ゴールスプリントから紐解く
体重57kgという、見た目的にもおおよそスプリンターとは言い難い筆者ですが、勝利の半数以上はスプリントを制してのものです。
国内レベルならば、出力的にはせいぜい20W/kgもあれば十分でしょう。
私の場合で1100Wを超える程度を出力すれば、勝つ可能性があるといえます。
無論、厳しい展開ならばそれ以下のこともあろうかと思います。
可能性がある、というのはロードのゴールスプリントの場合、位置取りや駆け出すタイミング、アシストや運も絡み、最終的な脚の残り具合も影響するとても複雑なものだからです。
隠されたナイフ
元々、平坦も登りもそこそこだった私が自身のスプリント力に気付いたのは、すでに25歳、コーチングを受けるようになってからでした。
パフォーマンス的には、瞬間的に最大出力を発揮して伸びがないタイプ。
出力も当時は1300Wを超えていたので、体重比ではかなり高い方であったと思います。
これは80kgの筋肉隆々なピュアスプリンターが1800Wを超える出力をしているようなものです。
問題は、そのパフォーマンスで勝てていないところにあります。
これらはよくあることですが、出力の高さとレースの結果には相関関係があまりないことにそろそろ気付きはじめているはずです。
より実戦的なスプリント力
出力はトルク×回転数ですが、自分の弱みはトルクが低いことでした。
これは日本人全般に言えることと考えています。
そこで2010年にクランク長を延ばす決断をします。
近年のトレンドとは真逆ですが、体型からすると長めの172.5mmを使っています。
これまで回転数に頼っていた最大出力は落ちたものの、トルクの持続による後半の伸びを補う意味もありました。
これは、初速の低い小集団スプリントを制すことを想定したもので、パフォーマンス的には駆け出しで出遅れることがない前提から、いわゆる『差し脚』をいかにつけるかを考えた末の策でした。
切れないナイフは人を切る
もし、最大出力ばかりにとらわれていれば、そのままレースに勝つこともなく、日の目をみることなく去る運命であったかも知れません。
これらの話は、クランク長を延ばしたことが結果にでた、というだけではなく、勝てない現状を見直し、出来ることを探し、考えることの大切さを教えてくれます。
自転車ロード競技の素晴らしい点のひとつは、誰にでもできることがあるところです。
切れ味を失っている自らの武器はないでしょうか。もしくは、研げば切れる武器を持っていることもあるでしょう。
道具は道具として、正しく使うことが長くものごとを楽しむ秘訣かと思います。
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