クフ王のピラミッドと黄金比
クフ王のピラミッド(ギザの大ピラミッド)はとても有名ですね。
実はこのピラミッドの中に黄金比が隠れているという文献をよく目にします。
もし黄金比が隠されているという主張が正しければ、4500年前の古代エジプト人が既に黄金比を知っていたことになります。
さて本当に知っていたのでしょうか??
1 どこに黄金比があるのか
ギリシャの歴史家ヘロドトスが、次のように言ったと言われているからです。
「エジプトの聖職者から、大ピラミッドの高さの2乗は側面の三角形の面積に等しいと教わった」
ヘロドトスが言った関係が成り立っているならば、側面の三角形の高さと底辺の半分の長さの比が黄金比になっています。
2 黄金比になることの証明
初等幾何学で簡単に示せます。
ピラミッドの高さを$${h}$$、側面の三角形の底辺の長さを$${2a}$$、高さを$${b}$$とします。
ヘロドトスが言っている関係が成り立つので、
$${h^2=\frac{1}{2}×2a×b}$$
$${h^2=ab}$$・・・①
また、下の図の三角形に三平方の定理を使って
$${b^2=a^2+h^2}$$・・・②
②を①に代入して、
$${b^=a^2+ab}$$
両辺を$${a^2}$$で割る
$${(\frac{b}{a})^2=1+\frac{b}{a}}$$・・・③
ここで、$${x=\frac{b}{a}}$$とすると、③は
$${x^2=1+x}$$
この方程式を解くと、
$${x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}}$$
3 疑念
先ほど紹介したヘロドトスの文章を、もう一度書きます。
「エジプトの聖職者から、大ピラミッドの高さの2乗は側面の三角形の面積に等しいと教わった」
この訳は、ジョン・テイラーによるものです。
これは、ヘロドトスの「歴史」の文章を訳したものらしいです。
しかし、正しい訳は、
「その(ピラミッドの)底面は、正方形をしており、各辺の長さは8プレトロンで、高さも同じ」
※プレトロンとは、長さの単位
先に書いた訳とはずいぶん違います。
実は、ジョン・テイラーが正しい訳を、想像力豊かな解釈をしたのが先述した訳なのです。
では、ジョン・テイラーによる解釈は正しいのでしょうか。
4 真実は・・・
これまでに古代エジプト人が黄金比を建築物に組み込んだという確証はありません。
しかし、絶対に組み込んでいないということも証明されていません。
古代エジプト人は黄金比を知っていたのでしょうか。
このことについては「知っていた」と考えられるとする、様々な文献があります。
でも確証はありません。
皆様はどちらの立場ですか?
真実は、古代エジプト人に聞くしかないのでしょうか。
今回の記事の参考文献
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