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青いノート ドイツ旅行

ドイツで一番最高だったのはマリアというパブだ。
そこは、Kの住んでいる学生寮の地下にあり、狭い店内にはいつも音楽が流れ、古びたテーブルや椅子が並べてある。それがなんとも言えず良い雰囲気だ。
一番奥のフロアの壁にはブルーノベルベッド生地でできたカーテンが掛けてあり、その真ん中にMariaと書かれた銀色の金属プレートが吊るされている。
天井にはミラーボールがありドリンクを持ってきたアレックスが、それを手で回してくれた。すると壁のあちこちに白い水玉ができてキラキラと光った。
店内は薄暗く、それぞれのテーブルの上にはローソクが一本づつ置かれ揺れるオレンジ色の炎の向こうで、フォルカが英語で何かを一生懸を喋っていた。
カウンターでは、芸術家の卵たちが楽しそうに戯れている。
なぜか、とても大きな黒い犬が店内を当然の顔をして歩き回っている。
何もかもが、素晴らしく心地良い。
この空気の中だったら毎日でも居てもいいと思った。
来週の金曜日に、フォルカがDJをマリアでするのだと言っていた。
私は、すごく行きたかったがその頃は日本に帰っているので来れないと言うと、彼はとても残念そうな顔をしていた。私も残念だった。

もし、またドイツに行く機会があったら是非マリアにまた行きたいと思う。
そても大好きな空間だった。
マリアみたいな店が日本にもあればいいのに。

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前回のドイツ旅行の続き。どうやらドイツ旅行も、そこまで悪いものでもなかったようだ。マリアと言うパブというかバーは、とにかく大学の学生寮の建物の地下に併設された大学生たちの溜まり場のような場所で日本から来た私には、そこがとても素敵な空間に思えた。私たちが訪ねて行った学生たちは、まだ学生といっても大学院の生徒たちだったので、年齢も20代後半から30代ぐらいとさまざまで、そこで繰り広げられる全てが刺激的で、新鮮だった。
こうやって、古い日記を読み返していると、その時の場面が30年も経っているのに蘇ってくるから不思議だ。
どんなに下手くそな文章でも、書き留めていくことには大きな意味があるのだと思った。この頃の私にはこの青いノートに書き込むことが、ちょっとしたセラピーだったのかもしれない。書き留めることで誰にも言えない気持ちを整理していた。

20代の私は、学校にいて友達もいて、家族との関係も良好だったけど、心のどこかに孤独をいつも抱えていたように思う。いつも何かに葛藤しているような。
他の人たちもみんなそんな感じだったのだろうか。それは単に、年齢的な成長の過程だったのだろうか。

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