絵本探求ゼミ第4期1回

絵本探求ゼミ第4期1回に参加して

2022年春に東洋大学文学部国際文化コミュニケーション学科准教授、オンライン絵本会の設立者の竹内美紀先生の絵本探究講座(ミッキー絵本ゼミ)が始まりました。
1期、4回のZOOMでの90分のゼミ。最後の1回は北海道層雲峡でのリアルゼミです。今回は4期になります。

今までのゼミの内容
1期・絵本とは何か? 絵本における絵と言葉の関係・絵本の読者は誰か? 子どもの心理発達・絵本のテキストとは? いい絵本とは何か? 
2期「昔話」「オノマトペ絵本」
3期「絵本賞」
4期「翻訳絵本」「絵本の絵を読む」


受講動機と目標


1期は、とても良い学びになったのですが、他に受けていたの講習会と同時進行で、付いていくことがやっとでした。そこで2期3期は参加できませんでした。でも今回は、ミッキー先生のご専門分野だということもあり復活して受講することにしました。「翻訳絵本」については、どのくらい理解できるか…とても心配です。「絵本の絵を読む」ことを、普段の私の読み聞かせ活動の対象の子どもの目線で考え、しっかりと学びたいと思っています。

このゼミは参加することで絵本に対して大変深く、それぞれのレベルに合った学びができることです。1期の時に学んだことは、読み聞かせ講座や、認定絵本士のゲストスピーカーとして、「おはなし会の絵本の選び方」の講義で話すことができました。2.3期は友人のリフレクションを読ませていただき参考にしましたが、やはりミッキー先生から直接講義を受けることが大切だと今回改めて思いました。直接講義を受けると、自ら図書館へ行き調べるという行動にすぐに結びつきます。そして、振り返りをすることで、理解が深まります。そして、これからの絵本関係の講座や、読み聞かせの時に自分の言葉で、少しでも学んだことを今以上に伝えたいと思っています。

紹介した絵本


『コッケモーモー』

〈書誌情報〉
『コッケモーモー』
ジュリエット・クラス=コンテ/文
アリソン・バートレット/絵
たなかあきこ/訳
2001年11月 徳間書店
〈選書の理由〉
やまねこ翻訳クラブの初期からの会員の訳者(たなかあきこさん)が初めて訳した作品。出版の前に見せていただき、お話も伺った。
絵と言葉がとてもぴったりで原書を見せながら自分の訳で子ども達に読み聞かせをしたとか。
鳴き声を忘れてしまった雄鶏の話。でも最後にはみんなの温かい応援でコケコッコーと鳴けました!
動物の鳴き声がオノマトペでたくさん入っている。
文字の入り方もタイポグラフィーを使い楽しさが倍増する。
読み聞かせに楽しい翻訳絵本。

今回の学びの感想

石井桃子の訳について

私は、石井桃子の『こすずめのぼうけん』が大好きで、春のおはなし会には必ず選びます。また朗読やお話の講習会で最初の作品にも選びました。
こすずめの目線から見たたくさんの冒険、ワクワクとドキドキ。そして最後にお母さんのもとでほっとできる。
このお話は素話から始まり、そこからの翻訳だそうです。
石井桃子は、作家、編集者、翻訳家、実践家(文庫活動)、研究者等多岐にわたり活動をされていた。
世界の児童文学の先端を知り、日本の児童文学を広めていった20世紀の児童文学をけん引した方。
子どもの本の翻訳をたくさん手掛け(200冊以上)それが今でも読み継がれている。『ちいさいおうち』『くまのプーさん』『ピーターラビットのおはなし』『こすずめのぼうけん』等、古典でありながら今も読み継がれているロングセラーである。分かりやすい言葉で、目に見えるように子どもと一緒に声に出して読むことを考えて訳されている。

バートンが、ちいさなおうちを主人公にして「どういきるか」というテーマを子どもに分かる物語としていることを踏まえ、石井桃子は時間を超えてどう生きるかを伝わるように訳さなければいけないと感じたそうだ。
子どもは、大人に絵本を読んでもらい、絵を見て耳でお話を聞く。耳でお話を聞くということは昔話を聞くことと同じである。シンプルなくり返しがあり形が決まっている。耳で一回聴いただけで楽しさが分かる。
(むかしむかし~で始まり、いつまでも幸せに暮らしました)
また、英語の文章は間接話法になっているが、おうちの台詞を直接話法にして訳しているのだそうだ。おうちが喋ることによって夜の場面が強調される。

「まちって、どんなところだろう・・・」(P4)
「ここは、もうまちになってしまったのだ」とちいさなおうちはおもいました。(P20)

『ちいさいおうち』岩波書店


『ちいさいおうち』の作者バートンについて

ヴァージニア・リー・バートンは、『ちいさいおうち』を4歳から8歳の子ども対象に向けて書いたそうだ。(時間の概念のない子ども達に向けて)
私は内容的に4才には理解することが無理なのではないか…と思い、孫たちには小学校に入ってから手渡していた。これは、今回学んだ「小さな子ども達は、耳でお話を聞き絵を見る」ということを私は全く分かっていなかったのだと、今頃になって残念に思った…。

子どもは、年齢や生活環境、経験、成長によって絵の見方が違ってくる。
人生経験の少ない小さな子ども達は、季節が捲ること時間の流れなどが理解できず時間の流れなどが分かるようになるのは10才くらいからだそうだ。

バートンは、小さな子ども達が分かるように、見返しにおうちを中心とした時の流れや時代の流れを描いている。また、おうちの周りに太陽を表し、一か月の月の満ち欠けを表すことで目に見えない時間の流れを目で見てわかるように絵で表現している。そして、文字もタイポグラフィーを使い緩やかな曲線とジグザグの線を用いて、文字も絵のように表し光と影を表している。
タイポグラフィーについて、ミッキー先生は以下のように書いている。

字の読めない子どもは、絵と同様に字を見る。子どもにとって、文字も視覚表現の一部である。バートンはこのことをよく理解していたようで絵や文章と同程度にタイポグラフィーを重視した。(p126)

『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか』「声を訳す」文体の秘密 竹内美紀著 ミネルヴァ書房

同一ページに単にテクストと絵を置いただけではありません。テクストのタイポグラフィーをそのページのパターンに合わせることにも努力しました。デザインに合わせるためにテクストの長さを削ったり、逆に足す羽目になったことも何度かありました。(p127)

『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか』「声を訳す」文体の秘密 竹内美紀著 ミネルヴァ書房

また、子どもは物語の主人公に成り切り同化する。おうちの窓の部分が、夜になると目のように光って見えることで、おうちの気持ちになり物語の中で遊び体験し楽しさを共感する。


大人は文字の文化が身についてしまい絵本も絵からではなく、字から見てしまう。お話(素話)に於いても耳から聞くことに慣れていないと物語の世界に入っていけない。
耳から聞く文化の小さな子ども達に、絵を見て、お話を聞いて、お話の世界で遊ぶという素晴らしい時間を子ども達にたくさん経験させたいと思います。

ゼミの中で学んだことが、ミッキー先生の『石井桃子の翻訳はなぜこどもをひきつけるのかー声を訳す文体の秘密』の5章を読み学びが深まりました。
また、原書と訳書を見比べて見ることは、おもしろそう!と思いました。
両方を図書館で見つけ、見てみたいと思いました。

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