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赤信号とパラレルワールド

パラレルワールドというのは並行世界とも呼ばれる。以下はウィキペディアからの引用である。「パラレルワールド(Parallel universe, Parallel world)とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。」今生きているこの現実から分岐した異なる未来を歩む現実があるということは俄かにも信じがたい。

しかしながら私は、私たちが生きている現実の物凄く日常的な光景の中に、パラレルワールドが干渉してきていることを発見した。それはあまりにも実生活に馴染みすぎてしまっているが故に誰もそれに言及しないが、確かに「彼ら」はパラレルワールドの住民なのである。それは「赤信号なのになんの悪気もなく普通に横断歩道を渡る人」である。

日本は法治国家であるため、道路交通法というものがある。赤信号は止まらなければならない。それは日本に住む人間であれば原則誰もが守らなければならないものである。しかしたまに、待つ人々の目線をものともせず悠々と赤信号の横断歩道を渡っていくものがいる。そういうものに限って申し訳なさそうな顔を一切せずに、何も悪いことをしていないかのように渡る。そして彼らはしっかり左右を確認してから渡る。これは赤信号だから車が来ないかどうかを確認しているように見えるが、普通、車に轢かれることを危惧するような人間は赤信号に渡るような暴挙に出ることはない。つまり彼らはパラレルワールドにおいて青信号を渡っている人間なのである。しっかり左右確認をし、自信を持って渡る。彼らは彼らの現実世界を生きているのであるが、横断歩道という場において時空が歪み、一時的に私たちの世界に迷い込んでしまう。しかし、渡っている当人は気づくことができない。

どうやら道路というのは時空が歪みやすいらしく、赤信号の他にも「もう少し行けば横断歩道があるのに普通に甲州街道のような大きい国道を徒歩や自転車で渡る人」や「自転車という軽車両に乗っているのに車道の赤信号を無視したり逆車線を走行したりする人」などを今までに私は観測している。そしてやはり彼らはそれがさも当たり前であるかのように振る舞っている。これは彼らが決して無知蒙昧で身勝手な人格を持っているというわけではなく、彼らの世界での正しい行動が私たちの世界に干渉して、混ざり込んでしまっているだけである。決して、彼らが法律を守らぬ人間というわけではない。決して。

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