだなあ、素敵だから。

改札がなく乗務員さんにお金を手渡しで払い、見える場所でお金が並べられていて、そこからおつりをもらうというなんともアナログな光景を見て、すごい…と嬉しかったのだけれど、なんと鳥取駅でさえも切符売り場があるだけで電子改札がなかった!

ゲストハウスの店員さんから後ほど聞いたのだけれど、これはJRといいつつも電車ではなく「汽車」なのだそう。
電車って言ったら怒られるよーと笑いながら教えてくれた。汽車!なんてすてきな響き。

原始的で静かでおだやかで、なーんにもない、自然でうつくしいまち。