「自分の存在が申し訳ないから、ものすごく気を使う。オッサンとして有害というか、何もしなくてもマイナスが存在していると思ってる。嫌われないようにできているか、基本的にいつも不安」

と、以前友人の男性（40代）が言っていました。
ユーモアと知性と愛に溢れた男性です。
なのになんでそんな・・・と思うと同時に、この言葉も思い出しました。

『男の人はうっすら嫌われていて、女の人はうっすら好かれている』

理屈を飛び越えて「ある」かのように言われるこの感覚。

「キラキラして揺れているフレッシュなものが人間は好きなんですよ」と伊勢丹のアクセサリー売り場でレモンのモチーフのピアスを見せてもらった時のような謎の納得感。

でも本当にそうだろうか？納得感があるようで違和感もあるのです。決して一概に言えることではない。多様な感覚と根拠のあるこの言説がうまく言葉で説明できないまま、私の中で棚上げになっていました。

そんな夏の日に、どうもうっすら嫌われている（らしい）オッサンの最高峰、スター2名の映画を観てきました。

60歳になるトム・クルーズ。ものすごい体当たりアクションが売りのミッション・インポッシブル シリーズ7作目です。

今回もギャーーーーーーーだしグオーーーーーーーーだしマジかーーーーーーだし「トムになんてことさせるのーーーー！？」というシーンの連続です。

でも全部トム・クルーズが自らやるって言って演じたのであろうスタント無しのシーンなので、誰にも文句が言えません。
言っていいのはイーサン・ホークだけだと思う。
トム・クルーズのガッツのせいでイーサン・ホークがひどい目にあってる。いつもいつも。

間違いなく、もう一生何にも仕事をしなくても悠々と生きていける人です。

なのになんでこんな危険で大変なことをするのか。なにがトムをここまで駆り立てるのか。「もうやめてー！」と思いつつ「これでこそトム・クルーズ」と思う自分もいます。

観客とは無責任なものだし、スターは無鉄砲なもの。共犯関係は見事に成立し、今作品もとても面白かったです。

とりあえずいつでも運転できないといけないし、いつでも懸垂できないといけない、と思いました。イーサン・ホークと同じ世界で生きていくためには。

こちらの作品、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」でも同じことを思いました。とりあえずいつでも運転できないといけないし、いつでも懸垂できないといけない。
そして「ハリソンあんたなんでそんなことまでやってんのーーーーーーぎゃあああああああああ」と120分くらいずっと思い続けました。今年81歳になったハリソン・フォード。今作品の見所は間違いなく、映画の前半で演じる37歳のインディ・ジョーンズです。

最新のインダストリアル・ライト・マジック（ILM）で、80歳のハリソンフォードが演じた部分の顔だけに37歳のハリソンフォードの顔を「顔交換技術」。
これは共演のマッツ・ミケルセンにも採用され、若ハリソンと若マッツの攻防が見られます。
これだけでも3500円払ってもいい映画体験です。本当によくできているのです。昔の映画の未公開フィルムかと思うような、生きて演じている若いハリソン・フォード。

映画を見ている時、アクションはスタントマンがやっているのかな？そこに顔だけを当てはめたのかな？と思っていたのですが、演じたのは間違いなくハリソン・フォードとのこと。
マジか。マジなのか。

若い時代のエピソードなので、アクションに遠慮がありません。よく動きよく飛びよく戦う、これを80歳近くの名優が演じたと思うと、どれほどの努力を・・・と思わずにいられません。

若いっていいな、ってやっぱり思いながら見ている自分がいました。無茶しても、殴られても、味方に裏切られても、37歳だったらどうにでもなるだろう、と感じていました。若さ由来の頑丈さを信頼して、激しいシーンを楽しみがなら観ている自分の捉え方の差を感じていました。

だって高齢のハリソン・フォードが登場してから一気に切なくなるんですもん。おじいちゃんになってしまったかつてのヒーロー。とんでもない冒険を危機一髪で潜り抜けてきた日々が遠く遠くなって、もう誰も自分にそんな期待をしない・・・そんな「老い」が晒される高齢の裸、周囲の扱い、生徒の無関心、それらからしっかり伝わる画面のリアルさ。

しかし。

しかしですよ。