スクリーンショット_2019-09-04_18

【9】〜「メディア」と「ライター」が健全に付き合うための7つの原則〜 良いライターほど、発注者(メディア)の言うことを聞かない。

少し前、ライター同士の会合があった。
そのとき、会合の主宰者の一人である有名プロライターが、次のように言っていた。

「原稿に、お客さんからあれを直せ、これを直せって言われるのが一番イヤ。素人があれこれ注文をつけるから、つまらない文章ができるんだよな。」


実績を持っているライターたちは皆、同意するかも知れないが、メディアの運営側としては、これは難しい問題をはらんでいる。

お金を払っているメディア側の言うことを、客であるはずのライターが聞かないのである。


もちろん「取り替えのきくライター」であれば、取引を中止するという選択肢もあろう。

だが「良いライター」はほとんど代替がきかない。希少性の高いリソースである。

実際、Books&Appsも例外ではない。一部例外もあるが、代替のきかない良いライターほど「クライアントの言うことを聞かない」という傾向を実感している。

「素人がプロのやることに口を出すな」問題

もちろん、これは決してメディアとライターだけの問題ではない。

例えば医者と患者、弁護士とクライアント、デザイナーと発注者、エンジニアと利用者など「スキルが非対称」の場合には必ずこの問題が発生する。


私事で恐縮だが、例えば少し前、私の親戚が脳腫瘍という診断を受けた。
難易度の高い手術であることから、「良い執刀医」を探したところ、一人の名医と言われる先生にたどり着き、手術を受けることになった。

結果的に手術は成功した。さすが名医である。親戚も安堵したようであった。


だが、その後問題が発生した。手術そのものは成功したのだが、手術の副作用である「めまい」や「吐き気」が手術後に多発したのである。

手術後の診察では、医師は「手術は成功した。ある程度の副作用は我慢せよ。そのうち症状は緩和してくる」と言うのだが、半年以上を経ても「めまい」や「吐き気」は収まる気配がない。

不安になった親戚は「セカンドオピニオンが欲しい」と思うようになり、執刀医の「名医」に、その旨を告げた。


するとどうだろう。「名医」は激昂した。
「私はこんな侮辱を受けたのは初めてだ」
と、親戚に向かって言ったのである。つまり「素人がプロのやることに口を出すな」という意思表示だ。

その病院の治療方針に「セカンドオピニオンは患者さんの権利です」とあったにも関わらず、そのような対応をされ、親戚はすっかり「医者不信」になってしまった。

「素人の意見を聞くプロ」は逆に信用できないという意見

しかし、逆の見方もある。
この話を知人にしたところ、「うーん」と微妙な反応をしたのだ。

私は聞いた。
「なんかおかしなこと言った?」

彼は言う。
「いや、気持ちはわかるんだけど、医者が患者の意見を熱心に聞くほうが、逆に不安だけどな。もちろん、話を聞いてほしいときもあるけど、それは医者というより、カウンセラーの役割だという気がする。」


うーむ。患者の側からすると、感情的には受け入れがたいが、確かになるほど、と思う部分もある。

例えば、メディア運営側がライターに「文章をこうしてほしい」とあれこれ指示をして、それが全部「OKですよ」と受け入れられたら、私は「この人大丈夫かな……」と思うかも知れない。


本質的には、ライターがやるべきことは「運営者に媚びる」ことではなく「読者を喜ばせること」だ。

そして、読者が何を欲しているのかについては、ライターが良いライターであればあるほど、ライターのほうがよく知っている。

広告クリエイターはクライアントの言うことを聞かない。

電通出身の知人は、「広告クリエイターは、クライアントの言うことなんて聞かないよ」という。

「だから、電通の存在意義があるんだよ。」

彼が言うには、クリエイターのやる気を削がないよう、クリエイターには「クライアントはなんにもわかってないですよ。」と囁き、一方でクライアントの機嫌を取るために「クリエイターっていうのは、勝手な奴らです」とけなす。

要は徹底して「八方美人」を貫いて、利害調整を担っているのだ。


だが、オウンドメディアには、「電通」の役割を担う人がいない。だから、メディア側とライターは険悪な関係になりやすい。

特にメディア側がライターを単なる「下請け」と認識しすると、ときに「ライターいじめ」ともとれる事象が発生する。

例えば、あるメディアの編集長は「ライターに4回、5回と書き直させているので。1記事出すのに2ヶ月〜3ヶ月もかかった」と話していた。


だがそんなことをすれば「良いライター」は全員逃げてしまうだろう。

実際、メディア責任者がコントロールフリークだと、たいていメディアの記事はガチガチのSEO対策で固められた、つまらない記事ばかりになる。

Books&Appsにおけるライターとの付き合い方

では「メディア」と「ライター」が健全に付き合うには、どうすればよいか。

Books&Appsでは、試行錯誤の末、7つの原則を設定した。

この続きをみるには

この続き:1,881文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
隔週でインターネット上における 「webライター」 「webメディアの運営者」のためのノウハウを発信します。 詳細かつテクニカルな話が多いので、一般の方向けではありません。

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、webメディア運営、および記事を用いたマーケティング、SNSに...

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

ありがとうございます!感謝いたします。
10

安達裕哉

ビジネスメディアBooks&Apps管理人の安達です。 人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差。 定期購読マガジンでは、メディア運営、メディアマーケティング、制作過程の裏側を詳細にお伝えします。

webライターとメディア運営者の、実践的教科書

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、webメディア運営、および記事を用いたマーケティング、SNSによる拡散の手法の裏側を詳細にお伝えします。 更新頻度:一月に3〜4回程度