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パーキンソン病の方の運動療法の効果を知ろう!

こんにちは。
山口です。


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本記事ではパーキンソン病を始めとする神経系の病気をお持ちの方を専門とするセラピストの私が、運動療法の効果について執筆しています。



パーキンソン病は、運動症状や非運動症状を持つ進行性の病気です。



しかし、リハビリテーションとして運動療法を取り入れることで、症状の進行を抑制し、生活の質を向上させることができると言われています。



今回は、パーキンソン病の方が運動療法をすることの効果について、科学的な視点や私の経験から深ぼって記事を書いていきますので、ぜひ最後までご覧ください。



1. パーキンソン病の方の運動療法効果について


パーキンソン病の治療は主に3つあります。


薬物療法と手術療法、そしてリハビリテーションが挙げられ、運動療法はリハビリテーションの中の一つに当てはまります。


運動療法はパーキンソン病の症状進行を抑制し、生活の質を向上させる重要な役割を果たします。

運動療法は定義で見てみると

「障害や疾患の治療や予防のために運動を活用すること」

とされています。

引用:e-ヘルスネット「運動療法 」 閲覧2024年5月3日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-086.html


パーキンソン病の方が行っていく運動療法はストレッチングや筋力トレーニング、有酸素運動、日常生活練習などが挙げられます。

パーキンソン病の方の運動習慣があることのメリットについて研究も見てみましょう。

「Kazuto Tsukitaら:Long-term Effect of Regular Physical Activity and Exercise Habits in Patients With Early Parkinson Disease(早期パーキンソン病患者における定期的な身体活動と運動習慣の長期的な影響),2022.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35022304/



こちらの研究では、早期パーキンソン病の方237名(平均年齢 63.0 [56.0-70.0] 歳、ヤールステージ 2.0 [1.0-2.0] )を対象に6年間の経過を確認しています。


それぞれの方の運動習慣について評価指標 Physical Activity Scale for the Elderly questionnaire(高齢者身体活動尺度、PASE ) を用いて確認し、運動習慣別に身体機能や活動状況の様子をみていくと以下のようなことが分かりました。


①中等度 〜 強度の身体活動があるほど体位不安定歩行障害(PIGD)の進行がゆっくりだった。

②家事を行う時間が長いほど日常生活動作(評価はModified Schwab & England Activity of Daily Livingを使用)が良好だった。

③家事を行う時間が長いほど、注意や処理機能(評価はSymbol Digit Modalities Testを使用)が良好だった。


つまり、各種の身体活動がパーキンソン病症状の進行をゆっくりにしており、運動の習慣があることは症状の進行を抑制するために重要であることが分かりました。


2. 医師や療法士など専門家こそ知っておきたいこと



パーキンソン病の方に関わる専門家として、以下ことを大事にする必要があると考えています。


①効果を認識すること



医師や理学療法士など、専門家は運動療法の重要性を認識し、積極的に対象者さんに提案することが必要です。

日々のリハビリテーションの中でも運動療法の効果を感じることは多いと思います。

経験をしていきながら、運動療法の効果を認識していき、対象者さんへ自信を持って助言や実施ができること自体がさらに効果を高めていくために大事な要素になります。

②科学的な根拠を知ること


運動療法の効果は科学的にも裏付けられており、その有効性を対象者さんや関係者に示すことが重要です。

科学的な知見は日進月歩で、当初は改善が難しいと思っていた事象についても研究が進み、効果が明らかになっていくことは多いです。

研究論文を確認しながら、常に知識をアップデートしていくことで、解決できる課題もより増えてくるでしょう。


③発症早期からの運動療法が大事!という認識



特に、パーキンソン病発症早期からの運動療法が効果的です。
というのも、パーキンソン病発症の早期から


そのことを提言しているレビュー論文が以下です。

「Terry D. Ellisら:Evidence for Early and Regular Physical Therapy and Exercise in Parkinson’s Disease(パーキンソン病における早期および定期的な理学療法と運動のエビデンス),2021.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35022304/


この論文の中では以下のようなことを提言しています。

・発症早期から姿勢の揺れや1日あたりの歩数の減少や、関節の痛みが生じることがある。

・発症早期から歩行速度が臨床的に意味のある基準値を超える低下量があった。

発症早期から様々な症状が生じることがあるということがわかります。



そんな中、著者たちはこれまでのリハビリテーションの関わり方と今後の課題について以下の図のようなものを提示しています。


図 従来のリハビリテーションの関わり方




図 今後の目標としたいリハビリテーションの関わり方



今までのモデルは何かしらの症状が生じてからリハビリテーション介入をしている内容でした。


しかし、これからは診断直後にリハビリテーション専門職が関わることで適切な評価と運動指導をしていくことが大事になります。


早期からパーキンソン病の方と関われるような機会を作ることは今後、社会全体のインフラとして整理していきたい部分です。


一般的にパーキンソン病の方には運動が大事!ということは知られていますが、ではどの症状にどう効果的なのか、という点を細かく知ることもとても大事です。

以下では症状別の運動療法効果についての研究論文をいくつか紹介します!

3. パーキンソン病への症状別の運動療法の効果


運動症状の改善

「Victoria A Goodwinら:The effectiveness of exercise interventions for people with Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis(パーキンソン病者に対する運動介入の有効性:系統的レビューとメタ分析),2008.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18181210/

パーキンソン病の方の生活の質や筋力、バランス能力、歩行速度に対して運動療法が効果があったことを示したメタ分析研究。



振戦への効果

「Victoria A Goodwinら:Effect of Exercise on Parkinson’s Disease Tremor: A Meta-analysis Study(パーキンソン病者の振戦に対する運動の効果: メタ分析),2021.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8086717/#B20

上肢の安静時振戦に対して上肢の運動や有酸素運動などによる軽減効果があったとするメタ分析研究。


バランス

「Asmare Yitayehら:The effectiveness of physiotherapy treatment on balance dysfunction and postural instability in persons with Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis(パーキンソン病者のバランス障害と姿勢不安定に対する理学療法の有効性:系統的レビューとメタ分析),2016.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8086717/#B20

バランス能力低下に対して、バランス練習や筋力トレーニングの組み合わせの実施による軽減効果があったとするメタ分析研究。


姿勢

「Francesco Lenaら:Effects of postural exercises in patients with Parkinson's disease and Pisa syndrome: A pilot study(パーキンソン病およびピサ症候群者における姿勢訓練の効果: パイロット研究),2017.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28946570/

異常姿勢に対して、ストレッチや筋力トレーニング、姿勢保持練習といった運動が姿勢改善の効果があったとする研究。


すくみ足

「Moran Gilatら:A systematic review on exercise and training-based interventions for freezing of gait in Parkinson's disease(パーキンソン病におけるすくみ歩行に対する運動とトレーニングに基づく介入に関する系統的レビュー),2021.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34508083/

すくみ足に対して、すくみ足に特化した運動が症状軽減効果があったとするメタ分析研究。


非運動症状の緩和

「Hélcio Kanegusukutら:Effects of Progressive Resistance Training on Cardiovascular Autonomic Regulation in Patients With Parkinson Disease: A Randomized Controlled Trial(パーキンソン病者の心血管自律調節に対する漸進的レジスタンストレーニングの効果:ランダム化比較試験),2017.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28705551/


運動療法が自律神経症状の軽減に効果がある可能性を示唆している研究。


痛み

「Hélcio Kanegusukutら:Effects of a flexibility and relaxation programme, walking, and nordic walking on Parkinson's disease(柔軟性とリラクゼーションのプログラム、ウォーキング、ノルディックウォーキングがパーキンソン病者に及ぼす影響),2017.」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28705551/

パーキンソン病に特有の疼痛に対するストレッチや有酸素運動といった運動療法が症状の軽減効果があったとする研究論文。



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このように各部分に対して運動療法の効果が明らかにされています!

また今後の発信ではそれぞれの研究内容の詳細や臨床での経験も加味して、書いていきます!

4. まとめ


パーキンソン病の方の運動療法は、症状の改善や生活の質の向上に効果的です。


医師や専門家は、科学的な根拠を踏まえて対象者さんに運動療法を推奨し、個別のニーズに合わせたトレーニングプランを提供することが重要です!


科学的情報と臨床での経験も加味しながら、
より効果的で有益なリハビリテーションができるようにしていきましょう。


最後までご覧いただき、ありがとうございました!

ぜひ読んでいただいた内容も含め、ディスカッションもして、
知識と経験をご一緒にアップデートしていきましょう✨

また今後もどうぞ、よろしくお願いいたします♫


山口祐弥

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