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コンサルティング会社で、複数名で本を書くときに使われていた、「18のルール」の話。

昔在籍していた会社では、しばしば本を書くことがあった。
おおむね、2年~3年に一度は、何かしらの形で執筆する時期があったと思う。


なぜコンサルティング会社がわざわざ本を書くのか。

一番は、「本」が案件獲得のためのツールだったことだ。
「本を読んで問い合わせた」という方が、少なからずいた。
我々も、本の中にセミナーへの導線を仕込んだ。

また、営業の時に配布すれば喜ばれるし、セミナー時には講師が本を出していると箔がつく。

また、書いている内容は、コンサルティングのノウハウそのものだったから、案件を進めるときに、教科書代わりに使うこともあった。


執筆の形態

コンサルティング会社で執筆をするときには、大まかに2つのパターンがあった。


一つ目は、ライターを雇って、口述筆記したものを本の形にまとめてもらうケース。

これは主に、「今、世の中で流行っているネタ」を書籍化するなど、スピードを重視する時に採用されたやり方で、話すだけでよいので楽だった。

あとは出てきた原稿を読み、修正を入れておしまい。
一種の「ゴーストライティング」といえばよいのだろうか。


そこそこ良いライターさんにお願いすると、1冊に大体、100万円~200万円程度かかっていたようなので、「マーケティング費用」と割り切ってしまえば、本を出すのはそれほど難しくない。

あとは出版社から、所定数の本を買い上げる。
販促費用渡したりすることもあった。
それで無事世の中に本が出る、という寸法だ。

こうした、マーケティング目的の本は、自費出版ではないが「販促」も自分たちでやるので、出版社もリスクを背負う必要がないから、前向きである。

要するに「金さえあれば、本は出せる」ということを私はそこで知った。
そういう本も、世の中にはたくさん出回っているのだ。


そして二番目のケースが、ライターに依頼せず「自分たちで書く」こと。

これも、もちろんよくあった、というよりむしろ、コンサルタントは積極的に執筆に協力するように求められた。
評価の対象でもあった。


とはいえ、もちろん自分たちで作っていたコンサルティングの資料やマニュアルを、「本」として文書化していくのは、かなり大変な作業だった。

特に納期がきついときは地獄で、ある資格試験のテキストを作ったときなどは、それこそ徹夜を繰り返して何とか間に合わせた記憶がある。


「手分けして執筆」の問題点

ただ、手分けをして執筆を進めることに、問題がないわけではない。
むしろ、問題だらけである。

まず文体の統一が大変だ。

書いてしまった後から、「ですます」を「である」に統一する手間など、考えただけで気が遠くなりそうだ。

あるいは表記ゆれ。

NTTと書くのか、NTTとかくのか、あるいはエヌ・ティ・ティとかくのか、これも人によってぶれが発生すると、探すことすら難しくなる。


したがって、会社には本を書くにあたって、コンサルタントへ渡す18個のルールの一覧、「執筆のオキテ」があった。
私が入社する前からあったようなので、誰が作ったのかはしらない。

ただ、内容を見るに、本多勝一の「日本語の作文技術」からの抜粋と思われる項目や、木下是雄の「理科系の作文技術」からのネタと思われる箇所もあり、多くの人が協力してつくり上げてきたものだったのだろう、と推測できる。

実際、「執筆のオキテ」は、非常に簡潔にまとまっている。
「理科系の作文技術」の冒頭に紹介されている「チャーチルのメモ」に近いイメージだ。

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インターネット上における 「生成AIの利活用」 「ライティング」 「webマーケティング」のためのノウハウを発信します。 詳細かつテクニカルな話が多いので、一般の方向けではありません。

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…

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