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【私的読書生活】紙も電子もあるものだから                  

人それぞれだし、自分なりの方法もあるといえばある。
いざ読んでみると、結局どれでも同じことが述べられているなと思うこともある。

それでもなんとなく気になって、ついつい手に取ってしまう。
読書術とか、読書法の本。
気がついたら、本棚の一角を占拠している始末(見出し画像参照、ごく一部)。

今回は、そんなもしかしたら対照的かな?と、読み比べてみた2冊を中心に。

引用なども含め、久しぶりに長い記事です。悪しからずご了承下さい。
お暇な時にお付き合いいただければ幸いです。


まずは1冊目。初読です。

勝間和代『読書進化論ー人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか』

「読書進化論」では、本によってどのように自分を成長させるかということをテーマに、本の選び方、読み方から始まり、書き方、売り方にいたる部分まで、幅広くカバーをしています。
また、書店ぶらぶら歩きから、勝間本読者(通称カツマー)さんのインタビュー、書店員さんたちのインタビューを含め、多層的な視点からの読書論を目指しました。
Amazon「著者からのコメント」引用

なぜか私、最近出た本かと思っていました。
実際は2008年初版なので、14年前の出版。

2008年ってどんな時代だったっけ?

見れば思い出すけれど、そんなだったか!と驚く方が多い。
どことなく今と重なる部分もあるのが、薄寒い。

さてそんな時代に出た『読書進化論』。

タイトルの印象から、ウェブの優位性を語っているのかと思っていた。

実際は“「インターネット」と「本」は個々人のアウトプットを共有するという点においてよく似ているが、「本」の方が「フォーマットの安定性」において優れている”と。

むしろ紙の本やリアル書店の優位性が言及されている点が、意外で印象的だった。

いわゆる「読書術」については、主に第2章に述べられている。
簡単にまとめると以下のようなことが挙げられていた。

・目的意識を持って読む
・フレームワークを捉えてから読む(帯、目次、「はじめに」、「おわりに」など)
・自分にとっての「良書」を読む(無理して読むのはかえって悪い読書体験に)
・自分のレベルに合った読書方法で読む(『本を読む本』参照)

以上を踏まえて
・「多読」「速読」を行う
・得た知識を分類し、タグ付けして頭に格納する
・読んだ内容を実行に移してみる
勝間和代『読書進化論』第2章 抜粋

第3章は「書く」進化について、第4章は「売る」進化について。
それぞれウェブとの関係と、著者自身の経験が多く語られている。
読者からの反応も多く引用されている。
勝間和代氏のファンは読みやすいだろう。
(そうでない人にはややアクが強いかな?)


もう一冊はこちら。
前に読んだことがあるので再読。

酒井邦嘉『脳を創る読書ーなぜ「紙の本」が人にとって必要なのか』

(同著は2017年に文庫版も出ている様子。内容が更新されているかは不明。)

今回読んだのは2011年の単行本版。

こちらは著者が言語脳科学者とのことで、読書術というよりは、読書と言語脳科学との関係といった内容。

第1章「読書は脳の想像力を高める」では、活字というメディアの入力時の情報量の少なさと、それを補うために脳は想像力を高めるといった内容が語られる。
続く第2章「脳の特性と不思議を知る」は、かなり脳科学や言語学に近い話で、脳の想像力とはどういうことかについての説明が多い。
第3章「書く力・読む力はどうすれば鍛えられるのか」では、活字で文章を読むこと(読書)で想像力が鍛えられ、読む力が鍛えられれば自分の文章を客観的に読むことができるため書くことも上達するような旨のことが書かれている。
この章では少し電子書籍の違和感についての言及がある。少し引用しよう。

電子書籍によっては、設定で縦書きと横書きを変えることもできるだろうし、擬似的に左開きか右開きかをアニメーションで表すこともできる。しかし、それでも紙の本にある何か当たり前の物が欠けているように感じる。それは、文章の様式感の喪失に原因があるのかもしれない。
酒井邦嘉『脳を創る読書』P120

できるだけ平易な言葉で書くと「何か当たり前のものが欠けている」としか言いようがないのかもしれないが、出来ればそこをもう少し、解説して欲しいと感じた。
私なりに解釈するとすれば、「冊子を手に持ち、紙を捲る身体感覚と電子ペーパーの模擬的なページめくりの間には、脳が混乱する違和感がある」ということかと。
そう思うと、昔、書籍というのが巻物だった時代の人が、冊子を手にした時もそれなりに違和感があったかななんて想像を逞しくしてしまうが。

閑話休題。

第4章「紙の本と電子書籍は何がどう違うか」で主に紙の本と電子書籍の違いが語られている。
著者は電子書籍の検索面については評価しているようである。その上で、紙書籍を推す理由として以下のような点を挙げている。

電子書籍では量的な手がかりが希薄である。先に述べたが、本の厚みの与えるページの量的な感覚はとても大切な要素なのだ。1冊の長編小説を読む場合、紙の本では、視覚的にも触覚的にも常に全体のどのあたりを読んでいるのかを把握しながら読むことができる。
酒井邦嘉『脳を創る読書』P143

これは私自身、納得出来る。
先日、山崎豊子の『華麗なる一族』を読んだ際、ページが残り少なくなるにつれ、この物語は一体どう回収されるのだろうと疑問と高揚が入り混じり、胸がざわめいた。

また著者は、紙の書籍であれば、必然的に生じる左右のページの違い、改行やインテンドの表現が電子化される時に、省かれてしまうことで、作者の意図が伝わりにくくなることなども危惧している。

このページの表現については、以前、私は漫画『ONE  PIECE』を電子書籍で読んだ際に強く感じた覚えがある。
戦闘シーンが続き、死闘の末、主人公がボス敵を倒すまさにその瞬間(確か空島編)。
捲ったページには見開きいっぱいにその撃破の衝撃が描かれていた。
同じシーンを紙書籍で読んだ時は、一気にその視界が倍になる感覚があった。
実際に物理的にみているページの大きさの単位がB5から一気にB4として視覚に入ってくるわけで、まるで映画でもみているような興奮を覚えた。
それが電子書籍は見開きを見せようとすれば画像の大きさは半分になってしまい(タブレットの大きさは変わらないから仕方がない)、逆に1ページずつ読む設定にしては見開きが分断されてしまうことで、全く絵の意味はわからなくなってしまう。
『SLAM DUNK』のクライマックス山王戦でのあの名シーン(桜木と流川のハイタッチ!)も電子書籍ではおそらくあの迫力と感動は表せないのではないかなぁ。
まぁ、私が電子書籍をあまり読まなくなっている間に、その辺の問題はだいぶ解決されているのかもしれないし、漫画については電子書籍向きの表現方法も増えているのかなとは思うのだけれど(最近4コマ仕立て増えている気がします)。

(また脱線が長くなってしまいました。戻ります。)

紙書籍の良さについて、著者は「積読」の楽しみや、紙の本にしか持ち得ない装丁などの個性、視覚・触覚・嗅覚に訴えてくる楽しみなどにも言及。

これは、昨今の持たない生活などには逆行するかもしれないけれど、本好き(読書好きではなく)には頷ける感覚だろう。

第5章「紙の本と電子書籍の使い分けが大切」では、電子化が悪いわけではないが、あくまで紙の本と電子書籍それぞれの良さを享受し、使い分けていくことを推奨し、「使い方」が大切であることが繰り返されている。
タイトルにあるような「紙の本」礼讃ではなく、電子書籍反対派でもない。
紙書籍と電子書籍の共存と、使う側の取り組み方についての提言。

今や、小学生にも一人一台タブレットの時代とか(身近に接していないため、その辺の実感が乏しい)。
紙の本をちゃんと読んだことがないという子供も出てくるのだろうか。
個人的には時代に逆行するように、親戚や友人の子供に本を贈り続けてはいるのだが。
(もうすぐクリスマスなのでそろそろ考えなくては!)


はい、とまぁ、2冊ともに、リアル書店や紙の本の良さと、ウェブや電子書籍の有効利用について述べているのは共通。
少し違う論調のものも読んでみたい。

またこんな感じの、読書本まとめというか、感想まじりのアウトプットできればと思います。

ちなみに勝間氏の著書冒頭には、以下のような記述がある。

本をめぐる名著は『本を読む本』(M・J・アドラー)、『知的生産の技術』(梅棹忠夫)などいくつもありますが、『本を読む本』の原著が出たのは1940年、『知的生産の技術』が1969年と、すでにどちらも何世代も前になってしまいました。
勝間和代『読書進化論』「はじめに」

どちらも読んだことがある古典的名著。

私にしては読み込んでいる2冊


私個人としては、「何世代も前」という印象は全くない。
(勝間氏も「愛読書で、推薦本としてもよく紹介している」とされているが)

むしろ、いくらwebが発達しようと、電子書籍の優位性が高まろうと、「読書の王道」は変わらないと感じる。

読書をする際の媒体や、メモなどを残す際の使うツール。
確かに変わってはいるし、便利さも格段に違う。
その上で、変わらない普遍性。

例えるなら「食事は、旬の食材をよく噛んで食べることが、美味しくかつ健康にいい」みたいなものかと。
それは「食事は、機能性食品やサプリメントのみの方が効率がいい」という考え方とは次元が異なるものだろう。

栄養の確保だけでは説明しきれない食事の効用。
情報収集の効率だけでは語りきれない読書の魅力。

私にとっては、両者は近い感覚。
さらに例えれば、以下の2冊は「究極」か「至高」かと(by『美味しんぼ』w)

この2冊こそ、またいつかきちんと紹介などしたい、個人的「読書本」の最高峰です。


最後までご覧下さり、ありがとうございました。 どうぞ素敵な読書生活を👋📚 

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