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10万PV以上見られた記事を振り返り、「バズ記事」の再現性について検討する。

コンテンツ制作の際に「多くの人に読まれたい」と望むのであれば、「バズる」ことを考慮しないわけには行きません。

検索上位を取ることに比べて、アクセス増加に即時性があり、しかも「バズ」は、その記事の検索順位も上げることが出来るからです。


しかし「バズ」についてはまだまともな知見が少なく、プロの作家だから、あるいはライターだからバズを生み出すことが出来る、というわけでもありません。

むしろ、プロではなくともバズることはできるし、何度も繰り返しヒットを飛ばすアマチュアのブロガーやインフルエンサーも少なくありません。

いや、おそらく「プロ」がいちばん苦手な領域がもしかしたらここなのかもしれません。


中には「バズはいらない」「購買に結びつかない」などと主張しているプロのマーケターもいます。

しかし、特に追加で費用を必要とせず、再現性高くバズを起こせるものなら、やらない手はない。できるならやれたほうがいい、当たり前の話です。

しかし一体なぜ、繰り返しバズを起こせる人がいるのでしょう?
そもそも、一体どうすればバズを起こせるのでしょう。

今回は、その要因を、1記事で10万PV以上を獲得したケースを用いながら、分析を試み、バズの再現性について述べたいと思います。


「バズる」とはどういうことか

ただその前に、一点だけ確認をしておきましょう。

それは、「バズ」とは何かという話です。
もっと言えば、バズの定義についてです。

あまり精度の高くない表現で言えば、バズとは、「たくさん読まれること」なのですが、では、そうなると一体、たくさんとはどの程度なのか。

上にあげたように、10万PV読まれれば、たくさん読まれたことになるのか、100万PVではどうか、どの程度が適切なのか曖昧であり、再現性を語るには、もっと正確に理解する必要がありますし、そもそも「バズる」という表現自体が洗練されてはいません。


ですから、ここでお勧めしたいのがネットワーク科学の表現を使った「バズ」の定義です。

実は数年前に、このマガジンで少しだけ触れたのですが、ネットワークの構造と、バズは深く結びついています。


皆さんは、「六次の隔たり」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
六次の隔たりとは、「六人たどると、世界中の人とつながることが出来る」という経験則です。

スタンリー・ミルグラムは、先述したものよりはるかに有名な実験を巧みにやってのけた。その実験によって、あらゆる人が平均して「六次の隔たり」によって相互につながっていることが示されたのである(自分の友人は一次、友人の友人は二次、というように数える)。
一九六〇年代に行われたこの実験では、ネブラスカ州に住む数百人の人びとに、一〇〇〇マイル(約一六〇〇キロメートル)以上離れたボストンのあるビジネスマン宛の手紙が渡された。実験への参加者は、直接の知人にその手紙を送るよう指示を受けた。ただし、ボストンのビジネスマンとの個人的関係が自分よりも深そうな人に手紙が渡るようにしてほしいということだった。こうして、手紙が目標の人物に達するまでに、人から人へのステップがどれくらい必要かが調査された。すると、平均して六つのステップがいるとわかったのだ。この驚くべき事実が判明すると、そもそもはデ・ソラ・プールとコーヘンのアイデアであるスモールワールド効果をめぐり、ありとあらゆる研究が始まった。

ニコラス・A・クリスタキス 「つながり」 講談社

そして、ニコラス・A・クリスタキスらの研究によれば、実質的な影響力を及ぼすことが出来るのは「三次ネットワーク」までです。

もっとも、六次の隔たりを経てあらゆる人とつながっているからといって、それらの人びとすべてに影響を及ぼせるわけではない。社会的な距離が問題となるのだ。私たち自身の研究から、社会的ネットワークにおける影響の広がりは、いわば「三次の影響のルール」に従うことがわかっている。私たちのあらゆる言動は、さざ波を立てるようにネットワークを進んでいき、友人(一次)、友人の友人(二次)、さらに友人の友人の友人(三次)にまで影響を及ぼすケースが多い。

ニコラス・A・クリスタキス 「つながり」 講談社

つまり、
1次ネットワーク(直接の知り合い)
2次ネットワーク(友達の友達)
3次ネットワーク(友達の友達の友達)
まで、影響を及ぼせば、「十分な社会的影響力を持っている」という事ができます。

わたしはここに着目しています。
すなわち、記事が「他人」の目に触れる、3次までネットワークを介して広がることを、バズというのです。

例えばTwitterユーザのケースです。
ユーザ一人あたりのフォロワー数の中央値が約150名としましょう。
リアルワールドでも、知人友人の総計は、大体これくらいと言われています。

そして、その150名のうち、フォロワーの半分が重なっていない(友人同士でフォローしあっていない)と仮定すると、Twitterの平均的なユーザのネットワークは以下のように広がっていると推測できます。

150人(1次ネットワーク 友達)
150*75=11250人(2次ネットワーク 友達の友達)
150*75*75=843750人(3次ネットワーク 友達の友達の友達)

フォロワー数150人の平均的なユーザのツイートインプレッションが、3次ネットワーク、つまり1万1千~84万に達したとき、これが「バズった」状態と考えてよい、と我々は考えています。

「三次ルール」は、さまざまな態度、感情、行動はもちろん、政治的意見、体重増加、幸福といった多様で幅広い事象に当てはまる。ほかの学者たちの記録によると、発明家のネットワークにおいて、革新的なアイデアは三次まで広まるらしい。

つまりバズの定義は、3次ルールに則り、そのネットワーク内において、「友達の友達の友達」にコンテンツが伝播している状態と考えてよいでしょう。

また、この法則を逆に考えれば、1次ネットワークの「友達」が多ければ多いほど、バズの規模も大きいでしょう。

例えば私のTwitterアカウントのフォロワー数は3万1千ですが、
31000*75=2325000なので、2次ネットワークだけで2百万人以上、3次ネットワークは1.7億以上になります。

そう考えると、バズれば日本人全員に到達する(そもそも全員がTwitterを見ているわけではない+バズればバズるほど、アカウントの重複が増えるので、実際にこのようなことはないと思いますが)可能性すらあるわけです。

「友達の友達の友達」にコンテンツが伝播する最も重要な条件は、テーマの普遍性

では、具体的に、そのネットワーク内で「友達の友達の友達」にコンテンツが伝播する条件とは何でしょう。

10万PV以上見られた記事を俯瞰すると、様々なことが見えてきます。

具体的に言えば、「友達の友達の友達」までコンテンツが伝播するには、「彼らすべてが好きな話題」でなくてはなりません。

つまり、コンテンツには普遍的なテーマ設定が必要、という事になります。

例えば書籍でいえば、「ミリオンセラーになる分野」はたった5つしかないそうです。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の編集者の加藤貞顕氏は
「実際にミリオンセラーになっている書籍は、誰にも関係がある家族、恋愛、青春、お金、健康の5分野に限られている」

2012年9月11日「レッツノート ビジネス スキルアップ アカデミー」

ただし、これだけではやや乱暴で、家族について書いただけではバズるとは限りませんし、恋愛ならなんでもいい、と言うわけでもないでしょう。

しかし、最初の前提として「このテーマには普遍性があるのか?」を問うことは非常に重要です。

では、どのようなテーマが「バズが取れる普遍性がある」と見なされるのでしょう。
私たちのメディアでは、大きく8種類が存在しています。

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