美食エッセー少2

第10回 母と食べた明石焼き

家族の話というのは、得てしておもしろくないものである。どんな偉人の話でもおもしろくない。だからわたしが母の話をしても尚更おもしろくない。ただ、昨年の年明けに娘が生まれてから、その成長ぶりを眺めていると、不思議とすっかり忘却していた自分の子供の頃の記憶が次々とよみがえってくるのである。

わたしが育った地域には京阪電鉄が通り、その駅には今で言うショッピングモールがあった。現に今は完全に今風な巨大ショッピングモールに建て替えられていて、昔の面影はない。あの頃のショッピングモールは中心が2階建てになっているだけで、そこへ至る東西の2本の道が商店街になっていた。

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